ロミオとヂュリエット
ROMEO AND JULIET
シェークスピヤ　William Shakespeare
坪内逍遙訳


+目次

　　　　登場人名

エスカラス、※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナの領主。
パーリス、領主の親族、年若き貴公子。
キャピューレット┐
　　　　　　　　├相確執せる二名族の長者。
モンタギュー　　┘
キャピューレットが一族の一老人（叔父）。
ローミオー、モンタギューの息。
マーキューシオー、領主の親族にしてローミオーの友。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオー、モンタギューの甥にしてローミオーの友。
チッバルト、キャピューレットが妻の甥。
ロレンス法師、フランシス派の僧。
ヂョン、同じ派の僧。
バルターザー、ローミオーの下人。
サンプソン（或ひはサムソン）┐
　　　　　　　　　　　　　　├キャピューレット家の下人。
グレゴリー　　　　　　　　　┘
ピーター、ヂューリエットが乳母の下人。
エーブラハム、モンタギューの下人。
藥種屋の老人。
樂人甲、乙、丙。
パーリスの侍童こしゃう。他の侍童こしゃう。警吏一人。
モンタギュー夫人、モンタギューの妻。
キャピューレット夫人、キャピューレットの妻。
ヂューリエット、キャピューレットの女。
ヂューリエットの乳母。

其他※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナの市民。兩家の親族。假裝舞踏者、門衞、
番衆、侍者等。
序詞役。

場所　　　※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナ。マンチュア。
（本文は、譯詞との釣合ひ上、固有名詞の發音に手心を加へたる部分あり。但し爰に録したるものが最も正しきに近しと知られたし。）
［＃改丁］

ロミオとヂュリエット


序詞


序詞役じょしやく出でる。

序詞役　威權ゐけん相如あひしく二名族めいぞくが、
處ところは花はなの※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナにて、
古ふるき怨恨うらみを又またも新あらたに、
血ちで血ちを洗あらふ市内鬪爭うちわげんくわ。
かゝる怨家ゑんかの胎内たいないより薄運はくうんの二情人じゃうじん、
惡縁あくえん慘むごく破やぶれて身みを宿怨しゅくゑんと共ともに埋うづむ。
死しの影かげの附纒つきまとふ危あやふき戀こひの履歴りれき、
子等こらが非業ひごふに果はてぬるまでは、
如何いかにしても解とけかねし親々おや／＼の忿いかり、
是これぞ今いまより二時間じかんの吾等われらが演劇えんげき、
御心みこゝろ長ながく御覽ごらんぜられさふらはゞ、
足たらはぬ所ところは相勵あひはげみて償つぐのひ申まうさん。
序詞役じょしやく入はひる。
［＃改ページ］

第一幕

第だい一場ぢゃう　　※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナ。街上がいじゃう。

カピューレット家けの下人げにんサンプソンとグレゴリーとが劍けんと楯たてとを持もって出でる。
サン　　やい、グレゴリー、誓言せいごんぢゃ、こちとらは石炭コールなんぞは擔かつぐまいぞよ、假かりにも。（不面目な賤しい仕事しごとなんぞはすまいぞよ）。
グレ　　さうとも／＼、そんな事ことをすりゃ、奴隷コーリヤーも同然どうぜんぢゃわい。
サン　　いやさ、俺おらが癇コーラーに障さはるが最後さいご、すぐにも引ひッこ拔ぬいてくれようといふンぢゃ。
グレ　　さうよなァ、頸根くびねッ子こは、成なろうなら、頸輪コラー（首枷くびかせ）から引ひッこ拔ぬいてゐるがよいてや。（罪人にはならぬがよいてや）。
サン　　俺おれが腹はらを立たったとなりゃ、忽たちまち（敵手あひてをば）眞二まっぷたつにしてくれる。
（以下、口合パンニングは邦語はうごに直譯ちょくやくしては通つうぜざれば、意いを取とりて義譯ぎやくす。後段こうだんにも斯かかる例れいしば／＼あるべし。）
グレ　　ところが、其その立たつまでが手間てまが取とれうて。
サン　　何なんの、すぐ立たつわい、モンタギュー家けの飼犬かひいぬを見みたゞけでも。
グレ　　はて、立たつと言いへば不動ゐすわりぢゃがや。不動ゐすわりは立往生たちわうじゃうぢゃ。出向でむかうて往ゆかけんけりゃ鬪爭けんくわにァならぬわい。
サン　　はて、飼犬いぬを見みたゞけでも向むかうてゆくわい。モンタギューの奴等やつらと見みりゃ、男をとこでも女をんなでも關かまうたことァない。
グレ　　へッ、關かまはいで放任ほうっておくのでがな、それが汝おぬしの弱蟲よわむしの證據しょうこぢゃ。
サン　　したり。そこで、とかく弱蟲よわむしの女子をなごばかりが玩弄かまはれまするとけつかる。いや、俺おれは、野郎やらうをば抛はふり出だし、女郎めらうをば制裁かまはう。
グレ　　鬪戰たゝきあひは、主人衆だんなしゅや吾等おれたち男共をとこどものすることぢゃ。
サン　　いざ鬪爭けんくわとなりゃ、そんな斟酌しんしゃくは要いらんこっちゃ。男共をとこどもを叩たゝきみじいたら、女共をんなどもをもやっつけてくれう。
グレ　　やっつける？
サン　　それ、彼奴等きゃつらの「額はち」を打破ぶちわってくれうわい。意味いみは如何樣どのやうにも取とらっせいよ。
グレ　　それは先方あひての感かんじ次第しだいぢゃ。
サン　　はて、身みに沁々しみ／″＼と感かんじようわい、俺おれも隨分ずゐぶんと評判ひゃうばんの女をんなたらしぢゃに依よって。
グレ　　へん、魚さかなでなうて幸福しあはせぢゃわい、汝おぬしが魚さかななら、女をんなたらしでは無なうて總菜そうざいの鹽大口魚しほだらと來きてけつからう。……（一方を見て）拔ぬけよ（劍を）、モンタギューの奴等やつらが來きたわい。
此時このときモンタギュー家けの下人げにん、エブラハムとバルターザーとが一方ぱうへ出でる。
サン　　さ、拔ぬいたわ、鬪爭けんくわを買かはっせい、尻押しりおしをせう。
グレ　　何なんぢゃ！　尻しりに帆ほを掛かける？
サン　　心配しんぱいすない。
グレ　　何なんの、汝おぬしを！
サン　　此方こちの非分ひぶんにならぬやうに、先方むかうから發端しかけさせい。
グレ　　行違ゆきちがふ途端とたんに睨にらみつけてくれう、如何どう思おもやがらうと關かまふものかえ。
サン　　うんにゃ、如何どう爲しやがらうと關かまふものかえ。俺おれは指ゆびの爪つめを噛かんでくれう、それで默だまってゐりゃ恥はぢさらしぢゃ。
雙方さうはう行違ゆきちがふ。サンプソン指ゆびの爪つめを噛かんで見みする。
エブラ　お手前てまへは吾等われらに對むかうて指ゆびの爪つめを噛かまっしゃったな？
サン　　如何いかにも爪つめを噛かみまする。
エブラ　吾等われらに對むかうて噛かまっしゃるのか？
サン　　（グレゴリーを顧みて）然うんと言いうても、理分りぶんか？
グレ　　いゝや。
サン　　（エブラに對ひて）いゝや、足下おぬしたちに對むかうて噛かみはせんが、噛かむ。
グレ　　こりゃ鬪爭けんくわを賣うらっしゃるのぢゃな？
エブラ　鬪爭けんくわ！　いや、決けっして。
サン　　鬪爭けんくわなら敵手あひてにならう。汝等おぬしたちには負まけんぞ。
エブラ　勝かちもすまい。
サン　　むゝ。……
と詰つまる。此時このとき上手かみてよりモンタギューの親族しんぞくベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオー出でる。
グレ　　（サンプソンに對ひ、小聲にて）勝かつわいと言いはっせい。（下手を見やりて）あそこへ殿とのの親族しんぞくの一人ひとりが來わせた。
サン　　うんにゃ、勝かつわい。
エブラ　※(「言＋墟のつくり」、第4水準2-88-74)うそを吐つけ。
サン　　拔ぬけ、男をとこなら。グレゴリー、えいか、頼たのむぞよ、しっかり。
サンプソンとエブラハムと劍けんを拔ぬいて戰たゝかふ。ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオー此この體ていを見みて駈かけ來きたり、劍けんを拔ぬき、割わって入はひる。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　待まった／＼！　藏をさめい劍けんを。こゝな向不見むかうみずが。
カピューレット長者ちゃうじゃの甥をひチッバルト下手しもてより出でる。
チッバ　やア、下司げす下郎げらうを敵手あひてにして汝おぬしは劍けんを拔ぬかうでな？　ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオー、こちを向むけ、命いのちを取とってくれう。
と劍けんを拔ぬく。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　いや、これは和睦わぼくさせうためにしたことぢゃ。劍けんを藏をさめい、でなくば、其その劍けんを以もって予わしと共ともに、こいつらを引分ひきわけておくりゃれ。
チッバ　何なんぢゃ、拔ぬいてゐながら、和睦わぼくぢゃ！　和睦わぼくといふ語ことばは大嫌だいきらひぢゃ、地獄ぢごくほどに、モンタギューの奴等やつらほどに、汝うぬほどにぢゃ。卑怯者ひけふものめ、覺悟かくごせい！
突ついてかゝる。ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオー餘義よぎなく敵手あひてになる。此この途端とたん、兩家りゃうけの關係者くわんけいじゃ、双方さうはうより出いで來きたり、入亂いりみだれて鬪たゝかふ。市民しみん及および警吏長等けいりちゃうら棍棒クラッブを携たづさへて出いで來きたる。
警吏長　棍棒組こんぼうぐみよ、戟組ほこぐみよ！　打うて／＼！　打据うちすゑいカピューレットを！　モンタギューを打据うちすゑい！
カピューレット長者ちゃうじゃ寢衣ねまきのまゝにて、其その妻つまカピューレット夫人ふじんはそれを止とゞめつゝ、出でる。
カピ長　此この騷動さわぎは何事なにごとぢゃ？　やア／＼、予よが長ながい劍けんを持もて、長ながい劍けんを。
カピ妻　杖つゑをば、杖つゑをば！　何なんの爲ために長ながい劍けんを？
カピ長　えい、劍けんぢゃといふに。見みいあれを、モンタギューの長者ちゃうじゃめが來きをって、俺おれに見みよがしに刃やいばを揮ふりをる。
モンタギュー長者ちゃうじゃ白刃しらはを堤さげ、其その妻つまモンタギュー夫人ふじんそれを止とゞめつゝ、出でる。
モン長　おのれ、カピューレットめ！……とめるな、放はなせ。
モン妻　鬪たゝかはう爲ためになら、一歩ひとあしでも出ださせますな。
領主りゃうしゅの公爵こうしゃくエスカラス、從者じゅうしゃ多勢おほぜいを引連ひきつれて出でる。
領主　　やア、平和へいわを亂みだす暴人ばうじんども、同胞どうばうの血ちを以もって刃金はがねを穢けがす不埓奴ふらちやつ……聽ききをらぬな？……やア／＼、汝等おのれら、邪よこしまなる嗔恚しんにの炎ほのほを己おのが血管けっくわんより流ながれ出いづる紫むらさきの泉いづみを以もって消けさうと試こゝろむる獸類けだものども、嚴罰げんばつを怖おそるゝならば、其その血腥ちなまぐさい手てから兇暴きょうばうの劍けんを抛なげうち、怒いかれる領主りゃうしゅが宣言ことばを聽きけ。カピューレットよ、モンタギューよ、汝等なんぢら二人にんの由よしも無なき爭論あらそひが原もととなって、同胞どうばうの鬪諍とうぢょう既すでに三度みたびに及および、市内しないの騷擾さうぜう一方ひとかたならぬによって、當たう※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナの故老共こらうども、其身そのみにふさはしき老實らうじつの飾かざりを脱棄ぬぎすて、何なん十年ねんと用もちひざりしため、古ふるび錆さびついたる戟共ほこどもを同おなじく年老としおいたる手々てんでに把とり、汝等なんぢらが心こゝろに錆さびつきし意趣いしゅの中裁ちゅうさいに力ちからを費つひやす。爾後じご再ふたゝび公安こうあんを亂みだるに於おいては汝等なんぢらが命いのちは無ないぞよ。今日こんにちは餘よの者共ものどもは皆みな立退たちされ、カピューレットは予よに從したがひ參まゐれ。モンタギュー、其方そちは、此この午後ひるごに、尚なほ申まうし聞きかすこともあれば、裁判所さいばんしょフリータウンへ參向さんかうせい。更あらためて申まうすぞ、命いのちが惜をしくば、皆みな立退たちされ。
モンタギュー夫婦ふうふとベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオーだけ殘のこりて皆みな入はひる。
モン長　此この舊ふるい爭端さうたんをば何者なにものが新あたらしう發ひらきをったか？　甥をひよ、おぬしは最初はじめから傍そばにゐたか？
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　いや、私わたくしが參まゐった頃ころには、敵てきの下人げにんと御家來衆ごけらいしゅとがもう既すでに戰たゝかうてをりました。それを引分ひきわけうとて拔劍ぬきましたる途端とたんに、彼あのチッバルトの我武者がむしゃめが劍けんを拔ぬいて駈付かけつけ、鬪戰たゝかひを挑いどみ、白刃しらはを揮※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)ふりまはし、徒いたづらに虚空こくうをば斫きりまする程ほどに、風かぜは習々しふ／＼と音おとを立たてゝ彼かれが不覺ふかくを嘲あざける風情ふぜい。かくて互たがひに衝ついつ撃うっつの折をりから、おひ／＼多人數たにんず馳加はせくははり、左右さいふに別わかれて戰たゝかふ處ところへ、領主とのが見みえさせられ、左右さうなく引別ひきわけと相成あひなりました。
モン妻　おゝ、ロミオは何處どこに？（ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオーに）今日けふそなた逢あはしましたか？　此この騷動さうどうに關係かゝりあうてゐなんだは、ま、何なによりも喜よろこばしい。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　さア、今朝けさ、東ひがしの金きんの窓まどから朝日影あさひかげのまだ覗のぞきませぬ頃ころ、胸むねの悶もだへを慰なぐさめませうと、郊外かうぐわいに出でましたところ、市まちからは西にしに當あたる、とある楓かへでの杜蔭もりかげに、見みれば、其樣そんな早朝あさまだきに、御子息ごしそくが歩あるいてござる、近ちかづけば、それと見みて取とり、忽たちまちのうちに杜もりの繁しげみへ。人目ひとめを避さくるは相身互あひみたがひ、浮世うきよを煩うるさう思おもふ折をりには、身一みひとつでさへも多おほいくらゐ、強あながち同志つれを追おはずともと、只たゞもう己おのが心こゝろの後あとをのみ追おうて、人目ひとめを避さくる其人そのひとをば此方こちらからも避さけました。
モン長　げに、幾朝いくあさも／＼、未まだ乾ひぬ露つゆに涙なみだを置添おきそへ、雲くもには吐息といきの雲くもを加くはへて、彷徨うろついてゐるのを見掛みかけたとか。されども遠とほい東方ひんがしの、曙姫あけぼのひめの寢所ねどころから、あの活々いき／＼した太陽たいやうが小昏をぐらい帳とばりを開あけかくれば、重おもい心こゝろの倅せがれめは其その明あかるさから迯戻にげもどり、窓まどを閉とぢ、日ひを嫌きらうて、我われから夜よるをば製つくりをる。良よい分別ふんべつをして此この病やまひの根ねを絶たたねば、一定ぢゃう、忌いまはしい不祥ふしゃうの基もとゐ。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　で叔父上をぢうへには其その根ねを御ごぞんじでござりますか？
モン長　いや、知しりもせねば、知しらせもせぬわい。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　質問きゝたゞして御覽ごらうじたことがござりますか？
モン長　予わしはもとより、親したしい誰たれ彼かれにも探さぐらせたれども、倅せがれめは、只たゞもう其その胸むねの内うちに、何事なにごとをも祕ひし隱かくして、いっかな餘人よじんには知しらせぬゆゑ、探さぐることも發見みいだすことも出來できぬ有樣ありさま――それが身みの爲ためにならぬのは知しれてあれど――可憐いたいけな蕾つぼみの其そのうるはしい花瓣はなびらが、風かぜにも開ひらかず、日光ひにもまだ照映てりはえぬうちに、意地惡いぢわるの螟蛉あをむしめにあさましう食はまれてしまふやうに。彼あれが愁歎なげきの源もとさへ知しれゝば、直すぐにも療治れいぢしたう思おもふのぢゃが。
此時このときロミオ物思ものおもひ顏がほにて一方ぱうへ出でる。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　あれ、あそこへロミオどのが。お避はづしなされませ。私わたくしが聞質きゝたゞして見みませう。どうしても拒こばまッしゃらうかも知しれぬが。
モン長　それが首尾しゅびよう自白うちあけさせる役やくに立たてばよいが。……奧おく、さ、參まゐらう。
モンタギュー夫婦ふうふ入はひる。ロミオ近ちかづく。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　や、お早はやうござる。
ロミオ　そんなに早はやうござるか？
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　今いま九時じを打うったばかり。
ロミオ　あゝ／＼、味氣無あぢきない時間じかんは長ながい。……今いま急いそいで去いんだは予わしの父ちゝでござったか？
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　いかにも。どういふ味氣あぢきない事ことがあって、時ときを長ながいとは被言おっしゃる？
ロミオ　得えれば時ときが短みじかうなるが、其物そのものが得えられぬゆゑ。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　戀こひぢゃな？
（此このあたりも、一問もん、一答たふこと／″＼く口合式パンニングしきの警句けいくにして、到底たうてい、原語通げんごどほりには譯やくしがたきゆゑ、義譯ぎやくとす。）
ロミオ　人ひとの爲ために……
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　戀人こひゞとの爲ために？
ロミオ　戀こひ焦こがるゝ效かひもなく、其人そのひとの爲ために蔑視さげすまれて。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　やれ／＼、柔和やさしらしう見みゆる彼あの戀こひめが、そんな酷むごいことや手荒てあらいことをしますか？
ロミオ　あゝ／＼！　戀こひめは始終しゞゅう目隱めかくしをしてゐて、目めは無なけれども存分ぞんぶん其その的まとをば射いとめをる！……え、何處どこで食事しょくじをしようぞ？……（四下あたりを見※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)して）あゝ／＼！　こりゃまア何なんといふ淺あさましい騷擾さうぜう？　いや、其その仔細しさいはお言いやるには及およばぬ、殘のこらず聞きいた。是これ皆みな憎にくいが原もととは言いへ、可愛かはゆいにも深ふかい／＼縁えんがある……すれば是こりゃ憎にくみながらの可愛かはゆさ！　可愛かはゆいながらの憎にくさといふもの！　無むから出でた有うぢゃ！　悲かなしい戲たはぶれ、沈しづんだ浮氣うはき、目易めやすい醜みにくさ、重おもい羽毛はね、白しろい煤すゝ、冷つめたい火ひ、健康すこやかな病體びゃうたい、醒さめた眠ねむり！　あゝ、有ありのまゝとは同おなじでない物もの！　恰ちょうど其樣そのやうな切せつない戀こひを感かんじながら、戀こひの誠まことをば感かんぜぬ切せつなさ！……何なんで笑わらふンぢゃ？
（斯かくの如ごとき對照式たいせうしきの綺語きご――技巧的ぎこうてきな比喩語ひゆご――を竝ならぶることはシェークスピヤの青年期せいねんきにはイギリス文壇ぶんだんの流行りうかうなりしなり。以下いかにも同例どうれい多おほし。）
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　何なんの、泣ないてゐるぢゃ。
ロミオ　泣なくとは、何故なぜに？
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　その歎なげきを思おもひやって。
ロミオ　はて、それは深切しんせつの爲過しすごし。いっそ迷惑めいわく。おのが心痛しんつうばかりでも心臟しんざうが痛いたうなるのに、足下きみまでが泣ないてくりゃると、一段だんと胸むねが迫せまる。足下きみの同情どうじゃうは多過おほすぎる予わしの悲痛かなしみに、只たゞ悲痛かなしみを添そへるばかり。戀こひは溜息ためいきの蒸氣ゆげに立たつ濃こい煙けむり、激げきしては眼めの裡うちに火花ひばなを散ちらし、窮きうしては涙なみだの雨あめを以もって大海おほうみの水量みかさをも増ます。さて其外そのほかでは、何なんであらうか？　性根しゃうねの亂みだれぬ亂心らんしん……息いきの根ねをも杜とむる苦にがい物もの。……命いのちを砂糖漬さとうづけにする程ほどの甘あまい物もの。さらば。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　まったり！　一しょに行ゆかう。予わしを棄すてゝ行ゆくとはひどい。
ロミオ　とうに棄すてゝしまうた身みぢゃ。予わしは爰こゝにはゐぬ、これはロミオでは無ない、ロミオは何處どこか他所よそにゐよう。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　いや、眞實しんじつの白状はくじゃうをなされ、こなたが戀こひ慕したふ人ひととは誰たれぢゃ？
ロミオ　白状はくじゃうせいとは、予わしに拷問がうもんの苦痛くるしみをさせうとてか？
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　拷問がうもん！　何なんの、只たゞまッすぐに自白はくじゃうなされといふのぢゃ。
ロミオ　はて、それは病人びゃうにんの遺言ゆゐごんを白状はくじゃうと呼よぶやうなもの、わるい上うへにわるい異名いみゃう！　が、白状はくじゃうせう、予わしには戀女こひをんながある。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　戀こひと睨にらんだ時ときに、それ程ほどは見拔みぬいてゐた。
ロミオ　ても偉きつい射手いてぢゃの！　そして其その女おんなは誰たれが目めにも立たつ美人びじん。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　目めに立たつ的まとならば、射落いおとすことは容易たやすからう。
ロミオ　はて、其その覘ねらひは外はづれた。戀愛神キューピッドの弱弓よわゆみでは射落いおとされぬ女をんなぢゃ。處女神ダイヤナの徳とくを具そなへ、貞操ていさうの鐵てつの鎧よろひに身みを固かためて、戀こひの稚をさない孱弱矢へろ／＼やなぞでは些小いさゝかの手創てきずをも負おはぬ女をんな。言寄いひよる語ことばに圍かこまれても、戀こひする眼まなこに襲おそはれても、いっかな心こゝろを動うごかさぬ、賢人けんじんを墮落だらくさする黄金こがねにも前垂まへだれをば擴ひろげぬ。おゝ、限かぎりない美うつくしさには富とみながら、其その美うつくしさは只たゞ一代限だいかぎり、死しねば種たねまでも盡つくるとは、貧乏しがない／＼運命うんめい！
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　では其その女をんなは嫁入よめいりはせぬと誓ちかうたのぢゃな？
ロミオ　いかにも。其その物吝ものをしみが甚いかい損失そんしつ。折角せっかくの美うつくしさも、其その偏屈へんくつゆゑに餓死うゑじにをして、其その美うつくしさを子孫しそんには能よう傳つたへぬ。美うつくしうて、賢かしこうて、予わしを思おもひ死じにさする程ほどに賢過かしこすぎた美人びじんゆゑ、恐おそらくは冥利みゃうりが盡つき、よもや天國てんごくへは登のぼれまい。彼女あれが戀こひはせぬと誓ちかうたゝめ、予わしは斯かうして物ものを言いうてゐるものゝ、生いきながら死しんでゐるのぢゃ。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　ま、予わしの言いふことを聽きいて、其その女をんなをばお忘わすれなされ。
ロミオ　おゝ！　教をしへてくれい、どうしたら忘わすれられるか？
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　もッと目めに自由じいうを與あたへて、あちこちの他ほかの美人びじんを見みたらよからう。
ロミオ　他ほかのと較くらぶれば彌※(二の字点、1-2-22)いよ／＼彼女あれをば絶美ぜつびぢゃと言いはねばならぬことになる。美人びじんの額ひたひに觸ふるゝ彼あの幸福しあはせな假面めんどもは、孰どれも黒々くろ／″＼と製つくってはあれど、それが却かへって其その底そこの白しろい面かほを思出おもひださする。目めを失なくした男をとこが、其その失なくした目めといふ寶たからをば忘わすれぬ例ためし。如何どんな拔群ばつくんな美人びじんをお見みせあっても、それは只たゞ其その拔群ばつくんな美びをも拔ぬく拔群ばつくんな美人びじんを思出おもひださす備忘帳おぼえちゃうに過すぎぬであらう。さらば。忘わするゝ法はふを教をしふることは足下きみの力ちからでは出來できぬ。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　教をしへかたの不足ふそくは其中そのうちに償つぐなはう、借かりたまゝでは死しぬまいぞ。
二人ふたりともに入はひる。

第だい二場ぢゃう　　同處どうしょ。街上がいじゃう。

カピューレット長者ちゃうじゃを先さきに、年若としわかき貴公子きこうしパリス（下人げにん一人にん從ついて）出でる。
カピ長　モンタギューとても右みぎ同樣どうやうの懲罰おとがめにて謹愼きんしんを仰附おほせつけられた。したが、吾々われ／＼老人らうじんに取とっては、平和へいわを守まもることはさまで困難むづかしうはあるまいでござる。
パリス　何いづれも名譽めいよの家柄いへがらであらせらるゝに、久ひさしう確執なかたがひをなされたはお氣きの毒どくな儀ぎでござった。時ときに、吾等われらが申入まうしいれた事ことの御返答ごへんたふは？
カピ長　先度せんど申まうした通とほりを繰返くりかへすまでゞござる。何分なにぶんにも世間せけん知らず、まだ十四度よどとは年としの變移目かはりめをば見みぬ女むすめ、せめてもう二夏ふたなつの榮枯わかばおちばを見みせいでは、適齡としごろとも思おもひかねます。
パリス　姫ひめよりも若わかうて、見事みごと、母親はゝおやになってゐるのがござるのに。
カピ長　いや、速はやう成なるものは速はやう壞くづるゝ。末すゑの頼たのみを皆みな枯からし、只たゞ一粒ひとつぶだけ殘のこった種子たね、此土このよで頼たのもしいは彼兒あればかりでござる。さりながら、パリスどの、先まづ言寄いひよって女むすめの心こゝろをば動うごかしめされ。彼女あれの諾否いなやが肝腎かんじん、吾等われらの意志こゝろは添物そへもの、女むすめが諾うけひく上うへは吾等われらの承諾しょうだくは其その取捨しゅしゃの外ほかには出でませぬ。今宵こよひ、家例かれいに因より、宴會えんくわいを催もよふしまして、日頃ひごろ別懇べっこんの方々かた／″＼を多勢おほぜい客人まろうどに招まねきましたが、貴下こなたが其その組くみに加くははらせらるゝは一段だんと吾家わがやの面目めんもくにござる。今宵こよひ、陋屋らうをくにて、地ちを蹈ふむ明星みょうじゃうが群むれ輝かゞやき、暗天やみぞらをさへも明あかるう照てらすを御覽ごらんあれ。譬たとへば、緩漫なまのろい冬ふゆの後しりへに華はなやかな春はるめが來くるのを見みて、血氣壯けっきさかんな若わかい手合てあひが感かんずるやうな樂たのしさ、愉快こゝろよさを、蕾つぼみの花はなの少女をとめらと立交たちまじらうて、今宵こよひ我家わがやで領りゃうせられませうず。悉こと／″＼く聽きき、悉こと／″＼く視みて、さて後のちに最いっち價値ねうちのあるのを取とらッしゃれ。熟とくと觀みらるゝと、女むすめも其その一人ひとりとして數かずには入はひってゐても、勘定かんぢゃうには入はひらぬかも知しれぬ。さゝ、一しょにござれ。……（下人に）やい、汝そちは※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナ中ぢゅうを駈※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)かけまはって（書附を渡し）爰こゝに名前なまへの書かいてある人達ひとたちを見附みつけて、今宵こよひ我わが邸やしきで懇ねんごろに御入來ごじゅらいをお待まち申まうすと言いへ。
カピューレット長者ちゃうじゃとパリスと入はひる。
下人　　こゝに名前なまへの書かいてある人達ひとたちを見附みつけい！　えゝと、靴屋くつやは尺ものさしで稼かせげか、裁縫師したてやは足型あしかたで稼かせげ、漁夫れふしは筆ふでで稼かせげ、畫工ゑかきは網あみで稼かせげと書かいてあるわい。こゝに名前なまへの書かいてある人達ひとたちを見附みつけて來こいと言附いひつかったが、書手かきてが如何樣どのやうな名前なまへを書かきをったやら、こりゃ一向かうに見附みつからぬわい。學者ものしりの處ところへ往ゆかにゃならぬ。……（一方を見て）お、ちょうどよい。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオー先さきにロミオ從ついて出でる。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　馬鹿ばかな！　そこがそれ、火ひは火ひで壓おさへられ、苦くは苦くで減げんぜられる例ためしぢゃ。逆ぎゃくに囘轉まはると目めが眩まうたのが癒なほり、死しぬる程ほどの哀愁かなしみも別べつの哀愁かなしみがあると忘わすれらるゝ。新あたらしい毒どくを目めに染しませて舊ふるい毒どくを拔ぬくがよい。
ロミオ　それには車前草おんばこが一ち好よからう。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　それとは？
ロミオ　脛すねの傷けがには。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　ローミオー、貴下こなたは氣きが狂ちがうたのか？
ロミオ　氣きは狂ちがはぬが、狂人きちがひよりも辛つらい境界きゃうがい……牢獄らうごくに鎖込とぢこめられ、食しょくを斷たたれ、笞むちうたれ、苛責かしゃくせられ……（下人の近づいたのを見て）や、機嫌きげんよう。
下人　　はい、御機嫌ごきげんようござりませ。旦那だんなは能よう讀よまッしゃりますか？
ロミオ　いかにも……不幸ふしあはせに逢あふて、身みの不運ふうんを解よむわい。
下人　　はて、その樣やうな事ことは書ほんが無なくても知しれましょ。いや、眼まなこで讀よむものをば讀よまッしゃりますかと聞ききますのぢゃ。
ロミオ　さア、其その文字もじや其その言語ことばを知しってをればなう。
下人　　正直しゃうぢきなことを言いはっしゃる。御機嫌ごきげんようござらっしゃりませ！
下人げにん行ゆきかくる。
ロミオ　まて／＼、讀よめるわい。
下人げにんより書附かきつけを受取うけとりて讀よむ。
マーチノー殿どの、同じく夫人おくがた及および令孃方むずめごがた。アンセルム伯はく、同おなじく美うつきしき令妹達いもとごがた。※(濁点付き片仮名ヰ、1-7-83)トルー※(濁点付き片仮名ヰ、1-7-83)オー殿どの後室こうしつ。
プラセンシオー殿どの、同おなじく可憐かれんなる姪御達めひごたち。マーキューシオー、同おなじく舍弟しゃてい※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)レンタイン。
叔父御をぢごカピューレット殿どの、同おなじく夫人ふじん、同おなじく令孃達むすめごがた。麗うるはしき姪めひのローザライン。リ※(濁点付き片仮名ヰ、1-7-83)ヤ。
※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)レンシオー殿どの、同おなじく令甥をひごチッバルト。リューシオー及および快活くわいくわつなるヘレナ。
書附かきつけを下人げにんに返かへしながら。
美人揃びじんぞろひぢゃ。何處どこへ集あつまるのぢゃ此この手合てあひは？
下人　　えゝ、あの……
ロミオ　え、あの夜會やくわいにか？
下人　　手前方てまへかたへ。
ロミオ　手前方てまへかたとは？
下人　　主人方しゅじんかたへ。
ロミオ　いかさま、それを眞先まっさきに問とふべきであった。
下人　　問とはっしゃらいでも申まうしませう。手前てまへ主人しゅじんはカピューレット長者ちゃうじゃでござります。若もし貴下こなたがモンタギュー家けの方かたでござらっしゃらぬならば、來わせて酒杯さかづきを取とらッしゃりませ。御機嫌ごきげんようござりませう！
下人げにん入はひる。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　其そのカピューレットの例會れいくわいに、足下きみの戀こひ慕したふローザラインが、此この※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナで評判ひゃうばんのあらゆる美人達びじんたちと同席どうせきするは良よい都合つがふぢゃ。そこへ往いて、昏くらまぬ目めで、予わしが見みする或ある顏かほとローザラインのとをお見比みくらべあったら、白鳥はくてうと思おもうてござったのが鴉からすのやうにも見みえうぞ。
ロミオ　信仰しんかうの堅かたい此この眼まなこに、假かりにも其樣そのやうな不信心ふしんじんが起おこるならば、涙なみだは炎ほのほとも變かはりをれ！　何度なんど溺おぼれても死しにをらぬ此この明透すきとほる異端げだうめ、※(「言＋墟のつくり」、第4水準2-88-74)うそを言いうた科とがで火刑ひあぶりにせられをれ！　何なんぢゃ、予わしの戀人こひびとよりも美うつくしい！　何なにもかも見通みとほしの太陽たいやうでも、現世このよ創はじまって以來このかた、又またとは彼女程あれほどの女をなごをば見みなんだのぢゃ。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　さ、傍わきに誰たれも居ゐず、右みぎの目めにも左ひだりの目めにもローザラインばかりを懸較かけくらべておゐやった時ときには、美うつくしうも見みえつらうが、其その水晶すゐしゃうの秤皿はかりざらに、今宵こよひ予わしが見みする或ある目めざましい美人びじんを懸かけて、さて後のちに、其その戀姫こひびめどのと貫目くわんめを較くらべて御覽ごらうじたなら、今いまは最いっち善よう見みゆるのが最早もはや善ようは見みえまいぞや。
ロミオ　それを見みたうは無なけれど、自分こちのゝ美麗りっぱさを見みようために、一しょに往ゆかう。
二人共ふたりとも入はひる。

第だい三場ぢゃう　　同處どうしょ。カピューレットの一室しつ。

カピューレット夫人ふじんを先さきに、乳母うば從ついて出でる。
カピ妻　乳母うばよ、女むすめは何處どこにゐます？　呼よんでくりゃれ。
乳母　　はれま、十二の年としの清淨潔白しゃうじゃうけっぱくを賭かけますがな、ござれと善よう言いうておいたに。……（奧に向ひて）もしえ、羊兒こひつじさん！　もしえ、姫鳥ひめどりさん！……鶴龜々々つるかめ／＼！……あのお兒こは何處どこへ往ゆかッしゃったか！……もしえ、ヂュリエットさま！
ヂュリエット出でる。
ヂュリ　何なにえ！　呼よびゃるのは誰たれぢゃ？
乳母　　お母かゝさまぢゃ。
ヂュリ　はい、母はゝさま。何御用なにごよう？
カピ妻　用ようとは斯かうぢゃ。乳母うばや、ちっとの間ま退席はづしてたも、内密ないしょうの話はなしぢゃによって。……いや／＼、乳母うば、戻もどりゃ、一通ひとゝほり聽きいておいて貰もらうたはうがよかった。知しっての通とほり、女むすめの齡としも喃なう、既もうおひ／＼適齡としごろぢゃ。
乳母　　はい／＼、存ぞんじてをりますとも、孃ぢゃうさまの年齡おとしなら、何時間なんじかんと言いふことまで。
カピ妻　まだ眞實ほんたうの十四にはなりませぬ。
乳母　　ならっしゃりませぬとも、此この齒はを十四本ほん賭かけますがな……と言いうても、其その十四本ほんが、ほんに／＼、もう只たった四本ほんしかござりませぬわい。……初穗節はつほまつり（八朔）までは最早もう幾日いくかでござりますえ？
カピ妻　二週間しうかんと零餘はしたが幾いくらか。
乳母　　零餘はしたが如何どうあらうと、一年ねん三百六十日にちの中うちで、初穗節はつほまつりの夜よるになれば、恰ちゃうどお十四にならッしゃります。スーザンと孃ぢゃうとは……南無なむあみだぶ……同おない齡どしでござりました。スーザンは神樣かみさまのお傍そばに居をりまする、私わたくしには過すぎた奴やつでござりましたが。……それはさうと、只今たゞいま申まうしました通とほり、初穗節はつほまつりの夜よるになると、恰ちゃうどお十四にならッしゃります、大丈夫だいぢゃうぶでござります、はい、善よう記おぼえて居をりまする。地震ぢしんがあってから恰ちゃうど最早もう十一年目ねんめ……忘わすれもしませぬ……一年ねん三百六十日にちの中うちで、はい、其日そのひに乳離ちばなれをなされました。妾わたしが乳首ちゝくびへ苦艾にがよもぎを塗まぶって鳩小舍はとごやの壁際かべぎはで日向ひなたぼっこりをして……殿樣とのさまと貴下こなたはマンチュアにござらしゃりました……いや、まだ／＼耄ぼきゃしませぬ。それはさうと、只今たゞいまも申まうしました通とほり、妾わたしの乳ちゝの尖所さきの苦艾にがよもぎを嘗なめさっしゃると、苦にがいので、阿呆あはうどのがむづかって、乳ちゝをなァ憎にくがって！　すると鳩小舍はとごやが、がた／＼／＼。わしに出でて行ゆけといふにゃ及およばんと思おもうてゐたのに。……それから既もう十一年ねん、其時そのときになァ單身立ひとりだちをさっしゃりましたぢゃ、いや、眞ほんの事こと、彼方此方あっちこっちと駈※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)かけまはらッしゃって、恰ちゃうど其その前まえの日ひに小額こびたひに怪我けがさッしゃって……其時そのとき亡夫やどが……南無安養界なむやんやうかい！　面白おもしろい人ひとでなァ……孃ぢゃうを抱起だきおこして「これ、俯向うつむきに轉倒ころばしゃったな？　今いまに一段もっと怜悧者りこうものにならッしゃると、仰向あふむけに轉倒ころばっしゃらう、なァ、孃いと？」と言いふとな、ま、いかなこと、此このお兒こがいの、ふいと啼止なきやまっしゃって、「唯あい」ぢゃといの。（笑ふ）戲談じゃうだんが今いまとなって眞ほんの事ことになったと思おもふと！　ほんに／＼、千年ねん生いきたとても、これが忘わすれられることかいな。「仰向あふむけに轉倒ころばっしゃらう、なァ、孃いと」と言いふと、阿呆あはうどのが啼止なきだまって、「唯あい」ぢゃといの。（笑ふ）
カピ妻　もうよう、もうよい、お默だまり。
乳母　　はい／＼、默だまりまする、でもな、笑わらはいではをられませぬ、啼なくのを止やめて、「唯あい」と言いはッしゃったと思おもふと。でもな、眞實ほんたうに小額こびたひの處ところに雛鷄ひよっこのお睾丸程きんたまほどの大おほきな腫瘤こぶが出來できましたぞや、危あぶないことよの、それで甚きつう啼入なきいらッしゃった。亡夫やどが「これ、俯向うつむきに轉倒ころばしゃったか？　今いまに適齡としごろにならッしゃると仰向あふむけに轉倒ころばッしゃらう、なァ、孃いと？」といふとな、啼止なきだまって「唯あい」ぢゃといの。（笑ふ）。
ヂュリ　そして汝そなたも默だまりゃ。默だまってたも、と言いへば。
乳母　　はい／＼、もうしまひました。南無冥加なむみょうがあらせたまへ！　多勢おほぜい育そだてた嬰兒あかさんの中うちで最いっち可憐いたいけであったはお前まへぢゃ。其そのお前まへの御婚禮ごこんれいを見みることが出來でくれば、予わしの本望ほんまうでござります。
カピ妻　さ、其その婚禮こんれいの事ことを話はなさうとしたのぢゃ。むすめよ、そもじは婚禮こんれいがしたいか、どうぢゃ？
ヂュリ　其樣そのやうな名譽事めいよごとは、わしゃまだ夢ゆめにも思おもふてゐぬ。
乳母　　ま、名譽事めいよごとといの！　わしばかりが乳ちゝを献あげたので無なかったなら、其その智慧ちゑは乳ちゝから入はひったとも言いひませうずに。
カピ妻　ならば、今いま、よう思おもふて見みや、そもじよりも年下とししたの姫御前ひめごぜで、とうに、此この※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナで、母親はゝおやにおなりゃったのもある。わしも、今いま思おもへば、そもじと同おなじ程ほどの年齡としごろに嫁入よめいって、そもじを生まうけました。摘つまんで言いへば、斯かうぢゃ、あのパリス殿どのがそもじを内室うちかたにしたいといの。
乳母　　ま、あのよな！　姫ひいさまえ、あのよなお方かた、世界中せかいぢゅうの女衆をなごしゅが……ほんに奇麗きれいな、蝋細工らうざいく見みたやうな。
カピ妻　此この※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナに夏なつが來きても、あのやうな花はなは咲さかぬ。
乳母　　ほんとに花はなぢゃ、眞實ほん／″＼の活いきた花はなぢゃ。
夫人　　どうぞいの、あのやうなお方かたを可愛いとしいと思おもはぬか？　今宵こよひの宴會えんくわいには彼方あのかたも見みゆる筈はず、パリス殿どのの顏かほといふ一卷ひとまきの書ふみを善よう讀よんで、美びの筆ふでで物ものしてある懷なつかしい意味いみをば味あぢはや。顏中かほぢゅうのどこも／＼釣合つりあひが善よう取とれて、何一なにひとつ不足ふそくはないが、萬まん一にも、呑込のみこめぬ不審ふしんがあったら、傍註わきちゅうほどに物ものを言いふ眼附めつきを見みや。したが、此この戀こひの一卷ひとまきに只一たゞひとつ足たらはぬことゝいふは、表紙おもてがみがまだ附つかず、美うつくしう綴とぢても無ない。魚うをはまだ沖中おきなかにぢゃ。總そうじて内うちの美びを韜つゝむは外ほかの美びの身みの譽ほまれ、金玉きんぎょくの物語ものがたりを金きんの鈎子はさみがねに抱だかすれば、誰たが目めにも立派りっぱな寶物たからもの。彼君かのきみの有もたせます限かぎりの物ものがそもじのとなることゆゑ、嫁入よめいりしやればとて、其方そなたに何なんの損そんも無ないのぢゃ。
乳母　　損そんどころかいな！　女子をなごは男をとこゆゑに肥ふとりますわいの。
カピ妻　さ、ちゃッと言いや、パリス殿どのをお好すきゃることが出來できるか？
ヂュリ　さア、好すいても見みませう、見みて好すかるゝものなら。とはいへ、わたしの目めの矢頃やごろは、母はゝさまのお許ゆるしをば限かぎりにして、それより強きつうは射込いこまぬやうにいたしませう。
下人げにん出でる。
下人　　お方かたさま、お客人きゃくじんも渡わたらせられ、御膳部ごぜんぶも出でました、貴下こなたをばお召めし、姫ひいさまをばお尋たづね、乳母おんばどのはお庖厨だいどころで大小言おほこゞと、何なにもかも大紛亂おほらんちき。小僕わたくしめはこれからお給仕きふじに參まゐらにゃなりませぬ。すぐにいらせられませい。
カピ妻　すぐ行ゆこ。（下人入はひる）……ヂュリエットや、さ、若伯わかとのが待まってぢゃ。
乳母　　さ、早はやう往いて、嬉うれしい晝ひるに嬉うれしい夜よるをば添そへさっしゃれ。
皆々みな／＼入はひる。

第だい四場ぢゃう　　同處どうしょ。街上がいじゃう。

※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)國巡禮くわいこくじゅんれいに假裝かさうしたるロミオを先さきに、マーキューシオー、ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオー、おの／＼思おもひ／＼の假裝かさう、他ほかに五六人にん、いづれも道外だうけたる假面かめんを携たづさへ、炬火持たいまつもち、太鼓係等たいこがゝりとう、多勢おほぜいひきつれて出でる。
ロミオ　何なんと、例れいの通とほりに斷口上ことわりこうじゃうを言いうて入場はひったものか、但たゞしは無なしにせうか？
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　あのやうな冗繁あくどいことは最早もう流行はやらぬ。肩飾かたかけで目飾めかくしをしたキューピッドに彩色さいしきした韃靼形だったんがたの小弓こゆみを持もたせて、案山子かゞしのやうに、娘達むすめたちを追※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)おひまはさするのは最早もう陳ふるい。それから後見こうけんに附つけて貰もらうて、覺束無おぼつかなげに例れいの入場にふぢゃうの長白つらねを述のべるのも嬉うれしう無ない。先方さきが如何どう思おもはうとも、此方こっちは此方こっちで、思おもふ存分ぞんぶんに踊をどりぬいて還かへらう。
ロミオ　（炬火持に對ひ）俺おれに炬火たいまつを與くれい。俺おれには迚とても浮うかれた眞似まねは出來できぬ。餘あんまり氣きが重おもいによって、寧いっそ明あかるいものを持もたう。
マーキュ　いや／＼、ロミオどん、是非ぜひとも足下おぬしを踊をどらせねばならぬ。
ロミオ　いや／＼、滅相めっさうな。足下きみの舞踏靴をどりぐつの底そこは輕かるいが、予わしの心こゝろの底そこは鉛なまりのやうに重おもいによって、踊をどることはおろか、歩あるきたうもない。
マーキュ　はて、足下おぬしは戀人こひびとではないか？　すればキューピッドの翼はねでも借かりて、鴉からすや鳶とびのやうに翔かけったがよからう。
ロミオ　彼奴あいつの箭先やさきかゝってゐるゆゑ、翼はねを借かりたとても翔かけられぬわい、鳶とびや鴉からすのやうにも飛とべず、悲かなしい思おもひに繋つながれてゐるゆゑ、鷹たかのやうに高たかうも飛とべぬ。戀こひの重荷おもにに壓伏おしつけらるゝばかりぢゃ。
マーキュ　何なんぢゃ、壓伏おしつける？　あの戀こひに重荷おもにを？　さりとは温柔やさしい者ものを慘酷むごたらしう扱あつかうたものぢゃ。
ロミオ　なに、戀こひを温柔やさしい？　温柔やさしいどころか、粗暴がさつな殘忍あらけない者ものぢゃ。荊棘いばらのやうに人ひとの心むねを刺さすわい。
マーキュ　はて、戀こひめが殘忍あらけないことをすれば、此方こちからも殘忍あらけなうしたがよい。刺さしをったら、此方こっちからも刺さして、壓倒へこましたがよい。（從者を顧みて）……面つらを隱かくす假面めんを與くれ。
從者じゅうしゃより假面めんを受取うけとり、被かぶらうとして
醜男面ひょっとこづらに假面めんは無用むようぢゃ！（と假面を抛出なげだしながら）誰たれが皿眼さらまなこで、此この見みともない面つらを見みやがらうと儘まゝぢゃ！　出額でこすけが赧あかうなるばかりぢゃわい。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　さア／＼、敲戸たゝいて入はひったり。入はひったらば、直すぐ一しょに踊をどり出ださうぞよ。
ロミオ　（從者にむかひ）俺おれには炬火たいまつを與くれ。氣きの輕かるい陽氣やうきな手合てあひは、舞踏靴をどりぐつの踵かゝとで澤山たんと無感覺むかんかくな燈心草とうしんぐさを擽こそぐったがよい。俺おれは、祖父ぢゝいの訓言通をしへどほり、蝋燭持らうそくもちをして高見たかみの見物けんぶつ。「好よい目めが出でた時とき、中止やめるは老巧者くろと」ぢゃ。
（舞踏室ぶたふしつ又または客室きゃくしつの床上ゆかうへに刈かり集あつめたるばかりの燈心草とうしんぐさ（藺ゐ）を敷しきしは當時たうじの上流じゃうりうの習ならはしなり。）
マーキュ　へん「黒くろい鼠ねずみ」と來くりゃ夜警吏よまはりの定文句きまりもんくぢゃが、もしも足下きみが「黒馬くろうま」なら、「沼ぬま」からではなく、はて、恐惶おほそれながら、足下きみが首くびッたけ沒はまってゐる戀こひの淵樣ふちさまから引上ひきあげてもやらうに。……（皆々に對ひ）おい、どうした？　こりゃ晝ひるの炬火たいまつぢゃわ。（むだな費つひえぢゃ。）
ロミオ　何なんの其樣そんなことが。
マーキュ　はて、斯かう愚圖ぐずついてゐるのは、晝間ひるま炬火たいまつを燃つけてゐるも同然どうぜんと言いふのぢゃ。これ、善よい意味いみに取とりゃれ。五智ちに只たゞ一度どッきりといふのが分別智ふんべつちぢゃが、善よい意味いみの事ことになら、分別智ふんべつちが常つねに五度ども働はたらく。
ロミオ　さア、會くわいへ行ゆかうとはわるい意味いみでもなからう、が、行ゆくのは智慧者ちえしゃの所爲しょゐではない。
マーキュ　とは何故なぜに？
ロミオ　昨夜ゆうべ予わしは夢ゆめを見みた。
マーキュ　俺おれも見みた。
ロミオ　そして足下きみの夢ゆめは？
マーキュ　空想家ゆめをみるをとこは囈言ねごとや空言そらごとを言いふのが癖くせぢゃといふことを。
ロミオ　囈言ねごとや空言そらごとの中うちにも動うごかぬ眞理まことが籠こもってゐる。
マーキュ　おゝ、それならば、あの、足下きみは昨夜ゆうべはマブ媛ひめ（夢妖精）とお臥ねやったな！　彼奴あいつは妄想もうざうを産うまする産婆さんばぢゃ、町年寄まちどしよりの指輪ゆびわに光ひかる瑪瑙玉めなうだまよりも小ちひさい姿すがたで、芥子粒けしつぶの一群ぐんに車くるまを牽ひかせて、眠ねぶってゐる人間にんげんの鼻柱はなばしらを横切よこぎりをる。其その車くるまの輻やは手長蜘蛛てながぐもの脛すね、天蓋てんがいは蝗蟲いなごの翼はね、※むながい［＃「革＋引」、40-5］は姫蜘蛛ひめぐもの絲いと、頸輪くびわは水みづのやうな月つきの光線ひかり、鞭むちは蟋蟀こほろぎの骨ほね、其その革紐かはひもは豆まめの薄膜うすかは、御者ぎょしゃは懶惰ぶしゃうな婢はしための指頭ゆびさきから發掘ほじりだす彼かの圓蟲まるむしといふ奴やつの半分はんぶんがたも無ない鼠裝束ねずみしゃうぞくの小ちひさい羽蟲はむし、車體しゃたいは榛はしばみの實みの殼から、それをば太古おほむかしから妖精すだまの車工くるましと定きまってゐる栗鼠りすと※(「虫＋齊」、第3水準1-91-69)※(「虫＋曹」、第3水準1-91-61)ぢむしとが製つくりをった。さて、此樣このやうな行裝ぎゃうさうで、彼奴きゃつが毎夜々々まいよ／＼、戀人共こひびとどもの頭腦あたまの中なかを馳※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)かけまはると、それが忽たちまち種々さま／″＼の夢ゆめとなる。廷臣ていしんの膝ひざを走はしれば平身低頭へいしんていとうの夢ゆめとなり、代言人だいげんにんの指ゆびを走はしれば忽たちまち謝金しゃきんの夢ゆめとなり、美人びじんの唇くちびるを走はしれば忽たちまち接吻キッスの夢ゆめとなる。……其その唇くちびるを、時ときとすると、マブめ、腹はらを立たって水腫みづぶくれに爛たゞれさせをる、息いきが香菓子にほひぐわしで臭くさいからぢゃ。或あるひはまた廷臣ていしんの鼻はなの上うへを走はしる、と叙任ぢょにんを嗅出かぎだす夢ゆめを見みる、或あるひは獻納豚をさめぶたの尻尾しっぽの毛けで牧師ぼくしの鼻はなを擽こそぐると、僧ばうずめ、寺領じりゃうが殖ふえたと見みる。或あるひは兵卒へいそつの頸筋元くびすぢもとを駈※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)かけまはる、すると敵てきの首くびを取とる夢ゆめやら、攻略のっとりやら、伏兵ふせぜいやら、西班牙イスパニアの名劍めいけんやら、底拔そこぬけの祝盃しゅくはいやら、途端とたんに耳元みゝもとで陣太鼓ぢんだいこ、飛上とびあがる、目めを覺さます、おびえ駭おどろいて、一言二言ひとことふたこと祈いのりをする、又また就眠ねいる。乃至ないしは眞夜中まよなかに馬うまの鬣たてがみを紛糾こぐらからせ、又または懶惰女ぶしゃうをんなの頭髮かみのけを滅茶滅茶めちゃめちゃに縺もつれさせて、解とけたら不幸ふかうの前兆ぜんてうぢゃ、なぞと氣きを揉もまするもマブが惡戲いたづら。或あるひは娘共むすめどもが仰向あふむけに臥ねてゐる時分じぶんに、上うへから無上むしゃうに壓迫おさへつけて、つい忍耐がまんする癖くせを附つけ、難なんなく強者つはものにしてのくるも彼奴きゃつの業わざ。乃至ないしは……
ロミオ　しッ／＼、もう止やめた、止やめた！　足下きみは意義たわいもないことをばかりお言いやる。
マーキュ　さもさうず、夢ゆめの話はなしぢゃ。夢ゆめは空想くうさうの兒こで、役やくに立たたぬ腦なうから生うまるゝ。そも／＼空想くうさうは、空氣くうきよりも仄ほのかなもので、今いまは北國ほっこくの結氷こほりに言寄いひよるかと思おもへば、忽たちまち腹はらを立たてゝ吹變ふきかはって、南みなみの露つゆに心こゝろを寄よするといふ其その風かぜよりも浮氣うはきなものぢゃ。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　其その風かぜに似にた浮うかれ話ばなしに、大分だいぶんの時ときが潰つぶれた。ようせぬと、夜會やくわいが果はてゝ、時後ときおくれになってしまはう。
ロミオ　（獨語のやうに）俺おれはまた早はやまりはせぬかと思おもふ。運うんの星ほしに懸かゝってある或さる怖おそろしい宿命しゅくめいが、今宵こよひの宴えんに端はしを開ひらいて、世よに倦うみ果はてた我わが命數めいすうを、非業無慚ひごふむざんの最期さいごによって、絶たたうとするのではないか知しらぬ。とはいへ、一生しゃうの航路ふなぢをば一ひとへに神かみに任まかした此身このみ！……（一同に對ひ）さ、さ、元氣げんきな人達ひとたち。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　打うて、太鼓たいこを。
一同どう揃そろうて入はひる。

第だい五場ぢゃう　　同處どうしょ。カピューレット邸ていの廣間ひろま。

樂人共がくじんども控ひかへてゐる。給仕人共きふじにんども、布巾ふきんを携たづさへて出いで來きたり、取散とりちらしたる盃盤はいばんをかたづくる。
甲給仕　ポトパンは何處どこへ往うせた？　かたづける手傳てつだひをしをらぬ。かたづけ役やくの癖くせに！　拭役ふきやくの癖くせに！
乙給仕　饗應もてなしの式作法しきさはふ一切さいを、一人ひとりや二人ふたりの、洗あらひもせぬ手てでしてのくるやうでは、穢むさいことぢゃ。
甲給仕　疊椅子たゝみいすを彼方あっちへ、膳棚ぜんだなもかたづけて。よしか、其その皿さらも頼たのんだ。おいおい、杏菓子あんずぐわしを一片ひときれだけ取除とっといてくりゃ。それから足下おぬし、深切しんせつがあるなら、門番もんばんにさう言いうて、スーザンとネルを入はひらせてくりゃ。（奧に向つて［＃「向つて」はママ］）……アントニー！　ポトパン！
丙（ポトパン）と丁（アントニー）と出いで來きたる。
丙　　　唯おう、こゝにゐるわい。
甲給仕　足下おぬしをば、大廣間おほびろまで、最前さっきから呼ばってぢゃ、探さがしてぢゃ、尋※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)たづねまはしてぢゃ。
丁　　　さう彼方此方あッちこッちに居をることは出來できんわ。（一同に對ひ）ささ、働はたらいた働はたらいた。暫時ちっとのまぢゃ、働はたらいた／＼。さうして長生ながいきすりゃ持丸長者もちまるちゃうじゃぢゃ。
一同どうかたづけながら入はひる。
カピューレット長者ちゃうじゃを先さきに、ヂュリエット及および同族どうぞくの者もの多勢おほぜい一方ぱうより出いで、他方たはうより出いで來きたる賓客ひんきゃくの男女なんにょ及およびロミオ、マーキューシオー等ら假裝者かさうしゃの一群ぐんを迎むかふる。
カピ長　（ロミオの一群に）ようこそ、方々かた／″＼！　肉刺まめで患なやんで居をらん婦人ふじんは、何いづれも喜よろこんで舞踏敵手おあひてになりませうわい。……（婦人連に對ひ）あァ、はァ、姫御前ひめごぜたち！　舞踏をどるを否いやぢゃと被言おしゃる仁ひとがあるか？　品取ひんどって舞踏をどらッしゃらぬ仁ひとは、誓文せいもん、肉刺まめが出來できてゐるンぢゃらう。何なんと圖星づぼしであらうが？……（ロミオらに對ひ）ようこそ！　吾等われらとても假面めんを被つけて、美人びじんの耳みみへ氣きに入いりさうな話はなしを囁さゝやいたこともござったが、あゝ、それは既もう過去むかしぢゃ、遠とほい／＼過去むかしぢゃ。……方々かた／″＼、ようこそ來わせられた……（樂人を顧みて）さゝ、樂人共がくじんども、はじめい。……（一同に對ひ）開ひらいた／＼！　つゝと開ひらいて、さゝ、舞踏をどったり、娘達むすめたち。
樂がくを奏そうしはじむる。男女なんにょ手てを取とりあうて舞踏をどる。
もっと燭火あかしを持もて、家來共けらいども！　食卓テーブルを疊たゝんでしまうて、爐ろの火ひを消けせ、餘あまり室内ざしきが熱あつうなったわ。……あゝ、こりゃ思おもひがけん好よい慰樂なぐさみであったわい。……（同族の一老人に對ひて）いや、叔父御をぢご、まま腰こしを下おろしめされ、貴下こなたも予わしも最早もう舞踏時代ダンスじだいを過すごしてしまうた。お互たがひに假面めんを着つけて以來このかた、もう何年なんねんにならうかの？
カピ叔　大丈夫だいぢゃうぶ、三十年ねんぢゃ。
カピ長　何なんと被言おしゃる！　まさかに然程さほどではない、まさかに。リューセンシオーの婚禮以來こんれいいらいぢゃによって、すぐ鼻はなの先さきにペンテコスト（祭日）が來きたとして、二十五年ねん、あの時をりに被假面かぶったのぢゃ。
カピ叔　いや、もそっと經たつ、もそっと。彼あれの倅せがれがもそっと年としを取とってをる。もう三十ぢゃ。
カピ長　確しかとさやうか？　あの倅せがれには、つい二年程前ねんほどまへかたまでは、後見人こうけんにんが附ついてをった。
此間このあひだロミオは道外假面だうけめんを被かぶったるまゝ獨ひとり離はなれて見みてゐる。其中そのうちヂュリエットと一武官ナイトと手てを取とりあうて舞踏をどりはじむる。
ロミオ　（傍の給仕に對ひて）あの武家ぶけと手てを取とりあうてござる彼あの姫ひめは何誰どなたぢゃ？
給仕　　小僕わたくしは存ぞんじませぬ。
ロミオ　おゝ、あの姫ひめの美麗あてやかさで、輝かゞやく燭火ともしびが又また一段だんと輝かゞやくわい！　夜よるの頬ほゝに照映てりはゆる彼あの姫ひめが風情ふぜいは、宛然さながら黒人種エシオツプの耳元みゝもとに希代きたいの寶玉はうぎょくが懸かゝったやう、使つかはうには餘あまり勿體無もったいなく、下界げかいの物ものとしては餘あまり靈妙いみじい！　あゝ、あの姫ひめが餘よの女共をんなどもに立交たちまじらうてゐるのは、雪ゆきはづかしい白鳩しらはとが鴉からすの群むれに降おりたやう。此この一舞踏ひとをどりが濟すんだなら、姫ひめの居處ゐどころに目めを着つけ、此この賤いやしい手てを、彼あの君きみの玉手ぎょくしゅに觸ふれ、せめてもの男冥利をとこみゃうりにせう。あゝ、俺おれは今いままでに戀こひをしたか？　やい、眼まなこよ、せなんだと誓言せいごんせい！　今夜こんやといふ今夜こんやまでは、眞まことの美人びじんをば見みなんだわい。
此中このうち來賓中らいひんちゅうのチッバルト此この聲こゑを聞咎きゝとがめたる思入おもひいれにて前まへに進すゝむ。
チッバ　あの聲音こわねはモンタギュー家けの奴やつに相違さうゐない。……（從者に對ひ）予よが細刃劍ほそみを持もて。……何なんぢゃ？　下司奴げすやっこめが、道外假面だうけめんに面おもてを隱かくして、此この祝典しゅくてんを蹈附ふみつけにしようとは不埓ふらちぢゃ！　カピューレットの正統しゃうとうたる權利けんりを以もって、彼奴きゃつめをば打殺ぶちころしても、俺おれゃ罪惡ざいあくとは思おもはぬわい。
カピ長　はて、甥をひよ、何なんとしたのぢゃ！　おぬしは何なんで其樣そのやうに息卷いきまくのぢゃ？
チッバ　叔父上をぢうへ、あれは敵方てきがたのモンタギューでござる。今夜こんやの祝典しゅくてんを辱はづかしめん惡意あくいを抱いだいて來きをったのでござる。
カピ長　年若としわかのロミオではないか？
チッバ　でござる、そのロミオ奴めでござる。
カピ長　まゝ、堪忍かんにんして、放任うちすてゝおきゃれ、立派りっぱな紳士しんしらしう立振舞たちふるまうてをる上うへに、實じつを言いへば、日頃ひごろ※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナが、徳とくもあり行状ぎゃうじゃうもよい若者わかものと自慢じまんの種たねにしてゐるロミオぢゃ。全市ぜんしの富とみに易かへても、我家わがやで危害きがいを加くはへたうない。ぢゃによって、堪忍かんにんして見みぬ介ふりをしてゐやれ。これは予よの意志いしぢゃ、予よを重おもんじておくりゃらば、顏色がんしょくを麗うるはしうし、其そのむづかしい貌かほを止やめておくりゃれ。祝宴最中いはひもなかに不似合ふにあひぢゃわい。
チッバ　いや、不似合ふにあひでござらん、あんな奴やつが居ゐるからは。堪忍かんにんはなりませぬ。
カピ長　はて、堪忍かんにんせにゃなりませぬ。これさ、どうしたもの！　せにゃならぬといふに。これさ／＼、こゝの主長あるじは乃公おれでは無ないか？　汝おぬしか？　さゝゝ。汝おぬしが堪忍かんにんならん！　はれやれ、汝おぬしは來賓中らいひんちゅうに大鬪爭おほげんくわを起おこさせうぞよ！　大騷動おほさうどうを爲出來しでかさうわい！　えゝ、汝おぬしのやうなのが、その！
チッバ　でも、これは耻辱ちじょくでござる。
カピ長　さゝゝ、沒分曉漢わからんをとこぢゃ。確しかと然樣さやうか？　其樣そのやうなことをすれば身爲みだめになるまい。……すれば、何なんぢゃな、では乃公おれの命令いふことを聽きかぬ！　はて、今いまが時ときぢゃ。……（來賓の方に向ひて）よう／＼、出來できた！（又チッバルトに對ひ）向不見むかうみずにも程ほどがあるわさ、さゝ。はて、靜しづかに、若もし……（從者を顧みて）もそっと燭火あかしを持もて、燭火あかしを！……（又チッバルトに對ひ）どうしたものぢゃ！　是非ぜひとも靜しづかにして貰もらはう。……（來賓らいひんに對むかひ）陽氣やうきに／＼！
チッバ　無理往生むりわうじゃうの堪忍かんにんと持前もちまへの癇癪かんしゃくとの出逢であひがしらで、挨拶あいさつの反そりが合あはぬゆゑ、肉體中からだぢゅうが顫動ふるへるわい。引退ひきさがらう。併しかし今いまこそ甘あまったるう見みえてをる汝うぬが今夜こんやの推參すゐさんに、やがて苦にがい味あぢを見みせてくれうぞ。
チッバルト入はひる。
此間このあひだにロミオは假面かめんのまゝ、巡禮姿じゅんれいすがたのまゝにてヂュリエットに近ちかづき、膝ひざまづきて恭うや／＼しく其その手てを取とる。
ロミオ　此この賤いやしい手てで尊たふとい御堂みだうを汚けがしたを罪つみとあらば、面かほを赧あかうした二人ふたりの巡禮じゅんれい、此この唇くちびるめの接觸キッスを以もって、粗あらい手ての穢よごした痕あとを滑なめらかに淨きよめませう。
ヂュリ　巡禮じゅんれいどの、作法さはふに善よう合かなうた御信仰ごしんかうぢゃに、其樣そのやうにおッしゃッては、其そのお手てに甚いかァい氣きの毒どく。聖者せいじゃがたにも御手みてはある、其その御手みてに觸ふるゝのが巡禮じゅんれいの接吻禮キッスとやら。
ロミオ　でも聖者せいじゃにも唇くちびるがあり、巡禮じゅんれいにも唇くちびるがござりまする。
ヂュリ　さア、それはお祈願いのりだけに用もちふるもの。
此この問答もんだふのうちに、二人ふたりはやゝ群衆ぐんしゅうと離はなるゝ。
ロミオ　おゝ、いでさらば、我わが聖者せいじゃよ、手ての爲なす所爲わざを唇くちびるに爲なさしめたまへ。唇くちびるが祈いのりまする、聽ゆるしたまへ、さもなくば、信心しんじんも破やぶれ、心こゝろも亂みだれまする。
ヂュリ　切せつなる祈願いのりの心こゝろは酌くんでも、動うごかぬのが聖者せいじゃの心こゝろ。
ロミオ　では、お動うごきなされな、祈願いのりの御報おむくいをいたゞきます。
と接吻キッスする。
斯かうして貴孃あなたのお唇くちびるで、私わたしの罪つみが此この唇くちびるから清きよめられ、拭ぬぐはれました。
ヂュリ　では、其その罪つみは妾わたしの唇くちびるへ移うつりましたのかえ？
ロミオ　何なに、わたしの罪つみが移うつった？　おゝ、嬉うれしうもお咎とがめなされた！　では、其その罪つみを戻もどして下くだされ。
と又また接吻キッスする。
ヂュリ　ても、まア、御均等ごきんとうな。
乳母うば出でる。
乳母　　姫ひいさま、お母かゝさまがお話はなしがありますといな。
これにてヂュリエット離はなるゝ。
ロミオ　あの方かたの母御はゝごとは、何誰どなたぢゃ？
乳母　　はて、お若わかい方かた、母御樣はゝごさまは此このお邸やしきの内室おかたさまぢゃがな、よいお仁ひとで、御發明ごはつめいな、御貞節ごていせつな。わしは、今いま貴下こなたが話はなしてござらしゃった孃ぢゃうさまを育そだてました。もしえ、あの子こを手てに入いれさッしゃるお仁ひとは、澤山々々たんと／＼貨幣ちんからにありつきますぞや。
乳母うば離はなるゝ。
ロミオ　ではカピューレットの女むすめか？　おゝ、怖おそろしい勘定狂かんぢゃうくるはせ！　俺おれの命いのちはこりゃもう敵かたきからの借物かりものぢゃわ。
此時このとき、ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオー近寄ちかよりて
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　さア、歸かへらう／＼。娯樂たのしみはもう頂點ちゃうてんぢゃ。
ロミオ　なるほど、さうらしい。（獨語のやうに）なりゃこそ彌※(二の字点、1-2-22)いよ／＼心こゝろが不安ふあんになる。
賓客等ひんきゃくらおひ／＼歸かへり支度じたくをする。
カピ長　あ、いや、方々かた／″＼、お歸かへり支度じたくをなされな。粗末そまつな點心ごだんながら、只今たゞいま準備中よういちゅうでござる。（皆々代る／″＼長者に近づきて、小聲に挨拶して歸りゆく）……でござるか？　はて、然しからば、何いづれも忝かたじけなうござった。かたじけなうござる。御機嫌ごきげんようござりませ。……（從者に向ひ）もそっと燭火あかしを持もて、こゝへ！……（賓客を送り果てゝ、家人の方に向ひ）さゝ、此上このうへは、寢ねやう／＼。あゝ、こりゃ、とんと夜よが更ふけたわ。どりゃ俺おれも休やすまう。
一同いちどう次第しだいに入はひる。ヂュリエットと乳母うばと殘のこりて、出行いでゆく客きゃくを見送みおくる。
ヂュリ　乳母うば、こゝへ來きや。あのお方かたは誰だれ？
乳母　　タイビリオーさまのお嗣子あとゝりでござります。
ヂュリ　今いま戸口とぐちから出でてゆかうとしてゐるのは誰だれ？
乳母　　さいな、ペトルーチオーさまの若樣わかさまでござりましょ。
ヂュリ　あの方かたは、ありゃ誰だれ？　その後あとから行ゆかッしゃる……ありゃ踊をどらなんだ人ひとぢゃ。
乳母　　存ぞんじませぬ。
ヂュリ　さ、往いて、問とうて來きや。……
乳母うば離はなるゝ。
もしも婚禮こんれいが濟すんだお方かたなら、墓はかが予わしの新床にひどことならうも知しれぬ。
乳母うば戻もどり來きたる。
乳母　　名なはロミオと言いうて、お邸うちとは敵かたきどうしのモンタギュー家けの若わかぢゃといな。
ヂュリ　（獨語的に）類無たぐひないわが戀こひが、類たぐひないわが憎怨にくしみから生うまれるとは！　とも知しらで早はやう見知みしり、然さうと知しった時ときはもう晩蒔おそまき！　あさましい因果いんぐわな戀こひ、憎にくい敵かたきをば可愛かはゆいと思おもはにゃならぬ。
乳母　　何なんぢゃいな、それは？　何なにを言いうてござる？
ヂュリ　歌うたぢゃ……今いまがた一しょに舞踏をどった人ひとに教をしへて貰もらうた歌うたぢゃ。
奧おくにて「ヂュリエット」と呼よぶ。
乳母　　はい／＼、只今たゞいま！……さゝ、參まゐりましょ。お客人きゃくじんは皆みなもう歸かへってしまはッしゃれた。
ヂュリエットを促うながして入はひる。
［＃改ページ］

第二幕

序詞役じょしやく出でる。
序詞役　扨さても老おいにたる情慾じゃうよくは方まさに最期いまはの床とこに眠ねぶりて、
うら若わかき戀情れんじゃうが其跡そのあとを襲つぐべく起出おきいづる。
曾かつては憧あこがれて、爲ために死しなんとまで呻うめきつる其その美女びぢょも
今いまの目めには美うつくしとも見みえず、ヂュリエット姫ひめに比くらべては。
かくて戀こひつ戀こはれつ、二人ふたりは一樣やうに色いろに迷まよへり、
然しかはあれど、歎顏かこちがほに、敵かたきの子こに言寄いひよる辛つらさ、
女をんなもまた鉤つりばりより戀こひの甘餌あまゑさを盜ぬすむ怖おそろしさ。
敵かたきどしなれば誓約かねごとをも世よの人並ひとなみには告つげがたく、
姫ひめも同おなじ思おもひながら、逢あふべき傳手つては更さらに少すくなし。
さもあれ、情火じゃうくわは力ちからを、時ときは便宜びんぎを與あたへければ、
限かぎりなき危あやふさの中うちに、二人ふたりは限かぎりなく嬉うれしく逢あへり。
序詞役じょしやく入はひる。


第だい一場じゃう　※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナ。カピューレット邸ていの庭園ていゑんの石垣いしがきに沿そへる小逕こみち。

ロミオ出でる。
ロミオ　心臟しんざうが此處こゝに殘のこってゐるのに、何なんで歸かへることが出來できようぞい？　鈍どんな土塊つちくれめ、引返ひッかへして、おのが中心たましひを搜さがしをれ。
石垣いしがきを攀よぢて庭内ていないへ飛下とびおりる。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオーとマーキューシオーと出る。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　ローミオー！　ロミオどの！　ローミオー！
マーキュ　彼奴あいつめは怜悧者りこうものぢゃ、一定てっきりとうに拔駈ぬけがけして、今頃いまごろは（家うちに）臥ねてゐるのであらう。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　いや／＼、此方こっちへ走はしって來きて、此この石垣いしがきを飛越とびこえた。マーキューシオーどの、呼よんで見みさっしゃい。
マーキュ　いや、序ついでに祈いのり出だして見みよう。……（呪文の口眞似にて）ローミオーよ！　浮氣うはきよ！　狂人きゃうじんよ！　煩惱ぼんなうよ！　戀人こひびとよ！　溜息ためいきの姿すがたにて出現しゅつげんめされ。たッた一句くをでも宣言おほせられたならば、小生それがしは滿足まんぞくいたす。只たゞ「嗚呼あゝ」とだけ叫さけばっしゃい、たッた一言ひとこと、戀ラヴとか、鳩ダヴとか宣言おほせられい。此方こちの昔馴染むかしなじみの※(濁点付き片仮名ヰ、1-7-83)ーナス殿どのを美ほめさっしゃい、乃至ないしは盲目めんないの息子殿むすこどの、例れいのコーフェーチュアの王わうさんが乞食娘こじきむすめに惚ほれた時分じぶんに、見事みごと圖星づぼしを射中いあてたといふ彼あの弓取ゆみとりのキューピッドに何なんとか綽號あだなでも附つけさっしゃい。……聞きこえぬな、動うごかぬな、出でて來こぬな。はて、お猿さるどのは亡なくなられたさうな。こりゃ彌※(二の字点、1-2-22)いよ／＼祈いのらねばならぬ。……（又祈祷の口眞似）あはれ、ローザラインの彼あの星ほしのやうな眼附まみつき、あの高々たか／″＼とした額ひたひ、あの眞紅まっくれなゐの唇くちびる、あの可憐かはゆらしい足あし、あの眞直まっすぐな脛すね、あのぶる／＼と顫ふるへる太股ふともゝ乃至ないし其その近邊ちかまにある處々ところ／″＼に掛かけて祈いのりまするぞ。速すみやかに御正體ごしゃうたいを現あらはせられい。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　聞きこえたら、腹はらを立たたうぞ。
マーキュ　何なんの腹はらを立たたう。若もし戀女こひをんなの魔まの輪近わぢかくへ奇異おつりきな魔物まものを祈いのり出だして、彼女おてきが調伏てうぶくしてしまふまで、それを突立つッたたせておいたならば、それこそ惡戲てんごうでもあらうけれど、今いまのは正直正當しゃうぢきしゃうたうな呪文じゅもんぢゃ、彼女おてきの名なを借かりて、ロミオめを祈いのり出ださうとしたまでの事ことぢゃ。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　こりゃ何なんでも、木この間まに隱かくれて、夜露よつゆと濡ぬれの幕まくという洒落しゃれであらう。戀こひは盲めくらといふから、闇やみは恰ちょうどお誂あつらへぢゃ。
マーキュ　はて、戀こひが盲めくらなら的まとを射中いあてることは出來できまい。今頃いまごろはロミオめ、枇杷びわの木蔭こかげに蹲踞しゃがんで、あゝ、予わしの戀人おてきが、あの娘共むすめどもが内密ないしょで笑わらふ此この枇杷びはのやうならば、何なんのかのと念ねんじて居ゐよう。おゝ、ロミオ、若もし足下おぬしの戀人おてきが、な、それ、開放あけっぱなしの何なにとやらで、そして足下おぬしが彼女あれの細長林檎ほそながりんごであつたなら！［＃「あつたなら！」はママ］　ロミオ、さらば。野天のてんの床とこでは寒さぶうて寢ねられぬ、下司床げすどこで臥ねよう。さ、往ゆかうか？
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　では、去いなう。見附みつけられまいと爲してゐるものを搜さがすのは無要むだぢゃ。
二人ふたりとも入はひる。

第だい二場ぢゃう　　同處どうしょ。カピューレット家けの庭園ていゑん。

ロミオ前まへに出でる。
ロミオ　人ひとの痛手いたでを嘲あざけりをる、自身じしんで創きずを負おうたことの無ない奴やつは。……
此時このときヂュリエット二階かいの窓まどに現あらはるゝ。
や、待まてよ！　あの窓まどから洩もるゝ光明あかりは？　あれは、東方ひがし、なればヂュリエットは太陽たいやうぢゃ！……あゝ、昇のぼれ、麗うるはしい太陽たいやうよ、そして嫉妬深りんきぶかい月つきを殺ころせ、彼奴あいつは腰元こしもとの卿そもじの方はうが美うつくしいのを恨くやしがって、あの通とほり、蒼あをざめて居ゐる。あの嫉妬家やきもちやきに奉公ほうこうするのはよしゃれ。彼奴あいつの制服しきせは青白あをじろい可嫌いやな色いろぢゃゆゑ、阿呆あはうの外ほかは誰たれも着きぬ、脱ぬいでしまや。……おゝ、ありゃ姫ひめぢゃ。戀人こひびとぢゃ！　あゝ、此この情こゝろを知しらせたいなア！……何なにやら言いうてゐる。いや、何なにも言いうてはゐぬ。言いはいでもかまはぬ、あの目めが物ものを言いふ。あの目めへ返答へんたふをせふ。……あゝ、こりゃあんまり厚顏あつかましかった。俺おれに言いうてゐるのでは無ない。大空中おほぞらぢゅうで最いっち美うつくしい二箇ふたつの星ほしが、何なにか用ようがあって餘所よそへ行ゆくとて、其間そのあひだ代かはって光ひかってくれと姫ひめの眼めに頼たのんだのぢゃな。若もし眼めが星ほしの座ざに直なほり、星ほしが姫ひめの頭つむりに宿やどったら、何なんとあらう！　姫ひめの頬ほゝの美うつくしさには星ほしも羞耻はにかまうぞ、日光にっくわうの前まへの燈ランプのやうに。然しかるに天てんへ上のぼった姫ひめの眼めは、大空中おほぞらぢゅうを殘のこる隈くまもなう照てらさうによって、鳥とりどもが晝ひるかと思おもうて、嘸さぞ啼立なきたつることであらう。あれ、頬ほゝを掌てのひらへもたせてゐる！　おゝ、あの頬ほゝに觸ふれようために、あの手袋てぶくろになりたいなア！
ヂュリ　あゝ／＼！
ロミオ　物ものを言いうた。おゝ、今いま一度ど物もの言いうて下くだされ、天人てんにんどの！　さうして高たかい處ところに光ひかり輝かゞやいておゐやる姿すがたは、驚おどろき異あやしんで、後あとへ退さがって、目めを白しろうして見上みあげてゐる人間共にんげんどもの頭上とうじゃうを、翼はねのある天てんの使つかひが、徐しづかに漂たゞよふ雲くもに騎のって、虚空こくうの中心たゞなかを渡わたってゐるやう！
ヂュリ　おゝ、ロミオ、ロミオ！　何故なぜ卿おまへはロミオぢゃ！　父御てゝごをも、自身じしんの名なをも棄すてゝしまや。それが否いやならば、せめても予わしの戀人こひゞとぢゃと誓言せいごんして下くだされ。すれば、予わしゃ最早もうカピューレットではない。
ロミオ　（傍を向きて）もっと聞きかうか？　すぐ物ものを言いはうか？
ヂュリ　名前なまへだけが予わしの敵かたきぢゃ。モンタギューでなうても立派りっぱな卿おまへ。モンタギューが何なんぢゃ！　手てでも、足あしでも、腕かひなでも、面かほでも無ない、人ひとの身みに附ついた物ものではない。おゝ、何なにか他ほかの名前なまへにしや。名なが何なんぢゃ？　薔薇ばらの花はなは、他ほかの名なで呼よんでも、同おなじやうに善よい香かがする。ロミオとても其通そのとほり、ロミオでなうても、名なは棄すてゝも、其その持前もちまへのいみじい、貴たふとい徳とくは殘のこらう。……ロミオどの、おのが有ものでもない名なを棄すてゝ、其代そのかはりに、予わしの身みをも、心こゝろをも取とって下くだされ。
ロミオ　（前へ進みて）おゝ、取とりませう。言葉ことばを其儘そのまゝ。一言ひとこと、戀人こひゞとぢゃと言いうて下くだされ、直すぐにも洗禮せんれいを受うけませう。今日けふからは最早もうロミオで無ない。
ヂュリ　や、誰たれぢゃ、夜よるの闇やみに包つゝまれて、内密事ないしょうごとを聞ききゃった其方そなたは？
ロミオ　名なは何なんと言いうたものか予わしは知しらぬ。なう、我わが聖者せいじゃよ、わが名なは君きみの敵かたきぢゃとあるゆゑ、自分じぶんながら憎にくうて／＼、紙かみに書かいてあるものなら、引破ひきやぶってしまひたい。
ヂュリ　お前まへの言葉ことばはまだ百言こととは聞きかなんだが、其その聲こゑには記憶おぼえがある。ロミオどのでは無ないか、モンタギューの？
ロミオ　孰どちらでもない、卿そもじが嫌きらひぢゃと言いやるならば。
ヂュリ　ま、どうして此處こゝへ？　して、まア何なんの爲ために？　あの石垣いしがきは高たかいゆゑ容易たやすうは攀のぼられぬに、それにお前まへの身分みぶんは、若もし家うちの者ものが見附みつくれば、忽たちまちお命いのちが無なからうずに。
ロミオ　あの石垣いしがきは、戀こひの輕かるい翼つばさで踰こえた。如何いかな鐵壁てっぺきも戀こひを遮さへぎることは出來できぬ。戀こひは欲ほっすれば如何樣どのやうな事ことをも敢あへてするもの。卿そもじの家うちの人達ひとたちとても予わしを止とゞむる力ちからは有もたぬ。
ヂュリ　でも見附みつくれば殺ころしませうぞえ。
ロミオ　あゝ、彼等かれら十人にん、二十人にんの劍けんよりも、それ、その卿そもじの眼まなこにこそ人ひとを殺ころす力ちからはあれ。唯たゞもう可愛かはゆい目めをして下くだされ、彼等かれらに憎にくまれうと何なんの厭いとはう。
ヂュリ　予わしゃ何樣どのやうな事ことがあっても、お前まへをば見附みつけさせたうない。
ロミオ　幸さいはひ夜よるの衣ころもを被きてゐる、見附みつけらるゝ筈はずはない。とはいへ卿そもじに愛あいせられずば、立地たちどころに見附みつけられ、憎にくまれて、殺ころされたい、愛あいされぬ苦くるしみを延のばさうより。
ヂュリ　誰たが案内しるべをしておいでなされた？
ロミオ　戀こひが案内しるべぢゃ。尋たづねて見みい、と眞先まっさきに促進すゝめたも戀こひなれば、智慧ちゑを借かしたも戀こひ、目めを借かしたも戀こひ、予わしは舵取かぢとりではないけれども、此樣このやうな貨たからを得えようためなら、千里り萬里りの荒海あらうみの、其先そのさきの濱はまへでも冐險ばうけんしよう。
ヂュリ　夜よるといふ假面めんを附つけてゐればこそ、でなくば恥はづかしさに此この頬ほゝが眞赤まっかにならう、今宵こよひ言いうたことをついお前まへに聽きかれたゆゑ。予わしとても、體裁ていさいつくり、そなことを言いひはせぬ、と言いひたいは山々やま／＼なれど、式しきや作法さはふは、もうおさらば！　もし、予わしを可愛いとしう思おもうて下くださるか？「唯うん」と被言おッしゃるであらうがな。そして、それをまた實まことと思おもはう。でも誓言せいごんなどなされると（却かへって）心元こゝろもとない、戀人こひゞとが誓言せいごんを破やぶるのはヂョーヴ神じんも只たゞ笑わらうてお濟すましなさるといふゆゑ。おゝ、ロミオどの、可愛いとしう思おもうて下くださるが實まことなら、其通そのとほり誠實せいじつに言いうて下くだされ。それとも、餘あまり手輕てがるう手てに入いったとお思おもひなさるやうならば、故わざと怖こはい貌かほをして、憎にくさうに否いやと言いはう、たとひお言寄いひよりなされても。さもなくば、世界せかいかけて否いやとは言いはぬ。あゝ、モンタギューどの、このやうに愚おろからしう言いうたなら、わしを蓮葉はすはなともお思おもひなさらうが、巧妙じゃうずに餘所々々よそ／＼しう作つくりすます人達ひとたちより、もそッと眞實しんじつな女子をなごになって見みせう。いゝえ、わしとても、若もし戀こひの祕密ないしょうを聽きかれなんだら、もッと餘所々々よそ／＼しうしたであらう。ぢゃによって、お恕ゆるしなされ、斯かう速はやう靡なびいたをば浮氣うはきゆゑと思おもうて下くださるな、夜よるの暗やみに油斷ゆだんして、つい下心したごゝろを知しられたゝめぢゃ。
ロミオ　姫ひめよ、あの實みを結むすぶ樹々きゞの梢こずゑの尖々さき／″＼をば白銀色しろがねいろに彩いろどってゐるあの月つきを誓語ちかひに懸かけ……
ヂュリ　おゝ、※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)まはる夜毎よごとに位置ゐちの變かはる不貞節ふていせつな月つきなんぞを誓言せいごんにお懸かけなさるな。お前まへの心こゝろが月つきのやうに變かはるとわるい。
ロミオ　では、何なにを誓語ちかひに懸かけよう？
ヂュリ　誓言せいごんには及およびませぬ。若もし又また、誓言せいごんなさるなら、わたしが神樣かみさまとも思おもふお前まへの身みをお懸かけなされ、すればお言葉ことばを信しんじませう。
ロミオ　予わしの眞心こゝろが眞實しんじつ戀こひ慕したふ……
ヂュリ　あゝ、もし、誓言せいごんは、およしなされ。嬉うれしいとは思おもへども、今宵こよひすぐに約束やくそくするのは、粗忽そこつらしうて、無分別むぶんべつで、早急さっきふで、あッといふ間まに消きえる稻妻いなづまのやうで、嬉うれしうない。戀こひしいお人ひと、さよなら！　此この戀こひの莟つぼみは、皐月さつきの風かぜに育そだてられて、又また逢あふまでには美うつくしう咲さくであらう。さよなら／＼！　お前まへの胸むねにも予わしの胸むねにも、なつかしい安息あんそくの宿やどりますやう！
ロミオ　すりゃ、これぎりで別わかれようといふのか？
ヂュリ　では、どうせいと被言おッしゃるのぢゃ？
ロミオ　予わしの誓言ちかひと取換とりかへに、卿そなたの眞實しんじつの誓言ちかひが聽ききたい。
ヂュリ　わしの誓言ちかひは、さう言いはれぬ前さきに、献あげてしまうた。もう一度ど献あげらるゝやうであって欲ほしい。
ロミオ　では、取戻とりもどしたいか？　何なんの爲ために？
ヂュリ　有ある限かぎりを改あらためて獻あげうために。とはいへ、それも、畢竟ひっきゃうは、戀こひしいからのこと、献あげたいと思おもふ心こゝろも海うみ、戀こひしいと思おもふ心こゝろも海うみの、其その底そこは測はかり知しられぬ。献あぐれば献あぐる程ほど、尚なほ戀こひしさの増ますばかりで、どちらにも限かぎりは無ない。
此時このとき、奧おくにて乳母うばの聲こゑにて呼よぶ。
奧おくで何なにやら、かしましい聲こゑがする。戀こひしいお方かた、さよなら……あいあい、乳母うば、今いますぐに！……モンタギューどの、必かならず渝かはらず。ちょと待まってゝ下くだされ、すぐ又また戻もどって來こう。
ヂュリエット入はひる。
ロミオ　おゝ、有難ありがたい、かたじけない、何なんといふ嬉うれしい夜よる！　が、夜よるぢゃによって、もしや夢ゆめではないか知しらぬ。現うつゝにしては、餘あんまり嬉うれし過すぎて※(「言＋墟のつくり」、第4水準2-88-74)うそらしい。
ヂュリエット再ふたゝび階上かいじゃうに現あらはるゝ。
ヂュリ　ロミオどの、もう三言みことだけ、それで今宵こよひは別わかれませう。これ、お前まへの心こゝろに虚僞いつはりがなく、まこと夫婦めをとにならう氣きなら、明日あす才覺さいかくして使者つかひをば上あげませうほどに、何日いつ、何處どこで式しきを擧あぐるといふ返辭へんじをして下くだされ、すれば、一生しゃうの運命うんめいをばお前まへの足下あしもとに抛出なげだして、世界せかいの如何どんな端はてまでも、わしの殿御とのごとして隨ついてゆきませう。
乳母　　（奧にて）姫ひいさま！
ヂュリ　あい、今いますぐに。……したが、萬まん一にも正たゞしうないお心こゝろを有もってござらば、どうぞ……
乳母　　（奧にて）姫ひいさま！
ヂュリ　今いますぐに行ゆくわいの。……縁談えんだんを斷然ふっゝり止やめ、予わしをば勝手かってに泣なかして下くだされ。明日あす使つかひを送あげませうぞ。
ロミオ　後のちの生よをも誓言ちかひにかけて……
ヂュリ　千せんたびも萬まんたびも御機嫌ごきげんよう。
ヂュリエット入はひる。
ロミオ　千せんたびも萬まんたびも俺おれは機嫌きげんがわるうなったわ、卿そもじといふ光明ひかりが消きえたによって。戀人こひゞとに逢あふ嬉うれしさは、寺子共てらこどもが書物しょもつに離はなるゝ心持こゝろもちと同おなじぢゃが、別わかるゝ時ときの切せつなさは、澁面じふめんつくる寺屋通てらやがよひぢゃ。
ロミオそろ／＼と退さがる。
ヂュリエット又また階上かいぢゃうに現あらはれて、窃そっと口笛くちぶえを鳴ならす。
ヂュリ　histヒスト！　ローミオー！　histヒスト！……おゝ、こちの雄鷹をたかをば呼返よびかへす鷹匠たかじゃうの聲こゑが欲ほしいなア、囚人とらはれの身みゆゑ聲こゑが嗄しゃがれて、高々たか／″＼とは能よう呼よばぬ。さもなかったなら、木魂姫こだまひめが臥ねてゐる其その洞穴ほらあなが裂さくる程ほどに、また、あの姫ひめの空うつろな聲こゑが予わしの聲こゑよりも嗄しゃがるゝ程ほどに、ロミオ／＼と呼よばうものを。
ロミオ　や、俺おれの名なを呼よぶは戀人こひゞとぢゃ。あゝ、戀人こひゞとの夜よるの聲音こわねは、白銀しろがねの鈴すゞのやうにやさしうて、聞きけば聞きくほどなつかしい！
ヂュリ　ローミオー！
ロミオ　戀人こひゞとか？
ヂュリ　明日あす、何時頃なんじごろに使つかひを送あげうぞ？
ロミオ　九時じに。
ヂュリ　あい、ちがへはせぬ。あゝ、その時ときまでが二十年ねん！　あれ、忘わすれた、何なんでお前まへを呼返よびかへしたのやら？
ロミオ　思おもひ出だしなさるまで、斯かうして此處こゝに立たってゐよう。
ヂュリ　さうしてゐて欲ほしいから、わたしゃ尚なほと忘わすれませう。一しょにゐたい、といふ事ことばかりは忘わすれずに。
ロミオ　予わしは又またいつまでも斯かうして此處こゝに立たってゐよう、卿そもじにも忘わすれさせ、自分じぶんも此家こゝの事ことの外ほかは皆みんな忘わすれて。
ヂュリ　もう夜よが明あくる。往いんで欲ほしいとは思おもへども、小鳥ことりの脚あしに、氣儘少女きまゝむすめが、囚人めしうどの鎖くさりのやうに絲いとを附つけて、ちょと放はなしては引戻ひきもどし、又また飛とばしては引戻ひきもどすがやうに、お前まへを往いなしたうもあるが、惜をしうもある。
ロミオ　卿そもじの小鳥ことりになりたいなア！
ヂュリ　お前まへを小鳥ことりにしたいなア！　したが、餘あんまり可愛かはゆがって、つい殺ころしてはならぬゆゑ、もうこれで、さよなら！　さよなら！　あゝ、別わかれといふものは悲かなし懷なつかしいものぢゃ。夜よが明あくるまで、斯かうしてさよならを言いうてゐたい。
ヂュリエット入はひる。
ロミオ　卿そもじの目めには安眠あんみんが、卿そもじの胸むねには安心あんしんの宿やどるやう！　あゝ、其その安眠あんみんとも安心あんしんともなって、君きみの美うつくしい胸むねや目めに宿やどりたいなア！……これから上人しゃうにんの庵いほりへ往いて、今宵こよひの仕合しあはせを話はなした上うへ、何なにかと助力ぢょりょくを求もとめよう。
ロミオ入はひる。

第だい三場ぢゃう　　同處どうしょ。托鉢僧たくはつそうロレンス法師ほふしの庵室あんじつ。

ロレンス法師ほふし提籃さげかごを携たづさへて出でる。
ロレ　　灰色目はひいろめの旦あしたが顰縮面しかめつらの夜よるに對むかうて笑ゑめば、光明ひかりの縞しまが東方とうばうの雲くもを彩いろどり、剥はげかゝる暗やみは、日ひの神かみの火ひの輪わの前まへに、さながら醉人ゑひどれのやうに蹣跚よろめく。どりゃ、太陽ひが其その燃もゆるやうな眼まなこを擧あげて今日けふの晝ひるを慰なぐさめ、昨夜さくやの濕氣しっきを乾かわかす前まへに、毒どくある草くさや貴たふとい液しるを出だす花はなどもを摘つんで、吾等われらの此この籃かごを一杯ぱいにせねばならぬ。萬有ばんいうの母はゝたる大地だいぢは其その墓所はかどころでもあり、又また其その埋葬地まいさうちたるものが其その子宮こぶくろでもある、さて其その子宮こぶくろより千差さ萬別べつの兒供こどもが生うまれ、其その胸むねをまさぐりて乳ちを吸すふやうに、更さらに何なにか一種宛ひとくさづゝ靈妙いみじい殊ことなる效能かうのうのある千種しゅ萬種しゅを吸出すひいだす。あゝ、夥おびたゞしいは草くさや木きや金石きんせきどもの其その本質ほんしつに籠こもれる奇特きどくぢゃ。地上ちじゃうに存そんする物ものたる限かぎり、如何いかな惡あしい品しなも何等なにらかの益えきを供きょうせざるは無なく、又また如何いかな善よいものも用法ようはふ正たゞしからざれば其その性せいに悖もとり、圖はからざる弊へいを生しゃうずる習ならひ。美徳びとくも法はふを誤あやまれば惡徳あくとくと化くわし、惡徳あくとくも用處ようしょを得えて威嚴ゐげんを生しゃうず。此この孱弱かよわい、幼稚いとけない蕚はなぶさの裡うちに毒どくも宿よどれば藥力やくりきもある、嗅かいでは身體中からだぢゅうを慰なぐさむれども、嘗なむるときは心臟しんざうと共ともに五官くわんを殺ころす。かゝる敵かたきが、植物界しょくぶつかいにも、人間界にんげんかいにも、常つねに陣ぢんどって相鬪あひたゝかふ……仁心じんしんと害心がいしんとが……而しかうして惡あしい方かたが勝かつときは、忽たちまち毒蟲どくむしに取附とりつかれて、其その植物しょくぶつは枯果かれはつる。
ロミオ出でる。
ロミオ　お早はやうござります。
ロレ　　冥加みゃうがあらせたまへ！　誰たれぢゃ、此この早朝さうてうに、なつかしい其その聲音こわねは？　ほう、若わかい癖くせに早起はやおきは、心こゝろに煩悶わづらひのある證據しょうこぢゃ。老おいの目めは苦勞くらうに覺さめ勝がち、苦勞くらうの宿やどる處ところには兎角とかく睡眠すゐみんの宿やどらぬものぢゃが、心こゝろに創きずが無なく腦なうに蟠わだかまりのない若わかい者ものは、手足てあしを横よこにするや否いなや、好よい心持こゝろもちに眠ねむらるゝ筈はずぢゃに、かう早はやう起おきさしゃったは、こりゃ何なにか煩悶わづらひが無なうてはならぬ。さうでなくば、こちのロミオは、昨夜ゆうべは床とこに就つかなんだのぢゃな。
ロミオ　其通そのとほりでござる、眠ねなんだ故ゆゑにこそ嬉うれしい安心あんしん。
ロレ　　神かみよ、罪つみを赦ゆるさせられい！　さてはローザラインと一しょぢゃな！
ロミオ　ローザラインと一しょぢゃと被言おッしゃるか？　其その名前なまへも、其その名前なまへに伴ともなふ悲痛かなしみも、予わしゃ最早もうみんな忘わすれてしまうた。
ロレ　　それでこそ好よい子こぢゃ。すれば、何處どこにおゐやったのぢゃ？
ロミオ　二度どと問とはれいでも話はなしませう。仇敵かたきの家いへで酒宴しゅえんの最中さいちゅう、だまし撃うちに予わしに創きずを負おはした者ものがあったを、此方こちからも手てを負おはした。二人ふたりの受うけた創きずは貴僧こなたの藥力やくりきを借かれば治なほる。なう、上人しゃうにん、予わしは其その敵てきを憎にくみはせぬ、かうして頼たのみに來きたのも、互たがひの身みの爲ためを思おもふからぢゃ。
ロレ　　はて、明白はっきりと素直すなほに被言おッしゃれ。懺悔ざんげが謎なぞのやうであると、赦免みゆるしも謎なぞのやうなことにならう。
ロミオ　されば明白はっきりと言いはうが、予わしはカピューレット家けのあの美うつくしい娘むすめを又またと無ない戀人こひゞとと定きめてしまうた。予わしが定きめたれば先方むかうもまた其通そのとほりに定きめたのでござる。手筈てはずは皆みな濟すんだ、殘のこるは貴僧こなたに行おこなうて貰もらふ神聖しんせいな式しきばかり。何時いつ、何處どこで、如何どうして逢あうて、如何どう言寄いひよって、如何どんな誓言せいごんをしたかは、歩あるきながら話はなしませうほどに、先まづ承引しょういんして下くだされ、今日けふ婚禮こんれいさすることを。
ロレ　　祖師そしフランシス上人しゃうにん！　こりゃまた何なんたる變かはりやうぢゃ！　あれほどに戀こひ焦こがれておゐやつた［＃「おゐやつた」はママ］ローザラインを最早もう棄すてゝおしまやったか？　されば若わかい手合てあひの戀こひは其その心こゝろには宿やどらいで其その眼中がんちゅうに宿やどると見みえた。Jesuヂェシュー　Mariaマリヤ！　どれほど苦にがい水みづが其その蒼白あをじろい頬ほゝをローザラインの爲ために洗あらうたことやら？　幾何どれほどの鹽辛水しほからみづを無用むだにしたことやら、今いまは餘波なごりさへもない其その戀こひを味あぢつけうために！　卿そなたの溜息ためいきはまだ大空おほぞらに湯氣ゆげと立昇たちのぼり、卿そなたの先頃さきごろの呻吟聲うなりごゑはまだ此この老おいの耳みゝに鳴なってゐる。それ、まだ其その頬ほゝに古ふるい涙なみだの汚よごれが拭ぬぐはれいで殘のこってある。卿そなたはやはり卿そなたで、あの愁歎なげきは卿そなたの愁歎なげきであったなら、それは皆みなローザラインの爲ためであったに、なりゃ、其その心こゝろが變かはったか？　すれば、此この一語ごを唱となへしめ……女をんなは心こゝろの移うつる筈はず、男心をとこごころさへも堅固けんごにあらず。
ロミオ　貴僧こなたはローザラインに戀こひをすなというて、幾いくたびもお叱しかりゃったぞよ。
ロレ　　戀こひをすなではない、溺おぼるなと言いうたのぢゃ。
ロミオ　そして戀こひを葬ほうむれと被言おしゃったぞよ。
ロレ　　前まへのを墓はかに葬ほうむって、別べつのを掘出ほりだせとは曾つひぞ言いはぬ。
ロミオ　なう、叱しかって下くださるな。此度こんどの女をんなは、此方こちで思おもへば、彼方あちでも思おもひ、此方こちで慕したへば、彼方あちでも慕したふ。以前さきのはさうで無なかった。
ロレ　　おゝ、それは、卿そなたの戀こひをば、能よう會得ゑとくしてもゐぬことを、只たゞ口頭くちさきで誦よむ類たぐひぢゃと見拔みぬいてゐた爲ためでもあらう。したが、こゝな浮氣者うはきもの、ま、予わしと一しょに來きやれ、仔細しさいあって助力ぢょりきせう、……此この縁組えんぐみが原もとで兩家りゃうけの確執かくしつを和睦わぼくに變かへまいものでもない。
ロミオ　おゝ、速はやう。早急さっきふに濟すまさにゃならぬ。
ロレ　　いや、賢かしこう徐ゆるうぢゃ。馳出かけだす者ものは蹉躓けつまづくわい。
ロレンス先さきに、ロミオ從つひて入はひる。

第だい四場ぢゃう　　同處どうしょ。街上がいじゃう。

ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオーとマーキューシオーと出でる。
マーキュ　ロミオめは何處どこへ往ゆきをったか？　歸かへらなんだか昨夜ゆうべは？
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　うん、父者てゝぢゃの家いへへは。家來けらいに逢あうて聞きいた。
マーキュ　はて、あの蒼白あをじろい情無じゃうなし女をんなのローザラインめが散々さん／″＼に奴やつを苦くるしめるによって、果はては狂人きちがひにもなりかねまいわい。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　カピューレットの一族ぞくのチッバルトが、ロミオが父者てゝぢゃへ宛あてゝ、書面しょめんをば送おくったさうな。
マーキュ　誓文せいもん、決鬪状けっとうじゃうであらう。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　ロミオは返事へんじをやるであらう。
マーキュ　字じの書かける程ほどの者ものなら、返事へんじをせいでか？
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　いや、しかけられたからは、立合たちあはうと返事へんじをせう。
マーキュ　あゝ、ロミオの奴やつめ、奴やつは最早もう死しんでゐるわい！　あの眞白まッしろな小婦あまッちょの黒くろい目めでしてやられた、耳みゝは戀歌こひかで射貫いとほされる、心臟しんざうの眞中央まッたゞなかは例れいの盲小僧めくらこぞうの彼あの稽古矢けいこやで打碎ぶちくたかれる。何どうして、あのチッバルトと立合たちあふことなぞが出來でけうぞい。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　え、如何どんな男やつぢゃチッバルトは？
マーキュ　昔話むかしばなしの猫王チッバルトぢゃと思おもうたら當あてが違ちがはう。見事みごと武士道ぶしだうの式作法しきさはふに精通せいつう遊あそばしたお達人たつじんさまぢゃ。譜本ふほんで歌うたを唱うたふやうに、時まも距離きょりも釣合つりあひも違ちがへず、一ひい、二ふうと間まを置おいて、三みッつと言いふ途端とたんに敵手あひての胸元むなもとへ貫通ずぶり、絹鈕きぬぼたんをも芋刺いもざしにしようといふ決鬪師けっとうしぢゃ。例れいの第だい一條でう、第だい二條でうを口癖くちぐせにする決鬪師けっとうしの嫡々ちゃき／＼ぢゃ。あゝ、百發ぱつ百中ちゅうの進すゝみ突づきとござい！　次つぎは逆突ぎゃくづき？　參まゐったか突づきとござる！
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　え、何突なにづき？
マーキュ　白癩びゃくらい、あのやうな變妙來へんめうらいな、異樣おつに氣取きどった口吻ものいひをしをる奴やつは斃くたばりをれ、陳奮漢ちんぷんかんめ！　「イエスも照覽せうらんあれ、拔群ばっくんな劍士けんしでござる！　いや、拔群ばっくんな丈夫ますらをでござる！」　へん、拔群ばっくんな淫婦すべたでござるが聞きいて呆あきれるわい。何なんと、お祖父ぢいさん、情無なさけない世よの中なかとなったではござらぬか、朝あさから晩ばんまで流行りうかうを仕入※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)しいれまはって、口くちさへ開あけば pardonnezパルドンネ-moisモア, pardonnezパルドンネ-moisモア!　新型しんがたの細袴ずぼんを穿はかねば、半時はんとき、片時へんしも立たってをられぬ如是あゝいふ※(「亡／（虫＋虫）」、第3水準1-91-58)共あぶどもに惱なやまされねばならぬとは？　おゝ、又またしても bonぼん! bonぼん!　ぶん／＼！
ロミオ出る。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　ロミオが來わせた、ロミオが。
マーキュ　※(「魚＋而」、第3水準1-94-40)はららごを拔ぬかれた鯡にしんの干物ひものといふ面附つらつきぢゃ。おゝ、にしは、にしは、てもまア憫然あさましい魚類ぎょるゐとはなられたな！　こりゃ最早もうペトラークが得意とくいの戀歌こひかをお手ての物ものともござらう。ローラなどはロミオが愛姫ひめに比くらべては山出やまだしの下婢はしためぢゃ、もっとも、歌うただけはローラが遙はるかに上等じゃうとうのを作つくって貰もらうた。はて、ダイドーは自墮落女じだらくをんなで、クレオパトラは赤面あかつらの乞食女こじきをんな、ヘレンやヒーローは賣女ばいぢょ、賤女せんぢょで、シスビは碧瞳あをめだまぢゃ何なんのかのと申まうせども、所詮しょせんは取とるに足たらぬ。……なうなう、ロミオの君きみ、えへん、bonjourボンジュール!　これはフランス式しきの細袴ほそずぼんに對たいしてのフランス式しきの御挨拶ごあいさつでござる。昨夜ゆうべは、ようも巧々うま／＼と贋金にせがねを掴つかませやったの。
ロミオ　二人ふたりともお早はやうござる。なに、贋金にせがねとは？
マーキュ　吾々われ／＼の目めをお拔ぬきゃって。後あとは言いはいでもぢゃ。
ロミオ　マーキューシオーどの、恕ゆるして下くだされ、實じつは是非ぜひない所用しょようがあったからぢゃ。あんな際をりには、つい、その、禮れいを曲まぐることがある習ならひぢゃ。
マーキュ　ふん、あんな際をりには、足腰あしこしの曲まげ方かたが異ちがふといふのぢゃな？
ロミオ　といふのは、慇懃ねんごろに挨拶あいさつするためといふ意こゝろか？
マーキュ　其通そのとほり、御深切ごねんごろな解釋かいしゃくぢゃ。
ロミオ　これはまた御丁寧ごていねいなお言葉ことばぢゃ。
マーキュ　はて、禮法れいはふにかけては一代だいの精華ピンクとも崇あがめられてゐる乃公おれぢゃ。
ロミオ　精華ピンクとは名譽めいよの異名いみゃうか？
マーキュ　いかにも。
ロミオ　では、予わしの舞踏靴ぶたふぐつは名譽めいよなものぢゃ、此通このとほり孔ピンクだらけぢゃによって。
マーキュ　出來できた。此上このうへは洒落競しゃれくらべぢゃぞ。これ、足下おぬしの其その薄うすっぺらな靴くつの底そこは、今いまに悉こと／″＼く磨すり減へって、果はては見苦みぐるしい眞まッ赤かな足あしを出だしゃらうぞよ。
ロミオ　はて、見みぐるしい眞まッ赤かな恥はぢを駄洒落だじゃるとは足下おぬしのこと。それ、もう、薄うすっぺらな智慧ちゑの底そこが見みえるわ！
マーキュ　おい、應援たすけてくれ、ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオー。智慧ちゑの息いきが切きれるわ。
ロミオ　鞭むちを加あてい、鞭むちを、もっと／＼。さうで無ないと「勝かった」と呼よぶぞよ。
マーキュ　いや、こんな阿呆あほらしい拔駈ぬけがけの競爭きゃうさうは最早もう中止やめぢゃ。何故なぜと言いへ、足下おぬしは最初はじめからぬけてゐるわ。何なんと、頭拔づぬけた洒落しゃれであらうが。
ロミオ　成程なるほど、愚鈍者事ぬけさくごとにかけては、足下おぬしは生得うまれつき頭拔づぬけてゐる。
マーキュ　巧うまく脱ぬけをったな、咬かむぞよ。
ロミオ　はて「咬かんでたもるな、阿呆鳥あはうどりどのよ」ぢゃ。
マーキュ　足下おぬしの洒落しゃれは橙々酢だい／＼ずといふ格かくぢゃ、藥味やくみにしたら酸すッぱからう。
ロミオ　ぢゃによって、かうした味あぢの脱ぬけた代物しろものに撒布ふりかけてゐるのぢゃ。
マーキュ　おゝ、ても善よう※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)まはるわ、寸すんから尺しゃくに伸のびる莫大小口めりやすぐちとは足下おぬしの口くちぢゃ。
ロミオ　はて、伸のびると言いへば、その伸のびるとは足下きみの鼻はなの下したぢゃ、今いま天下てんかに並ならびもない拔作ぬけさくどのとは足下きみのことぢゃ。
マーキュ　（笑って）何なんと、かう洒落しゃれのめしてゐるはうが、惚ほれたの、腫はれたのと呻吟うめいてゐるよりは優ましであらうが？　今日けふこそは、つッともう人好ひとずきのする立派りっぱなロミオぢゃ、今日けふこそは正面しゃうめん、側面そくめん、何處どこから見みても正しゃうめん贋無まがひなしのロミオぢゃ。女をんなの事ことで愁言なきごと言いふは、例たとへば、彼あの弄僕あはうめが、見みともない面つらをして、例れいの棒切ボーブルをおったてゝ……
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　もう止やめた、もう止やめた。
マーキュ　しかけた一件けんを、止やめいとは如何どうぢゃ？
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　默だまってゐたら、尚なほ其上そのうへに、何なにを爲出しいださうも知しれぬわい。
マーキュ　大おほちがひぢゃ、何なにをしようぞい。事ことはとうに終すんだわ。もう何なにもする氣きは無ない。
ロミオ　やれ／＼、お上品じゃうひんな問答もんだふ！
（此この原詞げんしは“Here's goodly gear.”此この意味いみ不分明ふふんめい。乳母うばとピーターとの來きたるを見附みつけての評語ひゃうごとも、マーキューシオーとベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオーの猥雜わいざつな問答もんだふを反語的はんごてきに評ひゃうしたるものと解かいせらる。こゝには後者こうしゃを正たゞしと見みて、其義そのぎに譯やくしておきたり。）
乳母うばが先さきに、下人げにんピーター大おほきな扇子せんすを持もちて從ついて出でる。
マーキュ　船ふねぢゃ／＼！
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　二艘さう々々／＼。男襦袢をすと女襦袢めすぢゃ。
乳母　　ピーター！
ピータ　あい／＼！
乳母　　予わしの扇子せんすを。
マーキュ　ピーターどんや、扇子せんすで面つらを隱かくさうちふのぢゃ、扇子せんすの方はうが美うつくしいからなう。
乳母　　殿方とのがた、お早はやうござります。
マーキュ　御婦人ごふじん、お晩おそうござります。
乳母　　え、晩おそうござりますとえ。
マーキュ　いかにも。それ、その日時計ひどけいの淫亂すけべいな手てが午過ひるすぎの標しるしに達とゞいてゐるわさ。
乳母　　はれま、此人このひとは！　何なんたるお人ひとぢゃお前まへは？
ロミオ　御婦人ごふじん、これは事壞ことこはしの爲ために神樣かみさまが造つくらせられた男をとこぢゃ。
乳母　　ほんに、巧うまいことを被言おっしゃる。事壞ことこはしの爲ために出來できた人ひとぢゃといの！　あの、殿方とのがたえ、ロミオの若樣わかさまには何處どこへゐたら逢あはれうかの、御存ごぞんじなら教をしへて下くだされ。
ロミオ　予わしが教をしへう。したが、其その若樣わかさまは彌※(二の字点、1-2-22)いよ／＼逢あはッしゃる時分じぶんには、尋たづねてござる今いまよりは老ふけてゐませうぞ。はて、最いっち年少としわかのロミオは予わしぢゃ。これより粗まづいのは今いまはない。
乳母　　てもま、巧うまいことを被言おっしゃる。
マーキュ　何なんぢゃ、最いっち粗まづいのをば甘美うまい？　はて、巧うまい意味いみの取とりやうぢゃの。賢女けんぢょ々々。
乳母　　貴下こなたがロミオさまなら、何處どこぞで改あらためて御密會ごみっくわい（御面會）がお願ねがひ申まうしたうござります。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　（笑って）今いまに、優待といふ積つもりで、誘惑をはじめかねまい。
マーキュ　慶庵婆ぜげんだ／＼！　來きた／＼！
ロミオ　來きたとは何なにが？
マーキュ　はて、兎うさぎではない、兎うさぎにしても脂肪あぶらの滿のった奴やつではなうて、節肉祭式レントしきの肉饅頭にくまんぢう、食くはぬうちから、陳ふるびて、萎しなびて……
（歌ふ）。やんれ、黴かびの生はえた雌兎めすうさぎ、
　やんれ、黴かびの生はえた雌兎めすうさぎ、
レント祭さいには相應さうおうなれど
　黴かびた兎うさぎぢゃ二十人にんでも食くへぬ、
食くはぬうちから黴かびたと聞きけば……
ロミオ、父御てゝごの館うちへおぢゃれ。あそこで飮のまうぞ。
ロミオ　後あとから行ゆかう。
マーキュ　お媼ばゝどん、さらば。さらば／＼。
「姫ひめさん／＼／＼……」
流行りうかうの小唄こうたを唱うたひながらベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオーと共ともにマーキューシオー入はひる。
乳母　　はい、御機嫌ごきげんよう。……もし／＼、あの人ひとは、ま、何なんといふ無作法ぶさはふな若わかい衆しゅでござるぞ？　あくたいもくたいばかり言いうて。
ロミオ　あれは自分じぶんの饒舌しゃべるのを聽きくことの好すきな男をとこ、一月ひとつきかゝってもやり切きれぬやうな事ことを、一分間ぶんかんで饒舌しゃべり立たてようといふ男をとこぢゃ。
乳母　　おのれ、わしの事ことを何なんとでも言いうて見みをれ、目めに物ものを見みせうぞい。よしんば見みかけより強つよからうと、あんな奴やつがまだ別べつに二十人にんあらうと、大事だいじない。自力じりきで敵かなはぬなら、人ひとを頼たのむわいの。碌ろくでなしの和郎わろめ！　彼奴あいつらに阿呆あはうにされて堪たまるかいの。彼奴あいつらの無頼仲間ごろつきなかまぢゃありゃせぬわい。……（下人に對ひて）汝おのしも傍そばに立たってゐながら、予わしが隨意的えいやうにされてゐるのを、見みてゐるとは何なんの事こッちゃい。
ピータ　誰たれもお前まへを隨意的えいやうには爲しやせぬがや。若もしも其樣そないなことがあれば、此この利劍わざものを引拔ひきぬかいでかいの。こりゃ拔ぬかんければならん場合ばあひぢゃとさへ思おもうたら、わしゃ人ひとに負まくるこっちゃない。
乳母　　えゝ、ほんに／＼、悔くやしうて／＼、身體中からだぢゅうが顫ふるへるわいの。碌ろくでなしの和郎わろめが！……（ロミオに對ひて）もし／＼、貴下こなたさまえ、最前さいぜんも申まうしましたが、妾わしの姫ひいさまが、貴下こなたを搜さがして來こいとの吩咐いひつけでな、其その仔細わけは後あとにして、先まづ言いうて置おくことがござります、若もしも貴下こなたが、世間せけんで言いふやうに、阿呆あはうの極樂ごくらくへ姫ひいさまを伴つれて行ゆかっしゃるやうならば、ほんに／＼、世間せけんで言いふ通とほり、不埓ふらちな事ことぢゃ。何故なぜと被言おッしゃりませ、姫ひいさまはまだ齡としがゆかッしゃらぬによって、騙だまさッしゃるやうであれば、ほんにそれは惡わるいこっちゃ、御婦人ごふじんを騙だまさッしゃるは卑怯ひけふぢゃ、非道ひだうぢゃ。
ロミオ　お乳母うばどの、おぬしのお姫ひいさんへ慇懃ねんごろに傳つたへて下くだされ。予わしは飽迄あくまでも言いうておく……
乳母　　はれ、善よいお仁ひとや、ほんに其通そのとほり申まうしましょわいな。ほんに、ま、何樣どのやうに喜よろこばッしゃらう。
ロミオ　其通そのとほりにとは、何なにを？　まだ何なにも言いやせぬのに。
乳母　　飽迄あくまでも言いうて置おく、とおッしゃったと言いや、それが立派りっぱなお言傳手ことづてぢゃがな。
ロミオ　なう、姫ひめに勸すゝめて下くだされ、此この晝過ひるすぎに、何なんとか才覺さいかくして懺悔式ざんげしきに來こらるゝやう。あのロレンス殿どのの庵室あんじつで、懺悔ざんげの式しきを濟すまして婚禮こんれいする心こゝろなれば。こりゃ骨折賃ほねをりちんぢゃ。
乳母　　いえ、めっさうな。一錢せんも戴いたゞきませぬ。
ロミオ　まゝ、是非ぜひとも。
乳母　　では、此この晝過ひるすぎに？　む、む、其樣そのやうにいたしましょ。
乳母うば行ゆきかくる。
ロミオ　あ、これ、お待まち。やがて、あの寺てらの塀外へいそとへ、おぬしに渡わたす爲ために、繩梯子なはばしごのやうに編あみ合あはせたものを家來けらいに持もたせて遣やりませう。それこそは忍しのぶ夜半やはに嬉うれしい事ことの頂點ちゃうてんへ此身このみを運はこぶ縁えんの綱つな。……さよなら。眞實しんじつを盡つくしておくりゃれ、きっと骨折ほねをりの報むくひはせう。さらば。姫ひめへ宜よろしう傳つたへて下くだされ。
乳母　　御機嫌ごきげんやういらせられませい！……あ、もし／＼。
ロミオ　何なんとかお言いやったか？
乳母　　御家來ごけらいは口くちの堅かたいお人ひとかいな？　二人ふたりぎりの祕密ひみつは洩もれぬ、三人目にんめが居をらねば、と言いひますぞや。
ロミオ　大丈夫だいぢゃうぶぢゃ、鋼鐡はがねのやうに堅かたい男をとこぢゃ。
乳母　　それならば。こちの姫ひいさまはな、それは／＼憐しほらしうて……ほんに、ほんに、まだ幼ちひさうて、分別たわいもないことを言いうてゞあった時分じぶんは……お、あのな、パリス樣さまと言いうて、お立派りっぱな方かたがな、どうぞして物ものにせうと氣きを揉もまっしゃるのぢゃが、あのよな人ひとに逢あふよりは、予わしゃ蟾蜍ひきがへるに逢あうたはうが優ましぢゃ、と言いうてな、あの蟾蜍ひきがへるに。予わしも折々をり／＼は腹はらを立たっても見みますのぢゃ、パリスどのゝ方はうが、ずっと好よい男をとこぢゃと言いうてな。すると、眞ほんの事ことぢゃ、孃ぢゃうは眞蒼まっさをな顏かほにならっしゃる、圖無づない白布しろぬののやうに。え、ロミオと萬迭香ローヅメリとは、頭字かしらじが同おなじかいな？
ロミオ　いかにも。それが、何なんとしたぞ？　兩方りゃうはうともＲアールぢゃ。
乳母　　はれま、人ひとを！　そりゃ、犬いぬの名なぢゃがな。Ｒアールがお前まへの……いやいや、何なにか他ほかの字じに相違さうゐないわいの。……何なんでもな、貴下こなたと萬迭香ローズメリとが如何どうとやらしたといふ、何なんぢゃ知しらんが、面白おもしろさうな額言がくげん（格言）とやらを作つくらしゃってぢゃ、貴下こなたが聞きかッしゃれば喜よろこばッしゃらうやうな。
ロミオ　姫ひめに宜よろしう言いうて下くだされ。
ロミオ入る。
乳母　　はい／＼、申まうしましょとも。……ピーター！
ピータ　あい／＼！
乳母　　先さきへ、そして急歩的とっとと。
乳母うばとピーターと入はひる。

第だい五場ぢゃう　　同處どうしょ。カピューレットの庭園ていゑん。

ヂュリエット出る。
ヂュリ　乳母うばを出だしてやった時とき、時計とけいは九こゝのつを打うってゐた。半時間はんじかんで歸かへるといふ約束やくそく。若もしや逢あへなんだかも知しれぬ。いや／＼、さうでは無ない。えゝも、乳母うばめは跛足ちんばぢゃ！　戀こひの使者つかひには思念おもひをこそ、思念おもひは殘のこる夜よるの影かげを遠山蔭とほやまかげに追退おひのける旭光あさひの速はやさよりも十倍ばいも速はやいといふ。ぢゃによって、戀こひの神かみの御輦みくるまは翼輕はねがるの鳩はとが牽ひき、風かぜのやうに速はやいキューピッドにも双ふたつの翼はねがある。あれ、もう太陽たいやうは、今日けふの旅路たびぢの峠たうげまでも達とゞいてゐる。九時じから十二時じまでの長ながい／＼三時間じかん、それぢゃのに、まだ歸かへって來こぬ。乳母うばめに、情じゃうが燃もえてゐたら、若わかい温あたゝかい血ちがあったら、テニスの球たまのやうに、予わしが吩咐いひつくるや否いなや戀人こひゞとの許とこへ飛とんで行ゆき、また戀人こひゞとの返辭へんじと共ともに予わしの手元てもとへ飛返とびかへって來きつらうもの。……あゝ、老人らうじんといふものは、死しんでゞもゐるかのやうに、太儀たいぎさうに緩漫のろ／＼と、重おもくるしう、蒼白あをじろう、鉛なまりのやうに……
乳母うばがピーターを從つれて出る。
おゝ、嬉うれしや、歸かへって來きた。……なう乳母うばいの、如何どうぞいの？　あの方かたに逢あやったかや？……侶ともは彼方あちへ。
乳母　　ピーター。……入口いりくちに控ひかへてゐや。
ピーター入る。
ヂュリ　さ、乳母うばいの。……ま、何なんで其樣そのやうな情なさけない顏かほしてゐやる？　悲かなしい消息しらせであらうとも、せめて嬉うれしさうに言いうてたも。若もし嬉うれしい消息しらせなら、それを其樣そんな顏かほをして彈ひきゃるのは、床ゆかしい知しらせの琴ことの調しらべを臺無だいなしにしてしまふといふもの。
乳母　　おゝ、辛度しんど！　暫時ちいとまァ休やすまして下くだされ。あゝ／＼、骨々ほね／″＼が痛いたうて痛いたうて！　ま、どの位くらゐほッつきまはったことやら！
ヂュリ　予わしの骨々ほね／″＼を其方そなたに與やっても、速はやう其その消息しらせが此方こっちへ欲ほしい。これ、どうぞ聞きかしてたも。なう、乳母うばや、乳母うばいなう、如何どうぢゃぞいの？
乳母　　ま、氣忙きぜはしい！　暫時ちいとの間まが待まてぬかいな？　息いきが切きれて物ものが言いはれぬではないかいな？
ヂュリ　息いきが切きれて言いはれぬと言いやる程ほどなら、息いきは切きれてゐぬ筈はずぢゃ。何なんのかのと言譯いひわけしてゐやるのが肝腎かんじんの一言ひとことより長ながいわいの。これ、吉きつか、凶きょうか？　速はやう言いや。それさへ言いうてたもったら、詳細事くはしいことは後あとでもよい。速はやう安心あんしんさしてたも、吉きつか、凶きょうか？
乳母　　はて、お前まへは阿呆あほらしいお人ひとぢゃ、あのやうな男をとこを選えらばッしゃるとは目めが無ないのぢゃ。ロミオ！　ありゃ不可いけんわいの。面附つらつきこそは誰たれよりも見みよけれ、脛附すねつきが十人並にんなみ以上いじゃうぢゃ、それから手てや足あしや胴どうやは彼かれ此これ言いふが程ほども無ないが、外ほかには、ま、類るゐが無ない。行儀作法ぎゃうぎさはふの生粹きっすゐぢゃありやせん［＃「ありやせん」はママ］、でも眞ほんの事こと、仔羊こひつじのやうに、温和おとなしい人ひとぢゃ。さァ／＼／＼、小女いとよ、信心しんじんさっしゃれ。……え、もう終すみましたかえ、お晝ひるの食事しょくじは？
ヂュリ　いゝえ／＼。其樣そんな事ことは、もう夙とうに知しってゐる。婚禮こんれいの事ことをば何なんと言いうてぢゃ？　さ、それを。
乳母　　はれ、頭痛づつうがする！　あゝ、何なんといふ頭痛づつうであらう！　頭あたまが粉※(「くさかんむり／韲」、第4水準2-87-23)こな／″＼に碎くだけてしまひさうに疼うづくわいの。脊中せなかぢゃ。……そっち／＼。……おゝ、脊中せなかが、脊中せなかが！　ほんに貴孃こなたが怨うらめしいわいの、遠とほい遠とほい處ところへ太儀たいぎな使者つかひに出ださッしやって［＃「出ださッしやって」はママ］、如是こんな死しぬるやうな思おもひをさすとは！
ヂュリ　ほんに氣きの毒どくぢゃ、氣分きぶんが惡わるうてはなァ。したが、乳母うば、乳母うばや、乳母うばいなう、何卒どうぞ言いうてたも、戀人こひゞとが何なんと被言おッしゃった？
乳母　　さいな、あの方かたの言いはッしゃるには、行儀ぎゃうぎもよければ深切しんせつでもあり、男振をとこぶりはよし、器量人きりゃうじんでもあり、流石さすがに身分みぶんのある殿方とのがたらしう……お母かゝさまは何處どこにぢゃ？
ヂュリ　母はゝさまは何處どこにぢゃ？　母樣はゝさまは家うちにぢゃ。何處どこに行ゆかしゃらうぞ？　何なにを言いやるぞい！「あの方かたが被言おッしゃるには、身分みぶんのある殿方とのがたらしう、お母樣かゝさまは何處どこにぢゃ？」
乳母　　はれ、まア！　そのやうに熱あつくならッしゃるな。これさ、まァ、ほんに／＼。それが痛いたむ節々ふし／″＼の塗藥ぬりぐすりになりますかいの？　これからは自分じぶんで使つかひ歩あるきをばさっしゃったがよい。
ヂュリ　まァ、仰山ぎゃうさんな騷さわぎぢゃ！……これの、ロミオが何なんと被言おッしゃった？
乳母　　お前まへ今日けふはお參詣まゐりに往いても可よいといふお許可ゆるしが出でましたかえ？
ヂュリ　あいの。
乳母　　では、なう、急いそいでロレンス樣さまの庵室あんじつまで往ゆかっしゃれ。あそこでお前まへを内室うちかたになさるゝ人ひとが待まってぢゃ。そりゃこそ頬邊ほっぺたへ放埓みだらな血ちめが上のぼるわ、所詮つまりは何なにを聞きいても直すぐに眞赤まっかにならッしゃらうぢゃまで。速はやうお寺てらへ。予わしはまた別べつの方はうへ往いて梯子はしごを取とって來こねばならぬ、其その梯子はしごでお前まへの戀人こひびとが、今宵こよひ暗くらうなるが最後さいご、鳥とりの巣すへ登のぼらッしゃるのぢゃ。予わしは只たゞもう齷齬あくせくとお前まへを喜よろこばさうと念おもうて。したが、やがて夜よるになると、お前まへも骨ほねが折をれうぞや。さ、予わしは食事しょくじをせう。貴孃こなたは庵室あんじつへ速はやうゆかしゃれ。
ヂュリ　速はやう其その幸福しあはせに！……乳母うばや、きげんよう。
二人ふたりとも入る。

第だい六場ぢゃう　　同處どうしょ。ロレンス法師ほふしの庵室あんじつ。

ロレンス法師ほふしが先さきに、ロミオ從ついて出る。
ロレ　　諸天善神しょてんぜんじん、願ねがはくは此この神聖しんせいなる式しきに笑ゑませられませい、ゆめ後日ごじつ悲哀かなしみを降くださしまして御譴責ごけんせき遊あそばされますな。
ロミオ　アーメン、アーメン！　如何どんな悲哀かなしみが來こようとも、姫ひめの顏かほを見みる嬉うれしさの其その刹那せつなには易かへられない。神聖たふとい語ことばで二人ふたりの手てを結むすび合あはして下くだされば、戀こひを亡ほろぼす死しの爲ために此身このみが如何樣どのやうにならうとまゝ。妻つまと呼よぶことさへ叶かなへば、心殘こゝろのこりはない。
ロレ　　さうした過激くわげきの歡樂くわんらくは、とかく過激くわげきの終をはりを遂とぐる。火ひと煙硝えんせうとが抱合だきあへば忽たちまち爆發ばくはつするがやうに、勝誇かちほこる最中さなかにでも滅ほろび失うせる。上うへなう甘あまい蜂蜜はちみつは旨過うますぎて厭いやらしく、食くうて見みようといふ氣きが鈍にぶる。ぢゃによって、戀こひも程ほどよう。程ほどよい戀こひは長ながう續つゞく、速はやきに過すぐるは猶なほ遲おそきに過すぐるが如ごとしぢゃ。
ヂュリエット出る。
それ、姫ひめが來わせた。おゝ、あのやうな輕かるい足あしでは、いつまで蹈ふむとも、堅かたい石道いしみちは磨へるまいわい。戀人こひびとは、夏なつの風かぜに戲たはむれ遊あそぶあの埓らちもない絲遊かげろふに騎のッかっても、落おちぬであらう。さほどに輕かるいものが空あだな歡樂たのしみ！
ヂュリ　（ロレンスを抱きて）教父けふふさま、ごきげんよろしう！
ロレ　　其そのお返禮かへしは、二人分ふたりぶん、ロミオの口くちから。
ヂュリ　（ロミオを抱きて）ではロミオにも。でないとお返禮かへしが多過おほすぎよう。
ロミオ　あゝ、ヂュリエット、今日けふを嬉うれしい、かたじけないと思おもふ心こゝろが予わしと同おなじに滿腔いっぱいなら、しかもそれを現あらはす力ちからが予わしよりも多おほいなら、今日けふの出會であひで二人ふたりが感かんずる此この夢ゆめのやうな嬉うれしさを、床ゆかしい天樂てんがくのやうな卿そもじの聲こゑで、四邊あたりの空氣くうきも融解とろくるばかりに、なつかしう奏かなでゝ下くだされ。
ヂュリ　内實なかみの十分ぶんな思想しさうは、言葉ことばの花はなで飾かざるには及およばぬ。算かぞへらるゝ身代しんだいは貧まづしいのぢゃ。妾わしの戀こひは、分量ぶんりゃうが大おほきう／＼なったゆゑに、今いまは其その半分はんぶんをも計算かんぢゃうすることが出來できぬわいの。
ロレ　　さゝ、予わしと一しょにござれ。速はやう濟すましてのけう。慮外りょぐわいながら、尊たふとい教會けうくわいが二人ふたりを一人ひとりに合體がったいさするまでは、さし對むかひでゐてはなりませぬのぢゃ。
ロレンスに從ついて二人ふたりとも入る。
［＃改ページ］

第三幕

第だい一場ぢゃう　　※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナ。街上がいじゃう。

マーキューシオー先さきに、ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオー、侍童こわらは、下人等しもべら從ついて出でる。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　マーキューシオーどの、もう歸かへらう。暑あつくはある、カピューレット家けの奴等やつらが出歩であるいてもゐる、出會でっくはしたが最後さいご、鬪爭けんくわをせねばなるまい。かういふ暑あつい日ひには、えて氣きちがひめいた血ちが騷さわぐものぢゃ。
マーキュ　おい、酒亭さかやへ入はひった當座たうざには、劍けんを食卓テーブルの下したへ叩たゝきつけて「神かみよ、願ねがはくは此奴こいつに必要ひつえうあらしめたまふな」なぞといってゐながら、忽たちまち二杯目はいめの酒さけが利きいて、何なんの必要ひつえうも無ないのに、給仕人きふじにんを敵手あひてに引ひっこぬく手合てあひがあるが、足下おぬしが其その仲間なかまぢゃ。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　予わしがそんな仲間なかまか？
マーキュ　さゝ、足下おぬしはイタリーで誰たれにも負ひけを取とらぬ易怒男おこりむしぢゃ、直ぢきに怒おこるやうに仕向しむけられる、仕向しむけらるれば直すぐ怒おこる。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　して何なんにするんぢゃ？
（此この原詞げんしは“And what to?”「して何なんの爲ために？」といふ義ぎ。マーキューシオーはそれをわざと“And what two?”の意味いみに取とりて例れいの駄洒落だじゃれのキッカケとする。）
マーキュ　何人なんにん？　いや、足下おぬしのやうなのが二人ふたりとゐたら、忽たちまち殺ころしあうてしまはうから、二人ふたりともゐなくならう。はて、足下おぬしなぞは髭ひげの毛け一筋すぢの多おほい少すくないが原もとでも叩たゝき合あふ。或あるひは足下おぬしの目めの色いろが榛色はしばみいろぢゃによって、そこで相手あひてが榛はしばみの實みを噛割かみわったと言いふだけの事ことで、鬪爭けんくわを買かひかねぬ。その眼まなこでなうて、そんな鬪爭けんくわを買かふ眼まなこが何處どこにあらう？　足下おぬしの頭あたまには鷄卵たまごに黄蛋きみが充實つまってゐるやうに、鬪爭けんくわが充滿いっぱいぢゃ、しかも度々たび／″＼打撲どやされたので、少許ちっと腐爛氣味くされぎみぢゃわい。足下おぬしは、街中まちなかで咳せきをして足下おぬしの飼犬かひいぬの日向ひなたぼこりを驚おどろかしたと言いうて、或ある男をとこと鬪爭けんくわをした。復活祭前イースターまへに新調胴衣したておろしを着きたと言いうて、或ある裁縫師したてやと掴つかみ合あひ、新あたらしい靴くつに古ふるい紐ひもを附つけをったと言いうて、誰某たれやらとも爭論いがみ合あうた。それでゐて俺おれに鬪爭けんくわをすまいぞと異見いけんめいたことを被言おしゃるのか？
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　予わしが足下きみほど鬪爭好けんくわずきと言いふことが實ぢゃうなら、無條件ろはで此この命いのちを一時間位じかんぐらゐは賣うってやってもよいわい。
マーキュ　ろはぢゃ！　ろッはッは！　ろッはッは！（と笑ふ）。
チッバルトを先さきに、カピューレットの黨人たうじん出る。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　や、カピューレットのやつらが來きをった。
マーキュ　へん、かまふものかえ。
チッバ　俺おれに附着くッついて來こう、彼奴等きゃつらと談だんじてくれう。……（ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオーらに）諸氏かた／″＼、機嫌きげんよう。一言ごん申まうしたうござる。
マーキュ　ただ一言ごんでござるか？　何なにかお添そへなさい。一言ごん兼けん一撃げきとしたら如何どうぢゃ？
チッバ　機會きっかけさへ與おこしゃらば、何時いつでも敵手あひてになり申まうさう。
マーキュ　此方こちから與おこさねば、其方そちでは機會きっかけが出來できぬと被言おしゃるか？
チッバ　マーキューシオー、足下おぬしは平生ふだんあのロミオと調子てうしを合あはせて……
マーキュ　何なんぢゃ、調子てうしを合あはせて？　吾等われらを樂人扱がくにんあつかひにするのか？　樂人扱がくにんあつかひに爲すりゃ、耳みゝを顛覆でんぐりかへらする音樂おんがくを聞きかす。準備よういせい。（劍に手を掛けて）乃公おれの胡弓こきうは此劍これぢゃ、今いまに足下おぬしを踊をどらせて見みせう。畜生ちくしゃう、調子てうしを合あはす！
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　こゝは往來わうらいぢゃ、どうぞ閑寂ひそかな處ところで冷靜しづかに談判だんぱんをするか、さもなくば別わかれたがよい。衆人ひとが見みるわ。
マーキュ　見みる爲ための眼まなこぢゃ、見みるがえいわ。他ひとが如何どう思おもはうと介意かまふものかえ。
ロミオ出る。
チッバ　足下おぬしとは中直なかなほりぢゃ。あそこへ奴やつが來きをった。
マーキュ　奴やつぢゃ？　へん、ロミオが足下おぬしの奴やっこなものか？　何時いつ足下おぬしが給服しきせを着きせた？　はて、先さきに立たって決鬪場ばしょへ行ゆきゃれ、ロミオも隨行ともをせう。それが奴やっこの役やくなら、ロミオは足下樣おぬしさまのお抱奴かゝへやっこぢゃ。
チッバ　（ロミオに對ひて）やい、ロミオ、足下おぬしに對たいする俺おれが情合じゃうあひからは是限これぎりしか言いへぬ。……汝おのれは惡漢あくたうぢゃ。
ロミオ　チッバルト、足下きみを愛あいする仔細しさいがあって、怒いからねばならぬ其その挨拶あいさつをもわるうは取とらぬ。予わしは惡漢あくたうではない。さらば、足下きみは予わしを知しらぬのぢゃ。
ロミオ行ゆきかくる。
チッバ　小僧わっぱめ、それが無禮ぶれいの辨解いひわけにはならぬぞ。戻もどって拔劍ぬけ。
ロミオ　予わしは無禮ぶれいをした覺おぼえはない、いや、其その仔細しさいの分わかるまでは迚とても會得ゑとくのゆかぬ程ほどに予わしは足下きみを愛あいしてゐるのぢゃ。カピューレットどの、予わしは今いまカピューレットといふ其その名前なまへを我名わがなも同樣どうやうに大切たいせつに思おもうてゐる、まゝ、堪忍かんにんさっしゃれ。
マーキュ　おゝ、柔弱てぬるい、不面目ふめんもくな、卑劣ひれつな降參かうさん！　此上このうへは劍けんあるのみぢゃ。（劍を拔く）。チッバルト、いやさ、猫王ねこまたどの、お往ゆきゃらうか？
チッバ　何なんぞ俺おれに用ようがあるか？
マーキュ　猫王ねこまたどの、九箇こゝのつあるといふ足下おぬしの命いのちが只たッた一ひとつだけ所望しょもうしたいが、其後そののちの擧動次第しこなししだいで殘のこる八箇やッつも叩たゝき挫みじくまいものでもない。耳形みゝがたの※(「木＋覊」の「馬」に代えて「月」、第4水準2-15-85)つかを掴つかんで其その劍けんをお拔ぬきゃれ、速はやうせぬと乃公おれの劍けんが足下おぬしの耳元みゝもとへお見舞みまひ申まうすぞ。
チッバ　合點がってんだ。
劍けんを拔ぬく。
ロミオ　マーキューシオー君くん、まア／＼、劍けんを。
マーキュ　さ、突ついて來こい。
チッバルトとマーキューシオーと鬪たゝかふ。
ロミオ　拔劍ぬけ、ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオー、二人ふたりの武器えものを叩たゝき落おとさう。これさ／＼、恥はぢぢゃ／＼、亂暴らんばうをすな？　チッバルト、マーキューシオー、領主とのの嚴命げんめいでは無ないか、※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナの街頭まちなかで鬪諍たゝかひをしてはならぬ筈はずぢゃ。これさ、チッバルト！　マーキューシオー！
此この立※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)たちまはりの間あひだにマーキューシオーはチッバルトに突かるゝ。
チッバルト及および其その黨人たうじん入る。
マーキュ　やられた！　畜生ちくしゃう、兩方りゃうはうの奴等やつらめ！　やられたわい。去いにをったか、彼奴きゃつめ無創むきずで？
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　や、手てを負おうたか足下きみは？
マーキュ　唯うん、唯うん、引掻ひっかかれた／＼。はて、これで十分ぶんぢゃ。侍童こやっこめは何處どこにをる？　小奴やっこ、はよ往いって下科醫者げくわいしゃを呼よんで來こい。
ロミオ　これ、氣きを確たしかに。手傷てきずは決けっして重おもうはない。
マーキュ　さうぢゃ。井戸ゐどほどに深ふかくも無なければ、教會けうくわいの入口程いりぐちほどには廣ひろくもない、が十分ぶんぢゃ、役やくには立たつ。明日あす訪たづねてくれい、すれば墓はかの中なかから御挨拶ごあいさつぢゃ。先まづ乃公おれの一生しゃうも、誓文せいもん、總仕舞そうじまひが澄すんでしまうた。……畜生ちくしゃう、兩方りゃうはうの奴等やつらめ！……うぬ！　犬いぬ、鼠ねずみ、※(「鼬」の「由」に代えて「奚」、第4水準2-94-69)鼠はつかねずみ、猫股ねこまた、人間にんげんを引掻ひっかいて殺ころしをる！　一二三ひふうみいで劍けんを使つかふ駄法螺吹家だぼらふきめ！　破落戸ごろつき、惡黨あくたう！　何なんで眞中まんなかへ飛込とびこんだんぢゃ足下おぬしは！　足下おぬしの腕うでの下したでやられた。
ロミオ　みんな爲ためを思おもうてしたのぢゃ。
マーキュ　おい、ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオー、何處どこぞ家うちの中なかへ伴つれて行いってくれ、速はやうせぬと氣絶きぜつしさうぢゃ。畜生ちくしゃう、兩方りょうはうの奴等やつら！　とう／＼俺おれを蛆蟲うじむしの餌食ゑじきにしてしまひをった。參まゐった、しっかり參まゐった。畜生ちくしゃう、兩方りゃうはうの奴等やつら！
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオーに介抱かいはうせられて、マーキューシオー入はひる。
ロミオ　領主りゃうしゅには近親きんしんたる信友しんいうのマーキューシオーが俺故おれゆゑあのやうな重傷ふかでを負おひ、俺おれはまた只たゞ一時程ときほど縁者えんじゃとなったあのチッバルト故ゆゑに汚名をめいを受うけた。おゝ、ヂュリエット、卿おまひの艶麗あてやかさが俺おれを柔弱にうじゃくにならせて、日頃ひごろ鍛きたうておいた勇氣ゆうきの鋒きっさきが鈍にぶってしまうた。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオー又また出る。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　おゝ、ロミオ／＼、マーキューシオーはお死しにゃったぞよ！　あの勇敢ゆうかんな魂たましひは氣短きみじかに此世このよを厭いとうて、雲くもの上うへへ昇のぼってしまうた。
ロミオ　けふの此この惡運あくうんは此儘このまゝでは濟すむまい。これは只たゞ不幸ふしあはせの手始てはじめ、つゞく不幸ふかうが此この結局しまつをせねばならぬ。
チッバルト又また出る。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　我武者がむしゃのチッバルトめが又また來きをった。
ロミオ　なに、無事ぶじで、勝誇かちほこって？　マーキューシオーが殺ころされたのに！　此上このうへは禮儀れいぎも寛大くわんだいも天外てんぐわいに抛なげうった。※(「陷のつくり＋炎」、第3水準1-87-64)ほのほを眼まなこの忿怨神いかりのかみよ、案内者あんないじゃとなってくれい！……（チッバルトに對ひ）やい、チッバルト、先刻せんこく足下おぬしが俺おれにくれた「惡漢あくたう」の名なは今いま返かへす、受取うけとれ。マーキューシオーの魂たましひがつい頭上とうじゃうに立迷たちまようて同伴者どうばんじゃを求もとめてゐる、足下おぬしか、俺おれか、兩人ふたりながらか、同伴どうばんをせねばならぬぞ。
チッバ　青あを二才さいどの、最初さいしょ同伴つれだって來きた足下おぬしぢゃ、冥土あのよへ行ゆくも一しょにお往ゆきゃれ。
ロミオ　それは此劍これが決きめるわ。
二人ふたり鬪たゝかふ。チッバルト倒たふるゝ。
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　ロミオ、速はやう！　速はやう迯にげた！　あれ、市人まちびとが騷さわぎはじむる。チッバルトは落命らくめいぢゃ。狼狽うろたへてゐるところでない。捕とらへられたならば、領主りゃうしゅは死罪しざいを宣告せんこくせう。速はやう落おちた、速はやう／＼！
ロミオ　おゝ、俺おれゃ運命うんめいの玩弄物もてあそびぢゃわい！
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　おい、何なにをしてゐるのぢゃ？
ロミオ入る。
市人等まちびとら出る。
甲市人　マーキューシオーを殺ころした奴やつは何方どちらへ逃にげました？　人殺ひとごろしのチッバルトは何方どっちへ逃にげました？
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　そこにゐるのがチッバルトでござる。
甲市人　ござれ、吾等われらと一しょに。御領主ごりゃうしゅの命おほせでござる、ござれ。
此時このとき、領主りゃうしゅ公爵こうしゃく、多勢おほぜいの從者じゅうしゃを引連ひきつれて出る。モンタギュー長者夫婦ちゃうじゃふうふ、カピューレット長者夫婦ちゃうじゃふうふ、其他そのた多勢おほぜい出る。
領主　　その不埓ふらちな爭鬪さうとうを始はじめた者共ものどもは何方いづれにをる？
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　憚はゞかりながら、此この不運ふうんなる騷擾さうぜうのあさましき經緯ゆくたては手前てまへが言上ごんじゃういたしませう。それに倒たふれをりまする男をとこが御親戚ごしんせきのマーキューシオーどのを殺害せつがいしましたるをロミオと申まうす若人わかうどが討取うちとってござります。
カピ妻　なに、チッバルト！　おゝ、わしの甥をひの、弟おとうとの子この！　おゝ、御領主とのさま！　おゝ、甥をひよ！　わが夫つま！　おゝ、大事だいじの／＼、親族うからの血汐ちしほが流ながされてゐる！　公平こうへいな御領主ごりゃうしゅさま、モンタギューの血ちを流ながして吾等われらのを償つぐなうて下くださりませい。おゝ、甥をひよ／＼！
領主　　ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオーよ、此この無慚むざんな鬪諍とうじゃうを始はじめたのは誰たれぢゃ？
ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)　チッバルトにござります、ロミオに殺ころされたましたる。ロミオは言葉ことば穩おだやかに、此この爭端さうたんの取とるに足たらぬ由よしを反省はんせいさせ、二ふたつには殿とののお怒いかりを思おもひやれ、と聲色せいしょくを和やはらげ、膝ひざを曲まげて、さま／″＼に申まうしましたなれども、中裁ちゅうさいには耳みゝを假かしませぬチッバルト、理不盡りふじんなる怒いかりの切先きっさき、只たゞ一突ひとつきにとマーキューシオー殿どのの胸元むなもとをめがけて突ついてかゝりまする、此方こなたも同おなじく血氣けっきの勇士ゆうし、なにを小才覺ちょこざいなと立向たちむかひ、氷こほりの死しの手てをば引外ひッぱづして右手めてに附入つけいりまする手練しゅれんの切先きっさき、それを撥反はねかへすチッバルト。ロミオは其時そのとき聲こゑ高たかく「お待まちゃれ、兩氏かた／″＼！　退ひいた／＼！」といふより速はやく劍けんを拔ぬいて、その怖おそろしい切先きっさきをば、叩伏たゝきふせ／＼、二人にんが間あひだに割わって入いる、腕かひなの下したよりチッバルトが突出つきだしましたる毒刃どくじんに、マーキューシオーどのは敢無あへない最期さいご。さて、チッバルトは其儘そのまゝ一旦たん逃去にげさりましたが、やがて又また取とって返かへすを、今いまや復讐ふくしうの念ねんに滿みちたるロミオが見みるよりも、電光でんくわうの如ごとく切きってかゝり、引分ひきわけまする間ひまさへもござらぬうちに、チッバルトは突殺つきころされ、倒たふるゝ途端とたんに身みを飜ひるがへし、ロミオは逃去にげさってござりまする。此儀このぎ相違さうゐあらば、ベン※(濁点付き片仮名ヲ、1-7-85)ーリオーが命いのちを召めされませう。
カピ妻　此この仁じんはモンタギューの親戚しんせきゆゑ、贔屓心ひいきごゝろがさもない事ことを申まうさせまする。此この不正ふせいな爭鬪たゝかひには二十人餘にんよも關係かゝづらうて只たんだ一人ひとりを殺ころしたに相違さうゐござりませぬ。殿とのさまに願ねがひまする、是非ぜひともお成敗せいばいの下くださりませい。ロミオはチッバルトを殺ころしたからは、生いかしてはおかれませぬ。
領主　　ロミオはチッバルトを、チッバルトはマーキューシオーを殺ころしたとすれば、マーキューシオーの血ちを償つぐなふべき者ものは誰たれぢゃ？
モン長　それはロミオではござりませぬ、彼かれはマーキューシオーどのゝ親友しんいうでござる。倅せがれが曲事きょくじは國法こくはふによって絶たたるべきチッバルトの命いのちを絶たったまでゝござります。
領主　　其その曲事きょくじゆゑに、即刻そっこく追放つゐはうを申附まうしつくる。汝等なんぢらの偏執へんしふに予等われらまでも卷込まきこまれ、其その粗暴そばうの鬪諍とうじゃうによって我わが血族けつぞくの血汐ちしほを流ながした。わが此この不幸ふかうを汝等なんぢらにも悔くやます爲ため、きびしい科料くわれうを課くわさうずるわ。陳辯いひわけも分※(「足へん＋流のつくり」、第4水準2-89-31)ぶんそも聽きかぬ。涙なみだも祈祷きとうも罪つみをば贖あがなはぬぞよ。それゆゑに何なにも申まうすな。急いそぎロミオを退去たちさらせい。さもなうて見附みつけられなば、其時そのときが即やがて最期さいごぢゃ。此この死骸しがいを荷になひゆきて、予よが命めいを待まて。人殺ひとごろしを憫あはれむは人ひとを殺ころすにひとしいわい。

第だい二場ぢゃう　　同處どうしょ。カピューレットの庭園ていゑん。

ヂュリエット出る。
ヂュリ　驅かけよ速はやう、火ひの脚あしの若駒わかごまよ、日ひの神かみの宿やどります今宵こよひの宿やどへ。フェートンのやうな御者ぎょしゃがゐたなら、西にしへ／＼と鞭むちをあてゝ、すぐにも夜よるを將つれて來こうもの、曇くもった夜よるを。隙間すきまもなう黒くろい帳とばりを引渡ひきわたせ、戀こひを助たすくる夜よるの闇やみ、其その闇やみに町まちの者ものの目めも閉ふさがれて、ロミオが、見みられもせず、噂うはさもされず、予わしの此この腕かひなの中なかへ飛込とびこんでござらうやうに。戀人こひゞとは其その麗うるはしい身みの光明ひかりで、戀路こひぢの闇やみをも照てらすといふ。若もし又また戀こひが盲めくらならば、夜よるこそ戀こひには一段だんと似合にあふ筈はず。さア、來きやれ、夜よるよ、黒くろづくめの服きものを被きた、見みるから眞面目まじめな、嚴格いかめしい老女らうぢょどの、速はやう來きて教をしへてたも、清淨無垢しゃうじゃうむくの操みさをを二ふたつ賭かけた此この勝負しょうぶに負まける工夫くふうを教をしへてたも。汝そなたの黒くろい外套マントルで頬ほゝに羽はばたく初心うぶな血ちをすッぽりと包つゝんでたも、すれば臆病おくびゃうな此この心こゝろも、見みぬゆゑに強きつうなって、何なにするも戀こひの自然しぜんと思おもふであらう。夜よるよ、來きやれ、速はやう來きやれ、ローミオー！　あゝ、夜よるの晝ひるとはお前まへの事ことぢゃ。夜よるの翼つばさに降おりたお前まへは、鴉からすの背せに今いま降ふりかゝる其その雪ゆきの白しろう見みゆるよりも白しろいであらう。速はやう來こい、やさしい、懷なつかしい夜よるの闇やみ、さ、予わしのロミオを賜たもれ。ロミオがお死しにゃれば、汝そちに遣やらう程ほどに、細截きりこまざいて星ほしにせい、したら大空おほぞらが見みかはすばかり美うつくしうなって、世界中せかいぢゅうの者ものが夜よるに惚ほれ、もう誰たれもあの爛々ぎら／＼した太陽たいやうを拜をがまぬやうにもなるであらう。おゝ、戀こひの屋敷やしきは買かうたれど、おのが住居すまひにはまだならぬ、身みは人ひとに賣うったれど、まだ賞翫しゃうくわんはして貰もらへぬ。あゝ、待まつ間まがもどかしい、祭まつりの前まへの晩ばんに氣きをいらつ子供こどものやうに、製こしらへて貰もらうた晴着はれぎはあっても、被きることが成ならぬので。……おゝ、あれ、乳母うばが。きっと消息しらせぢゃ。ロミオの名なをでも告つぐる舌したは天人てんにんの聲こゑと聞きこゆる。……これ、乳母うば、何なんの消息しらせぢゃ？　持もってゐやるは何なんぢゃ？　ロミオが取とって來こいと言いやった綱つなかや？
乳母　　あい／＼、綱つなぢゃ。
綱つなを抛出はふりだす。
ヂュリ　あゝ、まア！　何事なにごとが起おこったのぢゃ？　何なんで其方そなたは手てを絞しぼるのぢゃ？
乳母　　あゝ、かなしや！　死しなしゃった／＼／＼！　もう無效だめでござります、もう無效だめでござります。あゝ、かなしや！……逝いなしゃった、殺ころされさっしゃった、死しなしゃった！
ヂュリ　え、それほどに天てんが無慈悲むじひか！
乳母　　天てんは如何どうあらうと、ロミオは無慈悲むじひぢゃ。おゝ、ロミオどのが、ロミオどのが！　……誰たれが思おもひがけうぞい？　ロミオどのが！
ヂュリ　何なんで予わしに氣きを揉もますのぢゃ？　其樣そのやうな怖おそろしい唸うなり聲ごゑは地獄ぢごくでなうては聞きかれぬ筈はずぢゃ。ロミオが自害じがいでもなされたか？　これ、唯あいと言いって見みや、その唯あいといふ一言ひとことが、只たゞ一目ひとめで人ひとを殺ころす毒龍コカトリスの目めにもまして、怖おそろしい憂目うきめを見みする。其樣そのやうな羽目はめとならば、予わしの身みは最早もう駄目だめぢゃ。これ、お死しにゃったが實ぢゃうならば、唯あいと言いや。さうでなくば否いなと言いや。たった一言ひとこと二言ふたことで此身このみの生死しゃうしが決きまるのぢや［＃「決きまるのぢや」はママ］。
乳母　　其その創きずを見みましたが、此眼このめで見みましたが……南無なむさんぼう！……ちょうど此このお立派りっぱな胸元むなもとに。いた／＼しい、無慚むざんな、いた／＼しい死顏しにがほ。蒼白あをじろう、灰はひのやうに蒼白あをじろうなって、血ちみどろになって、どこもどこも血ちが凝こごりついて。見みると其儘そのまゝ、わしゃ氣きを失うしなうてしまひましたわいの。
ヂュリ　おゝ、裂さけよ！　此この胸むねよ！　破産はさんした不幸みじめな心こゝろよ、一思ひとおもひに裂さけてしまうてくれい！　目めも此上このうへは牢らうへ入はひれ、もう自由じいうを見みるな！　穢けがらはしい塵芥ちりあくため、元もとの土塊つちくれへ歸かへりをれ、活いきて働はたらくには及およばぬわい、ロミオと一しょに同おなじ柩車ひつぎの積荷つみにとなりをれ！
乳母　　おゝ、チッバルトどの、チッバルトどの、此上このうへもない頼たのもしいお方かたであったに！　おゝ、お懇ねんごろなチッバルトどの！　お立派りっぱなお方かた！　お前まへが亡なくならっしゃるのを生いきてゐて見みようとは！
ヂュリ　や、こりゃ、風向かざむきが變ちがうたわ、如何どうした暴風雨あらしぢゃ？　ロミオが殺ころされて、そしてチッバルトもお死しにゃったか？　大事だいじな從兄いとこも、尚なほ大事だいじなロミオどのも？　もしさうならば、大審判日おほさばきのひの喇叭手らっぱしゅよ、世よは最早もう絶滅をはりぢゃと宣告せんこくせい！　あの二人ふたりが逝いにゃったなら、生いきてゐる甲斐かひはない！
乳母　　チッバルトどのはお死しにゃって、ロミオどのは追放つゐはうぢゃ。下手人げしゅにんのロミオどのは追放つゐはうにならッしゃったのぢゃ。
ヂュリ　おゝ／＼！……あのロミオの手てでチッバルトを？
乳母　　さよぢゃ／＼。あゝ／＼、さよぢゃわいの！
ヂュリ　おゝ、花はなの顏かほに潛ひそむ蝮まむしの心こゝろ！　あんな奇麗きれいな洞穴ほらあなにも毒龍どくりうは棲すまふものか？　面かほは天使てんし、心こゝろは夜叉やしゃ！　美うつくしい虐君ぎゃくゝんぢゃ！　鳩はとの翼はね被きた鴉からすぢゃ！　狼根性おほかみこんじゃうの仔羊こひつじぢゃ！　見みた目めは神々かう／″＼しうて心こゝろは卑さもしい！　外面うはべとは裏表うらうへ！　いやしい聖僧ひじり、氣高けたかい惡黨あくたう！　おゝ、造化主ざうくわしゅよ、あのやうな可憐いとしらしい人間にんげんの肉體にくたいにすら夜叉やしゃの魂たましひを宿やどらせたなら、地獄ぢごくの夜叉やしゃの肉體からだには何者なにものを住すませうとや？　あんな内容なかみにあのやうな表紙へうしを附つけた書ほんがあらうか？　あんな華麗りっぱな宮殿きゅうでんに虚僞うそ譎詐いつはりが棲すまはうとは！
乳母　　さゝ、頼たのまれぬ、信しんぜられぬ、不正直ふしゃうぢきは男をとこの習ならひぢゃ。どれも／＼※(「言＋墟のつくり」、第4水準2-88-74)吐うそつき、誓言破せいごんやぶり、ろくでなしの詐僞者いつはりものぢゃ。あゝ、彼僮あいつめは何處どこへ往いにをったぞ？　火酒しゃうちゅうを持もて來きてくりゃ。此この苦くるしみ、此この歎なげき、此この悲かなしみで、わしゃ齡としを取とってしまふわいの。ロミオの奴やつ、恥掻はぢかきをれ！
ヂュリ　そのやうなことを言いふ汝そちの舌したこそ腐くさりをれ！　恥はぢを掻かかしゃる身分みぶんかいの、彼方あのかたの額ひたひには恥はぢなどは恥はづかしがって能よう坐すわらぬ。あれこそは此世このよの名譽めいよといふ名譽めいよが、只たった一人ほとり王樣わうさまとなって、坐すわる帝座ていざぢゃ。おゝ、何なんといふ獸物けだものぢゃ予わしは、かりにも彼あの方かたを惡わるういふとは！
乳母　　從兄いとこどのを殺ころした人ひとをお前まへは善よう言いはうでな？
ヂュリ　殿御とのごぢゃ、惡わるう言いうてならうか！　あゝ、我わが夫つま、どの舌したで滑すべッこうせうぞ、つい三時みときが程ほど連添つれそうた妻つまの口くちで創きずだらけにしたお前まへの名なを？　とは言いひながら何故なぜ殺ころした汝おのれは、予わしの從兄いとこを？　さア、お前まへをば從兄いとこめが殺ころしたでもあらうによって。戻もどれ、おろかな涙なみだめ、元もとの泉いづみへ戻もどりをれ。悲歎かなしみに献さゝぐる貢みつぎを間違まちがへて喜悦よろこびに献上まゐらせをる。チッバルトが殺ころしたでもあらう我わが夫つまは生存いきながらへて、我わが夫つまを殺ころしたでもあらうチッバルトが死しんだのぢゃ。すれば、嬉うれしいことばかり、予わしゃ何なんで泣なくのぢゃ？　最前さいぜん聞きいた一言ひとことが、その一言ひとことが、チッバルトが死しにゃったよりも悲かなしいのぢゃ。辛つらい、忘わすれたい。おゝ、それが切實ひし／＼と思おもひ出ださるゝ、怖おそろしい罪惡ざいあくを罪人ざいにんが忘わすれぬやうに。「チッバルトは死しなしゃれた、そしてロミオは……追放つゐはう！」……「追放つゐはう」……其その「追放つゐはう」といふ一言ひとことがチッバルトを一萬人まんにんも殺ころしてのけた。チッバルトが死しにゃったばかりでも可よい程ほどの不幸ふしあはせであったものを。若もし又また不幸ふしあはせは同伴つれを好このみ、是非ぜひとも他ほかの不幸ふしあはせを同伴つれだって來こねばならぬなら、「チッバルトが死しなしゃれた」というた次つぎに、父とゝさまとか、母はゝさまとか、乃至ないしお二人ふたりもろともとか、乳母うばが何故なぜ言いひをらぬ。すればまだしも尋常ひととほりの憂悲歎うきかなしみで濟すまうものを。チッバルトがお死しにゃった上うへに、殿しんがりに「ロミオは追放つゐはう」。追放つゐはうと聞きくからは、父母ちゝはゝもチッバルトもロミオもヂュリエットも皆々みんな／＼殺ころされてしまうたのぢゃ。「ロミオは追放つゐはう！」其その一言ひとことが人ひとを殺ころす力ちからには際はても量はかりも限きりも界さかひも無ないわいの。言葉ことばでは言いひ盡つくされぬ不幸ふしあはせぢゃ。……なう、父樣とゝさまや母樣はゝさまは何處どこにぢゃ。
乳母　　チッバルトどのゝ死骸なきがらに取着とりついてお泣なきゃってでござります。彼方あちへ往いかしゃるなら案内あんないをしませう。
ヂュリ　涙なみだで創口きずぐちを洗あらはしゃるがよい、其その涙なみだの乾ひる頃ころにはロミオの追放つゐはうを悔くやむ予わしの涙なみだも大概たいがい盡つけう。其その綱つなを拾ひろうてたも。……ても憫然ふびんな綱つなよの、汝等おぬしらは欺だまされたなう、汝等おぬしらも予わしもぢゃ、ロミオが追放つゐはうになりゃったによって。ロミオは汝等おぬしらをば寢室ねまへの通路かよひぢにせうとお思おもやったに、予わしは志望おもひを能えい遂とげいで、處女をとめのまゝで世よを去さるのぢゃ。さ、綱つなよ。さ、乳母うばよ。これから婚禮こんれいの床とこへ往ゆかう。ロミオではない死神しにがみよ、予わしは此身このみを任まかさうわいの！
乳母　　速はやう居間ゐまへゆかしゃれ。お前まへを喜よろこばす眞實ほん／″＼のロミオを搜さがして來こう。其その居處ゐどこは知しってをる。これの、こちのロミオどのは、今宵こよひこゝへ來きやしゃる筈はずぢゃ。わしが往いて呼よんで來こう。はて、ロレンスさまの庵室あんじつに、ロミオは隱かくれてござらッしゃります。
ヂュリ　おゝ、速はやう逢あうて！　そして此この指輪ゆびわを予わしの勳爵士ナイトどのに手渡てわたして、訣別いとまごひにござるやう傳つたへてたも。
二人ふたりともに入る。

第だい三場ぢゃう　　同處どうしょ。ロレンス法師ほふしの庵室あんじつ。

ロレンス法師ほふし出る。
ロレ　　ロミオよ、出でてござれ、出でてござれよ、こりゃ人目ひとめを怕おそれ憚はゞかる男をとこ。あゝ、卿そなたは憂苦勞うきくらうに見込みこまれて、不幸ふしあはせと縁組えんぐみをお爲しやったのぢゃわ。
ロミオ出る。
ロミオ　師しの御坊ごばうか、消息たよりは何なんとぢゃ？　殿とのの宣告いひわたしは何なんとあったぞ？　まだ知しらぬ何樣どのやうな不幸ふしあはせが、予わしと知合しりあひにならうといふのぢゃ？
ロレ　　されば、其その可厭いやな友達衆ともだちしゅに和子わこは親したしみが多過おほすぎるわい。お宣告いひわたしを知しらせに來きた。
ロミオ　一定ぢゃう、命いのちを召めされうでな？
ロレ　　いや、寛大くわんだいなお宣告いひわたし、一命めいは召めされいで、追放つゐはうにせいとの命令おほせぢゃ。
ロミオ　なに、追放つゐはう！　慈悲じひぢゃ、死罪しざいと言いうて下くだされ。謫竄さすらへの身みとなるは死しぬるよりも怖おそろしい。追放つゐはうと言いうて下くださるな。
ロレ　　いや、※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナからは追放つゐはうぢゃが、世界せかいは廣ひろい、まゝ、落着おちついてござれ。
ロミオ　※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナの市まちを離はなれては世界せかいは無ない、有あるものは只たゞ煉獄れんごくぢゃ、苛責かしゃくぢゃ、地獄ぢごくぢゃ。此處こゝから逐おはるゝは世界せかいから逐おはるゝも同おなじ事こと、世界せかいから逐おはるゝは殺ころさるゝも同おなじ事こと、すれば追放つゐはうとは死罪しざいの隱かくし名なぢゃ。死罪しざいの事ことを追放つゐはうといはッしゃるは、黄金わうごんの斧鉞まさかりで予わしの首くびを刎はねておいて、汝そちは幸福しあはせぢゃと笑わらうてござるやうなものぢゃ。
ロレ　　おゝ、罪深つみふかや／＼！　おゝ、作法知さはふしらず、恩知おんしらず！　これ、卿そなたの罪科ざいくわは國法こくはふでは死罪しざいとある、然しかるに慈悲深じひぶかい御領主ごりゃうしゅが卿そなたの肩かたを持もち、御法ごはふを曲まげ、怖おそろしい死罪しざいの名なを追放つゐはうとは變かへさせられた。其その難有ありがたいお慈悲じひが分わからぬか！
ロミオ　慈悲じひではなうて、そりゃ苛責かしゃくぢゃ。ヂュリエットがゐやる此處こゝは天國てんごく、こゝに住すむ限かぎりは猫ねこも犬いぬも※(「鼬」の「由」に代えて「奚」、第4水準2-94-69)鼠はつかねずみも、どのやうな屑々物はかないものも、姫ひめの顏かほが見みらるゝゆゑ天國てんごくにゐるのぢゃが、ロミオにはそれが能かなはぬ。腐肉くされにくに集たかる蒼蠅あをばへでもロミオには優ます幸福者しあはせものぢゃ、風雅みやびた分際ぶんざいぢゃ。彼奴等あいつらは可憐いとしいヂュリエットの手ての白玉はくぎょくを掴つかむことも出來でくる、また姫ひめの脣くちびるから……其その上下うへしたの脣くちびるが、淨きよい温淑しとやかな處女氣をぼこぎで、互たがひに密接ひたと合あふのをさへ惡わるいことゝ思おもうてか、いつも眞赤まっかになってゐる……其その姫ひめの脣くちびるから永劫えいがう死しなぬ天福てんぷくを窃そっと盜ぬすむことも出來でくる、ロミオにはそれが能かなはぬ。ロミオは追放つゐはうの身みの上うへぢゃ。蒼蠅あをばへでも能ようすることをロミオばかりは能ようせぬ、彼奴等あいつらは自由じいうの身み、吾等われらは追放つゐはう！　これでも足下おぬしは追放つゐはうを死罪しざいでないとおしゃるかいの？　調合てうがふした毒どくはないか、研とぎすました刃やいばはないか、如何いかに卑いやしうても大事だいじない、一思ひとおもひに死しぬ法はふは無ないか？……「追放つゐはう」……「追放つゐはう」で殺ころさるゝのは俺おれゃ否いやぢゃ！　おゝ、御坊ごばうよ、追放つゐはうとは墮獄だごくの輩やからが用もちふる語ことば、唸うなり聲ごゑが附物つきもの。そのやうな語ことばを聞きかせて予わしを切きりさいなむとは酷むごいわい、つれないわい、それでも高僧かうそうか、司悔僧しくわいそうか、教導師けうどうしか、莫逆ばくぎゃくと誓ちかうた信友しんいうか？
ロレ　　はてさて、愚おろかな狂人きちがひどの、ま、予わしの言いふことを聽きかっしゃれ。
ロミオ　きっとまた追放つゐはうといふことを被言おしゃるであらう。
ロレ　　いや、其その語ことばの鋭鋒きっさきを防ふせぐ甲胄よろひを與おまさう。逆境ぎゃくきゃうの甘あまい乳ちゝぢゃと謂いふ哲學てつがくこそは人ひとの心こゝろの慰なぐさめ草ぐさぢゃ、よしや追放つゐはうの身みとならうと。
ロミオ　それ、また「追放つゐはう」と！　えゝ、哲學てつがくめ、腐くさりをれ！　哲學てつがくでヂュリエットが出來でき、市まちが移うつされ、領主りゃうしゅの宣告せんこくが取消とりけさるれば知しらぬこと、哲學てつがくが何なんの役やくに立たつ、何なんにならう？　もう聽きかぬ。
ロレ　　おゝ、すれば狂人きちがひには耳みゝが無ないと見みえる。
ロミオ　無ない筈はずぢゃ、賢かしこい人ひとにさへ目めが無ない世よぢゃ。
ロレ　　いや、卿そなたの今いまの身みの上うへについて、談だんじたい事ことがあるのぢゃ。
ロミオ　身みに感かんじておゐやらぬ事ことを、何なんで談だんずることが出來でけう。足下こなたが予程わしほどに齡としが若わかうて、あのヂュリエットが戀人こひびとで、婚禮こんれいの式しきを擧あげて只たんだ一時ときも經たたぬうちにチッバルトをば殺ころして、予わしのやうに戀こひ焦こがれ、予わしのやうにあさましう追放つゐはうされた上うへでなら、予わしに談だんずることも出來でけうずれ、このやうに頭髮かみのけを掻毟かきむしって、ま此樣このやうに地上ぢびたに倒たふれて、まだ掘ほらぬ墓穴はかあなの尺しゃくを取とることも出來でけうずれ！
ロミオ頭髮かみのけを掻毟かきむしり仰向あふむけに倒たふれて歎なげく。此時このとき奧おくにて戸とを叩たゝく音おと。
ロレ　　起たちゃれ。案内あんないがある。ロミオや、速はやう身みを匿かくしゃれ。
ロミオ　俺おれゃ匿かくれぬ。胸むねの惱悶なやみの唸うめきの息いきが霧きりのやうに立籠たちこめて追手おっての目めを塞ふさいだら知しらぬこと。
戸とを叩たゝく音おと。
ロレ　　あれ、あの叩たゝくことは！……誰たれぢゃな！……速はやう起たちゃ。捕とらへられうぞよ。……暫しばらく／＼！……立たちゃ／＼。
叩たゝく音おと。
予わしの書齋しょさいへ。……只今々々たゞいま／＼！……はてさて、愚おろかにも程ほどがあるわ！……はい／＼、只今たゞいま參まゐります！
叩たゝく音おと。
けたゝましうお叩たゝきゃるは何人どなたぢゃ？　どこから見みえたぞ？　何なんの御用ごようぢゃ？
乳母　（内にて）用ようは入はひってから申まうしまする、ヂュリエットさまからでござります。
ロレ　　なれば、ようこそ。
戸とを開あくる、乳母うば入來いりきたる。
乳母　　おゝ、御坊ごばうさま、御坊ごばうさま、姫ひめさまの殿御とのごは何處どこにござらッしゃります、ロミオさまは何處どこに？
ロレ　　それ、そこに地上ちじゃうに、おのが涙なみだに醉ゑうて。
乳母　　おゝ／＼、こちの姫ひめさまも、ま、ちょうど其通そのとほりぢゃがな！
ロレ　　ても、いたましい悲哀ひあひの感應かんおう！　氣きの毒どくな境遇きゃうぐう！
乳母　　こちのも其通そのとほりに平伏へたばって、泣面べそかいて、哭立なきたてゝぢゃ。立たたッしゃれ／＼。男をとこなら立たたッしゃりませ。姫ひめの爲ためぢゃ、ヂュリエットどのの爲ためぢゃ、起おきさッしゃれ、立たたしませ。（此時ロミオ唸うめく。）何なんで其樣そのやうに歎なげかッしゃるのぢゃ、何なんで其樣そのやうに大業おほげふに？
ロミオ　（俄に起ち上りて）おゝ、乳母おんば！
乳母　　あゝ、もし！　これさ、もし！　はて、死しぬれば何なにもかも結局おしまひぢゃがな。
ロミオ　今いまヂュリエットと被言おしゃったの？　姫ひめは何なんとしてぢゃ？　姫ひめは予わしを二人ふたりが中なかの歡樂くわんらくの其その水子みづごを姫ひめの身内みうちの血ちで汚よごした怖おそろしい殺人者ひとごろしと思おもうてはゐやらぬか？　何處どこにぢゃ？　何なんとしてぢゃ？　わしの内密妻ないしょづまは破やぶれた互たがひの誓文せいもんを何なんと言いうてぢゃ？
乳母　　おゝ、何なにも言いはッしゃらいで、泣ないてばっかり。寢床ねどこの上うへに倒たふれさっしゃるかと思おもふと、即やがて又また飛とび起おきてチッバルトと呼よばらっしゃる、かと思おもふと、ロミオと呼よばって、又また横倒よこたふしにならっしゃります。
ロミオ　すりゃ、其その名前なまへに胸板むないたを射拔いぬかれたやうに思おもうて、其その名前なまへの持主もちぬしが大事だいじの近親うからを殺ころしたゆゑ。おゝ、御坊ごばう、をしへて下くだされ、此この肉體にくたいの何どのあたりに、予わしの醜穢けがらはしい名なは宿やどってゐるぞ？　さ、をしへて下くだされ、其その憎にくい居所ゐどころを切裂霧さいてくれう。
劍けんを拔ぬく。
ロレ　　まゝゝ、滅相めっそうなことをすまい。これ、男をとこではないか？　姿すがたを見みれば男をとこぢゃが、其その涙なみだは宛然さながらの女子をなごぢゃ。狂氣きちがひめいた其その振舞ふるまひは理性りせいのない獸類同然けだものどうぜん。男をとこらしうも女をなごらしうも見みえて、獸類けだものらしうも見みゆる見みともない振舞ふるまひ！　はてさて、呆あきれ果はてた。誓文せいもん、予わしは今少もすこし立派りっぱな氣質きだてぢゃと思おもうてゐたに。チッバルトを殺ころした上うへに、おのが身みをも殺ころさうとや？　自みづから墮地獄だぢごくの罪つみを犯をかして、卿そなたゆゑにこそ生いきてゐやるあの姫ひめをも殺ころさうとや？　何なんで卿そなたは出生しゅっしゃうを呪のろひ、天てんを、地ちを呪のろふのぢゃ？　生せいと天てんと地ちと此この三みつが相合あひあうて出來できた身みをば、つい無分別むふんべつに棄すてうでな？　馬鹿ばかな、馬鹿ばかな！　姿すがたを、戀こひを、分別ふんべつを辱はづかしむる振舞ふるまひといふものぢゃ。譬たとへば、吝嗇者りんしょくもののやうに貨たからは夥おびたゞしう有もってをっても、正たゞしう用もちふることを知しらぬ、姿すがたをも、戀こひをも、分別ふんべつをも、其身そのみの盛飾かざりとなるやうには。卿そなたの其その氣高けだかい姿すがたは徒ほんの蝋細工同樣らうざいくどうやう、男をとこの勇氣ゆうきからは外はづれたものぢゃ。卿そなたの戀こひの盟約ちかひは内容なかみの無ない空誓文からぜいもん、なりゃこそ養育はごくまうと誓ちかうた戀こひをも殺ころしてのけうと爲しやるのぢゃ、卿そなたの分別ふんべつは姿すがたや戀こひの飾かざりぢゃが、本體ほんたいが善ようないので不具かたはとなり、愚おろかな卒そつが藥筐くすりいれの火藥くわやくのやうに、扱あつかひかたがわるいので爆發ばくはつし、我われと我わが武器ぶきで身みを滅ほろぼす。こりゃ、しっかりとお爲しやらう！　つい最前いまがたまで戀こひしさに死しぬる苦くるしみを爲してござった其その戀人こひゞとのヂュリエットは恙つゝがない。すれば、それが先まづ幸福しあはせ。またチッバルトは卿そなたを殺ころしたでもあらうずに、卿そなたがチッバルトを殺ころした。それもまた一ひとつの幸福しあはせ。次つぎに死罪しざいともあるべき國法こくはふは卿そなたの身方みかたとなって追放つゐはうで事濟ことずみ。それもまた一ひとつの幸福しあはせ。天てんの恩惠めぐみは重かさね／″＼脊せに下くだり、幸福かうふくが餘所行姿よそゆきすがたで言寄いひよりをる。それに何なんぢゃ、意地いぢくねの曲まがった少女こめらうのやうに、口先くちさきを尖とがらせて運命うんめいを呪のろひ、戀こひを呪のろふ。氣きを附つけゃ、氣きを附つけゃ、さういふ輩やからがあさましい最期さいごを遂とぐる。さゝ、豫定通さだめどほり、戀人こひゞとの許もとへ往いて、居間ゐまへ攀よぢ登のぼり、速はやう慰なぐさめてやりめされ。したが、夜番よばんの置おかれぬうちに別わかれませうぞ、マンチュアへ往ゆかれぬやうになってはならぬ。マンチュアに蟄ちっしてゐやる間あひだに、わしが機をりを見みて二人ふたりが内祝言ないしうげんの顛末もとすゑを公おほやけにし、兩家りゃうけの確執かくしつを調停てうていし、御領主ごりゃうしゅの赦ゆるしを乞こひ、やがて卿そなたを呼返よびかへすことにせう、其折そのをりの喜悦よろこびは出でて行ゆく今いまの悲痛かなしみの千萬倍せんまんばいであらうぞよ。……乳母おんば、先さきへ往ゆきゃれ。姫ひめによう傳つたへたもれ、家内中かないぢゅうを早はやう就褥ねかしめさと被言おしゃれ、歎なげきに疲つかれたれば眠ねむるは定ぢゃうぢゃ。ロミオは今直いますぐ參まゐらるゝ。
乳母　　はれま、結構けっこうなお教訓けうくんぢゃ、夜よすがら此處こゝに居殘ゐのこっても、聽聞ちゃうもんがしたいわいの。てもま、學問がくもんは偉きついものぢゃな！　殿とのさん、貴方こなたが來きさしますことを姫ひいさまに申まうしましょ。
ロミオ　さういうて、戀人こひゞとに、叱しかる準備したしらべをさせてたもれ。
乳母　　もしえ、この指輪ゆびわは姫ひいさまから、わしに貴下こなたへ上あげませいと言いうて。さ、速はやう、急いそがしゃれ、甚いかう夜よが深ふけたによって。
乳母うば入る。
ロミオ　おゝ、これで心こゝろが安やすらいだわ！
ロレ　　さ、速はやう往ゆきゃれ。さらばぢゃ。貴下こなたの幸運かううんは只たゞ此この一ひとつに繋かゝる、夜番よばんの置おかれぬうちに出立しゅったつするか、さなくば夜明よあくる頃ころ姿すがたを窶やつして此この市まちを遠とほざかるか、二ふたつに一ひとつぢゃ。マンチュアに蟄ちっしてござれ、忠實まめやかな僕をとこを求もとめ、時折ときおり、其その男をとこして此方こなたの吉左右きッさうを知しらせう。さ、手てを。もう晩おそい。さらばぢゃ、機嫌きげんよう。
ロミオ　此上このうへも無ない歡樂よろこびが予わしを呼よぶのでなかったら、斯こう早急さっきふに別わかるゝのは悲かなしいことであらう。恙つゝがなうござりませ。
二人ふたり左右さいうに別わかれて入る。

第だい四場ぢゃう　　同處どうしょ。カピューレット家けの一室しつ。

カピューレット長者ちゃうじゃ、同おなじく夫人ふじん及およびパリス出る。
カピ長　かやうな珍變ちんぺんが起おこったによって、女むすめに説とき聞きかす暇いとまもござらなんだ。女むすめもチッバルトを甚きつう懷なつかしう思おもうてをったに、また吾等われらとても同樣どうやうぢゃに。さりながら人ひとは皆みな死しぬるやうに生うまれたもの。もう今宵こよひは晩おそうござる、女むすめは降おりては參まゐるまいぢゃまで。貴下こなたがござったればこそ、さもなくば吾等われらとても、一時ときも前さきに、臥床やすんだでござらう。
パリス　かういふ愁傷なげきの最中さなかには祝言しうげんの話はなしも出來できまい。お内うちかた、おさらばでござる。娘御むすめごによろしう傳つたへて下くだされ。
カピ妻　心得こゝろえました、女むすめの心こゝろは明日あす早はやう質たゞしましょ。今宵こよひは悲嘆なげきに囚とらはれて、閉籠とぢこめてのみ居ゐまする。
パリス行ゆきかくる。
カピ長　いや、なう、パリスどの、女むすめは敢あへて献けんじまする。彼かれめは何事なにごとたりとも吾等われらの意志こゝろざしには背そむくまいでござる、いや、其儀そのぎは聊いさゝかも疑うたがひ申まうさぬ。……奧おくよ、其許そなたは寢ねる前まへに女むすめに逢あうて、婿むこがねパリスどのゝ深ふかい心入こゝろいれの程ほどを知しらせて、よいかの、次つぎの水曜日すゐえうびには……いや、待まちゃれ、けふは何曜日なにえうびぢゃ？
パリス　月曜日げつえうびでござる。
カピ長　月曜日げつえうび！　はゝア！　かうッと、水曜日すゐえうびはちと急きふぢゃ。木曜日もくえうびにせう。……女むすめに、木曜日もくえうびには此この殿とのと祝言しふげんさすると被言おしゃれ。ようござるか？　此この早急さっきふに異議いぎはござらぬか？　業々げふ／＼しうはすまい、ほんの近ちかしい輩やから一兩名りゃうめい、はて、何故なぜと被言おしゃれ、近親きんしんチッバルトが殺ころされて間まがないことゆゑ、盛宴せいゑんを催もよふすときは無情むじゃうな行爲しこなしとも思おもはれうによって。されば、近ちかしい友達ともだちをば只たんだ五六名めい限かぎり招まねくことにしませう。……したが、貴下こなた、木曜日もくえうびでようござるか？
パリス　吾等われらは其その木曜日もくえうびが明日あすであってほしうござる。
カピ長　さらば、先まづお歸かへりあれ。なれば木曜日もくえうびと定きめまする。……卿そなたは寢ねる前まへに女むすめに逢あうて、當日たうじつの準備こゝろまうけをさせたがよい。……おさらばでござる。予わしが居間ゐまへ燭火あかしを持もて！　はれやれ、晩おそうなったわい、こりゃ軈やがてお早はやうと言いはねばなるまい。……さゝ、お休やすみなされ。
パリスと夫婦ふうふと左右さいうに分わかれて入る。

第だい五場ぢゃう　　同處どうしょ。カピューレットの庭園ていゑん。

ロミオとヂュリエットと樓上ろうじゃうの窓口まどぐちに現あらはるゝ。
ヂュリ　去いなうとや？　夜よはまだ明あきゃせぬのに。怖こはがってござるお前まへの耳みゝに聞きこえたは雲雀ひばりではなうてナイチンゲールであったもの。夜毎よごとに彼處あそこの柘榴じゃくろへ來きて、あのやうに囀さへずりをる。なア、今いまのは一定きっとナイチンゲールであらうぞ。
ロミオ　いや／＼、旦あさを知しらする雲雀ひばりぢゃ、ナイチンゲールの聲こゑではない。戀人こひびとよ、あれ、お見みやれ、意地いぢの惡わるい横縞よこじまめが東ひがしの空そらの雲くもの裂目さけめにあのやうな縁へりを附つけをる。夜よるの燭火ともしびは燃もえ盡つきて、嬉うれしげな旦あしためが霧立きりたつ山やまの巓いたゞきにもう足あしを爪立つまだてゝゐる。速はやう往いぬれば命いのち助たすかり、停とゞまれば死しなねばならぬ。
ヂュリ　あの光明ひかりは朝あさぢゃない、いえ／＼、朝日あさひではないわいの。ありゃ太陽たいやうがお前まへの爲ために、今宵こよひマンチュアへの道案内みちしるべに炬火持たいまつもちの役やくさしょとて、急きふに呼出よびだした光ひかり物ものぢゃ。ぢゃによって、大事だいじない、まだ去いなしゃるには及およばぬ。
ロミオ　捕とらはれうと、死罪しざいにならうと、恨うらみはない、卿そもじの望のぞみとあれば。あの灰色はひいろは朝あさの眼めで無ないとも言いはう、ありゃ嫦娥シンシヤの額ひたひから照返てりかへす白光びゃくくわうぢゃ。また吾等われらの頭かしらの上うへで大空おほぞら高たかう鳴響なりひゞくあの奏樂そうがくも、雲雀ひばりの聲こゑでは無ないと言いはう。去いにたいよりも此處こゝに居ゐたいが幾層倍いくそうばいぢゃ。さ、死しよ、來きたれ、喜よろこんで迎むかへう！　それがヂュリエットの望のぞみぢゃ。さ、戀人こひびと、どうぢゃ？　もっと話はなさう。朝あさではない。
ヂュリ　いや、朝あさぢゃ、朝あさぢゃ。速はやう去いなしませ、速はやう／＼！　聞辛きゝづらい、蹴立けたたましい高調子たかてうしで、調子外てうしはづれに啼立なきだつるは、ありゃ雲雀ひばりぢゃ。雲雀ひばりの聲こゑは懷なつかしいとは虚僞いつはり、なつかしい人ひとを引分ひきわけをる。蟇ひきと目めを交換とりかへたとは事實まことか？　ならば何故なぜ聲こゑまでも交換とりかへなんだぞ？　あの聲こゑがあればこそ、抱いだきあうた腕かひなと腕かひなを引離ひきはなし、朝彦あさびこ覺さます歌聲うたごゑで、可愛いとしいお前まへを追立おひたてをる。おゝ、速はやう去いなしませ、だん／″＼明あかるうなって來くる。
ロミオ　明あかるうなればなる程ほど、暗くらうなる二人ふたりが身みの上うへ。
乳母うば出る。
乳母　　姫ひいさま！
ヂュリ　乳母うばか？
乳母　　御方樣おんかたさまが只今たゞいまお居間ゐまへ入いらせられます。夜よは明あけた、もし、油斷ゆだんなう心こゝろを配くばって。
ヂュリ　なりゃ、窓まどよ、日光ひを内うちへ、命いのちを外そとへ。
ロミオ　おさらば、おさらば！　これを名殘なごりに（と接吻して）降おりて去いなう。
樓ろうを下おりかくる。
ヂュリ　（樓上より）お前まへもう去いなしますか？　あゝ、戀人こひびとよ、殿御とのごよ、わが夫つまよ、戀人こひびとよ！　きっと毎日まいにち消息たよりして下くだされ。これ、一時ときも百日にちなれば、一分ぷんも百日にちぢゃ。おゝ、そんな風ふうに勘定かんぢゃうしたら、また逢あふまでには予わしは老年としよりになってしまはう！
ロミオ　さらばぢゃ！　かりそめにも機會きくわいさへあれば消息たよりを怠おこたることではない。
ヂュリ　おゝ、また逢あはれうかいの？
ロミオ　念ねんには及およばぬ。今いまの此この憂苦勞うきくらうは、後のちの樂たのしい昔語むかしがたりぢゃ。
ヂュリ　おゝ、如何どうせうぞ！　心こゝろめが忌いまはしい取越苦勞とりこしぐらうをさせをる。下したにゐやしゃるのを此處こゝから見みると、どうやら墓はかの底そこの死人しにんのやう。目めの故せゐか知しらねども、お前まへの顏かほが蒼あをう見みゆる。
ロミオ　眞實しんじつ、予わしの目めにも、卿そもじの顏かほが然さう見みゆる。憂悲愁うきかなしみが互たがひの血汐ちしほを涸からしたのぢゃ。おさらば、おさらば！
ロミオ入る。
ヂュリ　おゝ、運命神うんめいよ、運命神うんめいよ！　皆みなが汝そちを浮氣者うはきものぢゃといふ。いかに汝そちが浮氣うはきであらうと、世よに聞きこえた堅實かたぎな人ひとを何なんとすることも出來できまい。いや、やっぱり浮氣うはきがよい、そしたら彼あの人ひとを直すぐ※(「厭／（餮－殄）」、第4水準2-92-73)あいて予わしへ返かへしてたもらうによって。
カピ妻　（内にて）女むすめや／＼！　起おきてかいの？
ヂュリ　誰たれぢゃ呼よぶは？　母かゝさまか知しらぬ。晩おそうまで眠ねぶらいでか、早はやうから目めを覺さましてか？　何事なにごとがあって、見みえたやら？
カピューレット夫人ふじん出る。
カピ妻　ま、其方そなた、如何どうぞしやったか？
ヂュリ　心地こゝちがわるうござります。
カピ妻　いつまでも從兄いとこどのゝのことを悔くやんでゐやるか？　これの、涙なみだで洗あらうたら墓はかから出でて來きやると思おもうてか？　出でて來きやったとても生いかすことは出來できまい。ぢゃによって、思おもひ切きりゃ。歎なげくは愛情まごゝろの深ふかい證しるしぢゃが、餘あまりに深ふかう歎なげくは分別ふんべつの足たらはぬ證しるしぢゃ。
ヂュリ　でも此樣このやうな不幸ふしあはせは存分ぞんぶんに泣ないてのけたい。
カピ妻　存分ぞんぶんにお泣なきゃらうと、不幸ふしあはせな人ひとが歸かへりはせぬ。
ヂュリ　返かへらぬことゝ思おもうても、存分ぞんぶんに泣なかいではをられぬ。
カピ妻　では、其方そなたは、殺ころした當たうの惡黨あくたうが尚まだ存ながらへてゐくさるのを、然程さほどにはお泣なきゃらぬな？
ヂュリ　え、惡黨あくたうとはえ？
カピ妻　あのロミオの惡黨あくたう。
ヂュリ　（傍を向き）惡黨あくたうと彼あの人ひとでは大おほきな相違ちがひぢゃ！……神樣かみさま、あの者ものを赦ゆるさせられませ！　わたしは眞實しんじつ赦ゆるしてゐます。とは言いへ、思おもひ出だすと、悲かなしうてなりませぬ。
カピ妻　と言いふのも、あの二心ふたごころの下手人げしゅにんめが生存いきながらへてをるからぢゃ。
ヂュリ　あい、さうぢゃ、わたしの此この手てが能よう達とゞかぬ遠とほい處ところに。わたしの手て一ひとつで從兄いとこどのゝ敵かたきが討うちたい。
カピ妻　敵かたきは一定きっと取とってやります。懸念けねんには及およばぬ。すれば、最早もう泣なきゃんな。あの追放人おひはらはれの無頼漢ならずものが住すんでゐるマンチュアに使つかひを送おくり、さる男をとこに言いひ含ふくめて尋常よのつねならぬ飮物のみものを彼奴あいつめに飮のませませう、すれば即やがてチッバルトが冥途めいどの道伴みちづれ。さうなれば其方そなたの心こゝろも慰なぐさまう。
ヂュリ　ほんにロミオの顏かほを……死顏しにがほを……見みるまでは、妾わたしゃ如何どうしても心こゝろが勇いさまぬ、從兄いとこがお死しにゃったのが、それ程ほどに心こゝろに沁しみて悲かなしい。母かゝさま、其その毒どくを持もって行ゆく使つかひの男をとことやらが定きまったら、藥くすりは妾わたしが調合てうがふせう、ロミオがそれを手てに入いれたら、直すぐにも安眠あんみんしをるやうに。おゝ、彼奴あいつの名なを聞きくと身みが顫ふるへる。もどかしいなア、チッバルトを殺ころしをった彼奴あいつの肉體からだをば掻毟かきむしって、懷なつかしい／＼從兄いとこへの此この眞情まごゝろを見みすることも出來できぬか！
カピ妻　方法てだては自身じしんで工夫くふうしやれ、使者つかひは予わしが搜さがしませう。それはさうと、めでたい報道しらせを持もって來きたぞや。
ヂュリ　めでたい事こととは耳寄みゝよりな、此樣このやうな辛つらい時ときに。それは何樣どのやうな事ことでござります？
カピ妻　はて、其方そなたは仁情深なさけぶかい父御てゝごをお有もちゃってぢゃ。其方そなたに愁歎なげきを忘わすれさせうとて、俄にはかにめでたい日ひをお定さだめなされた、予わしも其方そなたも曾つひぞ思おもひがけぬめでたい日ひを。
ヂュリ　はれま、母樣かゝさま、それはまた何樣どのやうな？
カピ妻　はて、女むすめよ、次つぎの木曜日もくえうびの朝あさ早はやう、あの風流みやびな、立派りっぱな若殿わかとののパリスどのが、セント・ピーターの會堂くわいだうで、めでたう其方そなたを花嫁御はなよめごにお爲しやる筈はずぢゃ。
ヂュリ　そのセント・ピーターの會堂くわいだう懸かけて、いゝや、ピーターどのをも誓言ちかひにかけて、何なんのそれがめでたからう！　嫁入よめいりはせぬわいの。何なんといふ早急さっきふぢゃ。申入まうしいれも聞きかぬうちに婚禮こんれいとは何事なにごとぢゃ？　父とゝさまに言いうて下くだされ、わたしは嫁入よめいりはまだしませぬ。嫁入よめいりすれば如何どうあってもロミオへ往ゆく、憎にくいと思いふあのロミオへ、パリスどのへ往ゆくよりは。まア、ほんに、思おもひがけない！
カピ妻　あれ、父御ちゝごがわせた。自身じしんで然さう言いうて、父御ちゝごがそれを其方そなたから聞きいて、何なんと思おもはしゃるかを見みたがよい。
カピューレット長者ちゃうじゃ先さきに乳母うば從ついて出る。
カピ長　日ひが沈しずむと露つゆが降おりるは尋常よのつねぢゃが、甥をひの日沒ひのいりには如瀧雨どしゃぶりぢゃ。どうぢゃ！　噴水像みづふきどの！　え、まだ泣ないておぢゃるか？　え、いつまでも雨天しけつゞきか？　其許おぬしは只たんだ一ひとつの小ちひさい身體からだで、船ふねにもなれば、海うみにも風かぜにもなりゃる。先まづ目めは海うみぢゃ、終始たえず涙なみだの滿干みちひきがある、身體からだは船ふね、其その鹽辛しほからい浪なみを走はしる、溜息ためいきは風かぜぢゃ、涙なみだの浪なみと共ともに荒※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)あれまはり、涙なみだはまたそれを得えて倍※(二の字点、1-2-22)ます／＼荒あるゝ、はて、和なぎが急きふに來こなんだら、命いのちの船ふねが顛覆ひっくりかへってしまふわい。……何なんとぢゃ、卿そなた！　吩咐いひつけた通とほりをお語かたりゃったか？
カピ妻　はい、申まうしましたなれど、有難ありがたうはござりますが、望のぞまぬと言いうてゐます。阿呆あはうめは墓はかへ嫁入よめいりしたがようござります！
カピ長　ま、待またしませ！　如何どうしたと言いはします、いさや、どうしたと被言おしゃるのぢゃ？　え！　望のぞまぬ？　有難ありがたいとは思おもはぬか？　其その身みの名譽めいよぢゃと思おもはぬか？　おのれ、嬉うれしいとも思おもひをらぬか、あのやうな、分不相應ぶんふさうおうの貴人きにんを親おやが婿むこにしてとらしたをば？
ヂュリ　さア、名譽めいよぢゃとは思おもはねど、嬉うれしいとは思おもひまする。嫌いやなものを名譽めいよには能ようせねど、其その嫌いやなことも妾わたしを可愛かわゆさにして下くだされたと思おもへば嬉うれしい。
カピ長　何なんぢゃ、何なんぢゃ！　小理窟屋こりくつやが！　何なんぢゃそれは？　「名譽めいよぢゃ」、「嬉うれしいと思おもひまする」、「嬉うれしいと思おもひませぬ」。しかも尚なほ「名譽めいよぢゃとは思おもひませぬ」はて、こゝな我儘わがまゝどの、嬉うれしがったり名譽めいよがったりする間ひまに、其その上等けっこうな脚節すねふしでも調査しらべておきゃ、次つぎの木曜日もくえうびにパリスと一しょに會堂くわいだうへ行ゆくために。さうでないと、簀子すのこの上うへへ叩たゝき伏ふせて、引摺ひきずって行ゆかうぞよ。おのれ、萎黄病ゐわうびゃうで死しんだやうな面つらをしをって！　うぬ／＼、碌ろくでなし！　おのれ、白蝋面びゃくろうづらめが！
長者ちゃうじゃ立たちかゝる。
カピ妻　あさましい！　貴下こなたは氣きでも狂くるうたか？
ヂュリエット父ちゝの前まへに膝ひざまづく。
ヂュリ　もうし、父上ちゝうへ、膝ひざをついて願ねがひまする、たった一言ひとこと堪忍かんにんして聽きいて下くだされ。
カピ長　くたばりをれ、碌ろくでなしめが！　不孝千萬ふかうせんばんな奴やつぢゃ！　こりゃやい、次つぎの木曜日もくえうびに教會堂けうくわいだうへ往ゆきをらう。往ゆかずば、又またと此この顏かほを見みるな。言いふな、答こたへるな、返答へんたふするな。此この指ゆびがむづ／＼するわい。……奧おくよ、子こをば神かみが只たゞ一人ひとりしか賜たまはらなんだのを不足ふそくらしう思おもうたこともあったが、今いまとなっては此奴こやつ一人ひとりすら多過おほすぎる、取とりも直なほさず、呪咀じゅそぢゃ、禍厄わざはひぢゃ、うぬ／＼、賤婢はしたをんなめ！
乳母　　はれまア、可愛相かはいさうに！　其樣そのやうに叱しからしゃりますは、殿とのさま、それは貴下こなたが無理むりでござります。
カピ長　なゝ、なぜぢゃ、賢女けんぢょどの！　聰明樣おりこうさま、まゝ、お默だまりなされ。喋々語べちゃつきたくば、とっとゝ彼方あちへ往いて、冗口仲間むだぐちなかまと饒舌しゃべれ。
乳母　　お爲ためにならぬことは言いひませぬわいの。
カピ長　はい、さやうなら、御機嫌ごきげんよう！
乳母　　物言ものいうては、わるいかいな？
カピ長　默だまれ、むが／＼むが／＼と、阿呆あはうめ！　其許おぬしの御託宣ごたくせんは、冗口仲間むだぐちなかまと酒さけでも飮合のみあふ時ときに被言おしゃれ、こゝには用ようは無ないわ。
乳母　　貴下こなたは餘あまり逆上のぼせてござる。
カピ長　はて、氣きちがひにもなるわさ。晝ひるも夜よるも、季きも節せつも、念々刻々ねん／＼こく／＼、働はたらいてゐよが、遊あそんでゐよが、只たゞ一人ひとりゐよが、多勢おほぜいと共ともにゐよが、女むすめめが縁邊えんぺんを苦勞くらうにせなんだ時ときは無ない。やっとの事ことで、門閥家もんばつかの、良よい領地有りゃうちもちの、年としの若わかい、教育けういくも立派りっぱな、何樣なにさま才徳さいとくの具足ぐそくした男をとこは斯かうもありたいもの、と望のぞまるゝ通とほりに出來上できあがってゐる婿むこを搜さがして、供給あてがへば、見みともない、吠面ほえづらさかいて、泣偶人なきにんぎゃうめ、幸福しあはせをば幸福しあはせとも思おもひをらいで、「嫁入よめいりはせぬ」の、「戀こひは知しらぬ」の、「まだ年齡としはがゆかぬ」の、「赦ゆるして下くだされい」の、と吐ぬかしをる。したが、嫁入よめいりをせぬとならば、赦ゆるしてもくれう。好すきな處ところで草食くさはみをれ、此處こゝには住すまさぬわい。やい、よう思おもへ、よう考かんがへをれ、戲言たはぶれごとは言いはぬ乃公おれぢゃ。木曜日もくえうびは今いまの間ま、胸むねに手てを置おいて思案しあんせい。我子わがこならば親友しんいうの許もとへ遣やる、さなくば首くびを縊くゝらうと、乞食こじきをせうと、餓うゑて途上死のたれじにをしをらうとまゝぢゃ、誓文せいもん、我子わがことは思おもはぬわい、また何一なにひとつたりと、汝おのれには與くれまいぞよ。よいか、二言ごんは無ないぞよ。誓言せいごんは破やぶらぬぞよ。
長者ちゃうじゃ入はひる。ヂュリエット泣倒なきたふるゝ。
ヂュリ　大空おほぞらの雲くもの中なかにも此この悲痛かなしみの底そこを見透みとほす慈悲じひは無ないか？　おゝ、母かゝさま、わたしを見棄みすてゝ下くださりますな！　此この婚禮こんれいを延のばして下くだされ、せめて一月ひとつき、一週間しうかん。それも能かなはぬなら、チッバルトが臥ねてゐやる薄昏うすぐらい廟べうの中なかに婚禮こんれいの床とこを設まうけて下くだされ。
カピ妻　わしに物ものを被言おしゃんな、わしは最早もう何なにも言いひますまいほどに。好すきにしや、もう其方そなたには關かまひませぬほどに。
夫人ふじん入る。
ヂュリ　おゝ！……おゝ、乳母うばや！　如何どうしたらよいであらうぞ？　夫をっとは地上ちじゃう、誓約ちかひは天上てんじゃう。何なんとして其その誓約ちかひが再ふたゝび地上ちじゃうに戻もどらうぞ、其その夫つまが地ちを離はなれて天てんから取戻とりもどしてたもらずば？……慰なぐさめてたも、教をしへてたも。……かなしや／＼、此身このみのやうな孱弱かよわい者ものを天てんまでが陰謀たくらんで責せめさいなむ！……これ、乳母うば、どうせう？　嬉うれしいことを言いうてたも。何なんぞ慰なぐさめはないかいの？
乳母　　誓文せいもん、ござります。ロミオどのは追放つゐはうの身みぢゃほどに、世界せかいが崩くづれうと、戻もどって來きて何なんのかのと言いはッしゃらう筈はずは無ない。よしや戻もどらッしゃるにせい、ほんの窃々こつそりの内密沙汰ないしょざたぢゃ。すれば、かうなってしまうた上うへは、あの若殿わかとのへ嫁入よめいらッしゃるが最いっち良よい分別ふんべつぢゃ。おゝ、ほんに可憐かはいらしいお方かた。彼方あなたに比くらべてはロミオどのは雜巾ざふきんぢゃ。萠黄色もえぎいろの、活々いき／＼とした美うつくしい眼附めつき、鷲わしの目めよりも立派りっぱぢゃ。ほんに／＼、こんどのお配偶つれあひこそ貴孃こなたのお幸福しあはせであらうぞ、前まへのよりはずっと優ましぢゃ。よし然さうでないにせい、前まへのは最早もう絶滅だめぢゃ、いや、絶滅だめも同樣どうやうぢゃ、離はなれて住すんでござって、貴孃こなたのまゝにならぬによって。
ヂュリ　そりや［＃「そりや」はママ］其方そなた本氣ほんきで言いやるか？
乳母　　はい、本氣ほんきでも本心ほんしんでもござります、でなくば罰ばちが當あたれ！
ヂュリ　其通そのとほりに！
乳母　　えゝ？
ヂュリ　なに、あの、其方そなたの慰なぐさめで不思議ふしぎに心こゝろが安堵おちついた。奧おくへ往いて、母樣はゝさまに言いうてたも、父上ちゝうへの御不興ごふきょうを受うけたゆゑ、懺悔ざんげをして罪つみを赦ゆるして貰もらはうとて、ロレンスどのゝ庵室あんじつへわしが往いんだと。
乳母　　はい／＼、心得こゝろえました。それこそ賢かしこい御分別ごふんべつぢゃ。
乳母うば入る。ヂュリエットじっと行方ゆくかたを見送みおくって
ヂュリ　罰當ばちあたりの夜叉やしゃめ！　おゝ、惡魔あくまめ！　予わしに誓約ちかひを破やぶらせうとしをるばかりか、前まへには幾千度いくせんたびも比くらべ物ものの無ないやうに褒ほめちぎった予わしの殿御とのごを其その同おなじ舌したで惡口あくこうしをる。……去いね、相談敵手さうだんあひてにした其方そちぢゃが、其方そちと予わしとは今いまからは心こゝろは別々べつ／＼。……御坊ごばうの許ところへ往いて救すくひを乞こはう。事ことが皆みな破やぶれても、死しぬる力ちからは此身このみに有ある。
ヂュリエット入る。
［＃改ページ］

第四幕

第だい一場ぢゃう　　※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナ。ロレンス法師ほふしの庵室あんじつ。

ロレンス法師ほふしとパリスと出る。
ロレ　　木曜日もくえうびと仰おほせらるゝか？　では早急さっきふな事ことぢゃ。
パリス　舅しうとカピューレットどのが其樣そのやうにしたいと被言おしゃる。予わしとてもそれを遲おそうしたいとは思おもひませぬ。
ロレ　　姫ひめの心こゝろはまだ知しらぬと仰おほせらるゝ。すれば段取だんどりが素直すなほでない、吾等われらは好このもしう思おもひませぬ。
パリス　チッバルトの落命らくめいをいみじう歎なげいてゞあったゆゑ、涙なみだの宿やどには戀神※(濁点付き片仮名ヰ、1-7-83)ーナスは笑ゑまぬものと、縁談えんだんを差控さしひかへてゐたところ、餘あまり甚きつう歎なげいては姫ひめの身みが心元こゝろもとない、獨ひとりでゐれば洪水こうずゐのやうに出でる涙なみだも、交まじらふ者ものがあれば堰止せきとむることも出來できるものと、舅御しうとごの才覺さいかくにて、急きふに婚禮こんれいと事ことが決きまった。速はやうせねばならぬ仔細わけを、何なんと會得ゑとくめされたか？
ロレ　　（傍を向きて）それは遲おそうせねばならぬ仔細わけが、此方こちに解わかってをらなんだらなア！……あれ、御覽ごらうぜ、姫ひめが此庵こゝにわせられた。
ヂュリエット出る。
パリス　嬉うれしう逢あひました、我妻わがつま。
ヂュリ　妻つまとも呼よばしませ、婚禮こんれいが叶かなふなら。
パリス　叶かなはいでならうか、此次このつぎの木曜日もくえうびには？
ヂュリ　叶かなはいでならぬことは叶かなふ筈はずぢゃ。
ロレ　　こりゃ格言かくげんぢゃわい。
パリス　今日けふは師しの御坊ごばうに懺悔ざんげをばしよう爲ためにわせられたか？
ヂュリ　はい、というたなら、貴下こなたへ自白ざんげをしたことになりませうぞ。
パリス　吾等われらを思おもうてゐるといふことを、御坊ごばうに打明うちあけて言いうて下くだされ。
ヂュリ　では、打明うちあけて申まうしませう、わたしは御坊樣ごばうさまを思おもうてゐます。
パリス　吾等われらをも同おなじやうに思おもうてゐる、と言いうて下くだされうがな。
ヂュリ　さア、言いふにせい、それは背せで言いうてこそ價値ねうちもあれ、面かほを見合みあせて言いはうより。
パリス　やれ、笑止きのどくや、卿そなたの面かほは涙なみだで甚いかう汚よごれてゐる。
ヂュリ　涙なみだが何程どれほどの事ことをしませう、生得うまれつき、見みともない面かほぢゃもの。
パリス　其樣そのよなことを被言おしゃるのは、われから我面わがかほを讒訴ざんそするのぢゃ。
ヂュリ　眞ほんの事ことは讒訴ざんそとは言いはれぬ、ましてこれは後言かげごとではない、直ぢかに面かほに對むかうて言いうてゐるのぢゃもの。
パリス　いや、卿こなたの面かほは今いまでは予わしの有ものぢゃに、それをば其樣そのやうに惡あしう被言おしゃるのは讒訴ざんそぢゃ。
ヂュリ　ほんに然さうもあらうか、妾わたしの有ものではないゆゑ。……（ロレンスに）御坊樣ごぼうさま、今いまお暇ひまでござりますか、改あらためて晩ばんのお祈祷頃いのりごろに參まゐりませうか？
ロレ　　いや、今いまでも故障こしゃうは無ない。……若殿わかとの、憚はゞかりぢゃが、暫しばらくの間あひだ、こゝを吾等われらに。
パリス　おゝ、かりそめにも勤行ごんぎゃうのお妨さまたげをしてはならぬ！……ヂュリエットどの、木曜日もくえうびには朝あさ早はやうお迎むかへに行ゆきませうぜ。それまでは、おさらば。此この聖きよい接吻キッスを保有しまっておいて下くだされ。
パリス入る。
ヂュリ　おゝ、早はやう扉とを閉しめて、そしてしめてまうたら、わたしと一しょに泣ないて下くだされ。もう絶望だめぢゃ！　絶望だめぢゃ、絶望だめぢゃ！
ロレ　　あゝ、これ、ヂュリエットや、其その悲歎かなしみは善よう知しってをる！　何なんぼう搾しぼっても予わしの智慧ちゑには能あたはぬ。次つぎの木曜もくえうには、寸分すんぶんの猶豫ゆうよもなう、彼あの若わかと婚禮こんれいを爲しやらねばならぬと聞きいた。
ヂュリ　いゝえ／＼、それを中止やめにする方便てだてが無ないなら、聞きいたなぞとおッしゃるな。お前まへの智慧ちえにも能あたはぬなら、つい予わしの覺悟かくごをば良よい分別ふんべつぢゃと讃ほめて下くだされ、すれば此この懷劒くわいけんで今直いますぐに敢行してのけう。ロミオとわしの心こゝろと心こゝろを結むすび合あはせたは神樣かみさま、手てと手てを繋つないだはお前まへ。すれば、お前まへがロミオへの封印代ふいんがはりにした此この手てを、他あだし證書しょうしょの封印ふういんに使つかはうより、又また僞いつはりの無ない此この心こゝろを操みさをに背そむいて他あだし男をとこに向むけうより、此この懷劒くわいけんで手ても心こゝろも突殺つきころしてのけう。ぢゃによって今直いますぐにお前まへの長ながい年功ねんこうで良よい思案しあんをして下くだされ。さもなくば、此この怖おそろしい懷劒くわいけんを難儀なんぎの瀬戸際せどぎはの行司ぎゃうじにして、年としの功こうも智慧ちえの力ちからも如何どうとも能ようせぬ女一人をんなひとりの面目めんもくを今いまこゝで裁決とりさばかす、見みて下くだされ。さ、早はやう何なんとなと言いうて下くだされ。わしゃ早はやう死しにたい、お前まへの言いふことが何なんの役やくにも立たたぬやうなら。
ロレ　　まア、お待まちゃれ。助たすかる術すべを思おもひついたわ。必死ひっしの厄やくを脱のがれうためゆゑ必死ひっしの振舞ふるまひをもせねばならぬ。パリスどのと祝言しうげんするよりも寧いっそ自害じがいせうと程ほどの逞たくましい意志こゝろざしがおりゃるなら、いゝやさ、恥辱はぢを免まぬかれうために死しなうとさへお爲しやるならば、同おなじ望のぞみのために死しぬるに似にた一事あることをば多分たぶん敢行してのくることが出來でけう。敢行してのけう意こゝろなら救すくはるゝ術すべを授さづけう。
ヂュリ　おゝ、パリスどのと祝言しうげんをせう程ほどなら、あの塔たふの上うへから飛とんで見みい、山賊やまだちの跳梁はびこる夜道よみちを行ゆけ、蛇へびの棲すむ叢くさむらに身みを潛ひそめいとも言いはッしゃれ。吼ほゆる荒熊あらくまと一しょにも繋つながれう、墓はかの中なかにも幽閉おしこめられう、から／＼と鳴なる骸骨がいこつや穢むさい臭くさい向脛むかはぎや黄きばんだ頤あごのない髑髏しゃれかうべが夜々よる／＼掩おほひ被かぶさらうと。又また昨日きのふ今日けふの新墓しんばかで死人しびとの墓衣はかぎに苞くるまって隱かくれてゐよとも言いはッしゃれ。聞きいたばかりでも、例つねは身毛みのけが彌立よだったが、大事だいじの操みさをを立たつる爲ためなら、躊躇ちゅうちょせいで敢行してのけう。
ロレ　　では、待まちゃれ。先まづ今日けふは立歸たちかへって、嬉うれしさうにもてなし、パリスどのとの祝言しうげんを承諾しょうだくしやれ。明日あすは水曜日すいえうびぢゃ。明日あすは何なんとかして一人ひとりでお臥ねやれ、乳母うばをも同おなじ間まには臥ねかさッしゃるな。床とこにお入はひりゃったら、（小さき藥瓶を取出し）此この瓶びんを取とって此これなる藥水やくすゐをばお飮のみゃれ。すると、即やがて慄然ぞっとして眠ねむたいやうな氣持きもちが血管中けっくわんぢゅうに行渡ゆきわたり、脈搏みゃくはくも例いつものやうではなうて、全まったく止やみ、生いきてをるとは思おもはれぬ程ほどに呼吸こきふも止とまり、體温ぬくみも失うする。頬ほゝ、唇くちびるの薔薇ばらも褪あせて、蒼白あをじろい灰はひと變かはる。目めの窓まどもはたと閉とづる、生活いのちの日ひがつい暮くれて行ゆく時ときのやうに。どこも／＼硬固しゃちこばって、冷つめたうなって、自在じざいな活動はたらきをば失うしなうて、死切しにきったやうにも見みえう。さて、此この死切しにきったらしい相すがたで四十二時とき經たつときは、氣持きもちの好よい睡ねむりから醒さむるやうに、自然しねんと起おきさッしゃらう。然しかるに、翌朝あくるあさ、あの新郎殿むこどのが卿おことを迎むかひにとて來わするころは、卿おことは恰ちゃうど死しんでゐる。すれば、當國このくにの風習通ならはしどほりに、顏かほは故わざと隱かくさいで、最いっち良よい晴衣はれぎを着きせ、柩車ひつぎぐるまに載のせて、カピューレット家け代々だい／＼の古ふるい廟舍たまやへ送おくられさッしゃらう。其間そのひまに、予わしの消息しらせで、ロミオが此この計畫けいくわくを知しり、卿おことが覺さめさッしゃる前まへに、此方こちへ來くることとならう。予わしも共々とも／″＼目覺めさめまで番ばんをして、其夜そのよの中うちにロミオが卿おことをばマンチュアへ伴つれて行いなう。卿おことの心こゝろさへ變かはらずば、女々めゝしい臆病心おくびゃうごゝろの爲ために、敢行してのくる勇氣ゆうきさへ弛ゆるまなんだら、此度このたびの耻辱はぢは脱のがれられうぞ。
ヂュリ　下くだされ、さ、それを。早はやうそれを！　おゝ、何なんの臆病心おくびゃうごゝろ！
ロレ　　まゝ、歸かへらしめ。（藥瓶を渡し）さらば、逞たくましう覺悟かくごして、首尾しゅびよう事ことを爲遂しとげさッしゃれ。予わしはまた一さる法師ほふしに、卿おことの殿御とのごへの書面しょめんを持もたせ、急いそいでマンチュアまで遣やりませう。
ヂュリ　戀こひよ、予わしに力ちからをくれい！　力ちからさへあれば事ことは成ならう。……御坊ごばうさま、さらば。
左右さいうへ別わかれて入る。

第だい二場ぢゃう　　同處どうしょ。カピューレット邸ていの一室しつ。

カピューレット長者ちゃうじゃを先さきに、同おなじく夫人ふじん、乳母うば、并ならびに下人げにん甲かふ、乙おつ、從ついて出る。
カピ長　こゝに書かいてあるだけの客人きゃくじんを招待せうだいせい。……
甲かふの下人げにん入はひる。乙おつの下人げにんに向むかひ
やい、汝そちは料理人れうりにんの老練らうれんな奴やつを二十人にんばかり雇やとうて來こい。
乙下人　御懸念ごけねんなされますな、先まづ指ゆびを嘗なめさせて見みて雇やとひまする。
カピ長　それはまた如何どうした理由わけぢゃ？
乙下人　はて、うぬが指ゆびを能よう嘗なめぬやうな奴やつは不可いけぬ料理人れうりにんでござります。それゆゑ指ゆびを能よう嘗なめぬ奴やつは採用とりあげませぬ。
カピ長　往ゆけ／＼。……
乙おつの下人げにん入る。
必定ひつぢゃう、何なにかと行屆ゆきとゞかぬがちであらうわい。え、こりゃ、女むすめはロレンス御坊ごばうの許ところへ往いたか？
乳母　　さよでござります。
カピ長　うゝ、御坊ごばうの庇かげで、ちと料簡れうけんも直なほりをらうわい。氣儘きまゝな、沒分曉的わからずやの賤婦あまっちゃめぢゃ。
ヂュリエット出る。
乳母　　あれ、孃ぢゃうが嬉うれしさうな顏かほして、お懺悔ざんげから歸かへらしゃれた。
カピ長　どうぢゃ、剛情張がうじょッぱりが？　どこを漫歩ほつきあるいて？　何處どこにゐたのぢゃ？
ヂュリ　父とゝさまの命令おほせごとに省そむいた不孝ふかうの罪つみを悔くやむことを習ならうた處ところに。（膝まづきて）かうして地ちに平伏ひれふして父とゝさまの赦ゆるしを乞こへいと、あのロレンスどのが言いはれました。どうぞ堪忍かんにんして下くだされ！　これからは善よう命令おほせつけを聽ききまする。
カピ長　それ、パリスどのを呼よびにやって、速はやう此事このことを知しらせい。明日あすは朝あさの間まに此この縁結えんむすびを濟すまさうわい。
ヂュリ　その若わかにロレンスどのゝ庵室あんじつで逢あうたゆゑ、女をなごの謹愼つゝしみに障さはらぬ限かぎりの、ふさはしい會釋ゑしゃくをしておきました。
カピ長　はて、それは重疉々々ちょうでう／＼。よし／＼。起たちゃ／＼。（ヂュリエットを扶け起し）さうなうてはならぬ筈はずぢゃ。……ま、ともかくも若わかに逢あはうわ、さうぢゃ、はて、速はやう往いて彼かの人ひとを伴つれて來こいといふに。……さてはや、實じつに高徳かうとくのあの上人しゃうにん、此この市中まちぢゅうの者もので、誰たれ一人ひとり、彼かの人ひとの庇かげを蒙かうむらぬものはないわい。
ヂュリ　乳母うばや、一しょに部屋へやへ來きて、明日あす被きねばならぬ最いっち似合にあふ晴衣はれぎを手傳てつだうて撰えらんでくりゃ。
カピ妻　木曜日もくえうびまでは急いそぐに及およばぬ。まだ澤山たくさん間まがあるがな。
カピ長　乳母うばよ、往ゆけ一しょに。……明日あす教會けうくわいへ往ゆくことにせう。
ヂュリエットと乳母うばと入る。
カピ妻　では、準備よういをする暇ひまもあるまい。もう即やがて夜よるぢゃ。
カピ長　なにさ／＼、乃公おれが馳驅奔走かけずりまはるわさ、さすれば、大丈夫だいぢゃうぶ、どうにかなるわさ。卿そなたは、ヂュリエットの許とこへ往いて、着きる物ものを手傳てつだうてやりゃ。乃公おれは今夜こんやは寢やすむまい。はて、任まかせておきゃ。今夜こんやほどは女房役にょうばうやくをせうわい。……（奧に向ひて）こりゃ、誰たれかゐぬか！……皆みな出拂ではらうてしまうた。むゝ、自身じしんでパリスどのゝ邸やしきへ往いて、明朝あすの準備こゝろがまへをさせて來こう。心こゝろがおそろしう輕かるうなったわい、あの我儘者わがまゝものめが改心かいしんしをったによって。
二人ふたりともに入る。

第だい三場ぢゃう　　同處どうしょ。ヂュリエットの居間ゐま。

ヂュリエットを先さきに乳母うば從ついて出る。
ヂュリ　あい、其その晴着はれぎが最いっち佳よい。それはさうと、乳母うばや、今宵こよひは予わしをどうぞ一人ひとりで寢ねかしてくりゃ。知しってゐやる通とほりの、執拗ねぢくれた、此この罪深つみふかい心こゝろを、神樣かみさまに赦ゆるして貰もらふため、いろ／＼とお祷いのりをせねばならぬ。
カピューレットの夫人ふじん出る。
カピ妻　え、何なんと、忙いそがしうおぢゃるなら、手傳てつだひませうか？
ヂュリ　いゝえ、母樣かゝさま、明日あすの式しきに相應ふさはしい入用いりような品程しなほどは既もう撰出えりだしておきました。それゆゑ、妾わたしにはお介意かまひなう、乳母うばはお傍そばで夜中よぢゅうお使つかひ下くだされませ。かうした早急さっきふな取込とりこみゆゑ、嘸さぞお手てが足たりますまい。
カピ妻　では、機嫌きげんよう、床とこに就ついてお休やすみ、それが何なによりも大切たいせつぢゃほどに。
夫人ふじん乳母うばを伴つれて入る。
ヂュリ　さやうなら！……又またいつ逢あはるゝやら。……おゝ、總身そうみが寒さむけ立だって、血管中けっくわんぢゅうに沁しみ徹とほる怖おそろしさに、命いのちの熱ねつも凍結こゞえさうな！　寧いっそ皆みなを呼戻よびもどさうか？　乳母うば！……えゝ、乳母うばが何なんの役やくに立たつ？　怖おそろしい此この一場ばは、一人ひとりで如何どうあっても勤つとめにゃならぬ。……さア、來こい、瓶びんよ。
藥瓶くすりびんを取上とりあげる。
とはいへ、若もし此この藥くすりに、何なんの效力きゝめも無なかったなら？　すれば、明日あすの朝あさとなって、結婚けっこんを爲しようでな？　いや／＼。……それは此劍これが（と懷劍を取り上げ）させぬ。……やい、其處そこにさうしてゐい。（と懷劍を下に置く）。……萬まん一、此この藥くすりが毒藥どくやくであったら？　ロミオどのと縁組えんぐみさせておきながら、此この婚禮こんれいをさすときは、宗門しゅうもんの恥はぢとなるによって、それで予わしを殺ころさうといふ深ふかい陰謀たくみの毒藥どくやくではあるまいものでもない。いや／＼、よもや其樣そのやうなこともあるまい、不斷ふだんから上人しゃうにんと人ひとに崇あがめられた彼あの法師ほふしぢゃ。……したが、墓はかの中なかに臥ねてゐる時分じぶん、まだロミオがお來きやらぬうちに、若もし目めが覺さめたら何なんとせう？　さア、それが怖おそろしい！　其その窖あなむろで呼吸いきが塞つまってはしまやせぬか？　其その穢むさい穴あなの中なかへは清きよい空氣くうきは些程つゆほども通かよはぬゆゑ、ロミオどのが來わする頃ころには予わしゃ死しんでしまうてゐねばなるまい。若もし生いきてゐるやうなら……時ときも時とき、處ところも處ところ、墓はかも墓はか、年としを經へた埋葬所はふむりどころ、何なん百年ねんの其間そのあひだの先祖せんぞの骨ほねが填充つまってあり、まだ此間このあひだ埋うめたばかりの彼あのチッバルトも血ちまぶれの墓衣はかぎのまゝで、定さだめて腐くさりかけてゐるであらうし、また眞夜中まよなかの幾時いくときかは幽靈いうれいも出でるといふ……えゝ、どうしょう、目めが覺さめたら？……厭いやらしい其その臭にほひと、聞きけば必然きっと狂亂きちがひになるといふ彼あの曼陀羅華まんだらげを根ねびくやうな、凄すごい氣味きみのわるい聲こゑを聞きいたら……おゝ、早はやまって覺さめた時分じぶんに、其樣そのやうな怖おそろしい、畏こはいものに取卷とりまかれたら、氣きが違ちがはいでをられうか？　先祖せんぞの衆しゅうの手てや足あしやを偶ふと玩具もてあそびにはしはすまいか？　手傷てきずだらけのチッバルトを血ちみどろの墓衣はかぎから引出ひきだしゃせぬか？　狂氣きゃうきの餘あまり、世よに聞きこえた或さる親族うからの骨ほねを取上とりあげ、棍棒ばうぎれのやうに揮※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)ふりまはして、我われと我手わがてで此この腦天なうてんをば摧くだきゃせぬか？　あれ／＼！　チッバルトの怨靈をんりゃうが、細刃ほそみで斫きられた返報へんぽうをしようとて、ロミオを追※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)おひまはしてゐるのが見みゆるやうぢゃ！　あ、あれ、待まってたべ、チッバルト！……ロミオ、わしぢゃ！　これはお前まへを思おもうて飮のむのぢゃ。
と藥水やくすゐを飮干のみほすとやがて眩暈げんうんしたる思入おもひいれにて、寢臺しんだいの上うへ、帳とばりの内うちへ倒たふれ込こむ。

第だい四場ぢゃう　　同處どうしょ。カピューレット邸ていの廣間ひろま。

カピューレット夫人ふじんと乳母うばと出る。
カピ妻　待まちゃ、乳母うば、此この鍵かぎを持もって往いて、もそっと藥味やくみを取とって來きてたも。
乳母　　お庖厨だいどころでは、棗なつめや榲※(「木＋孛」、第3水準1-85-67)まるめろを與くれいと呼よんでゐます。
カピューレット長者ちゃうじゃ出る。
カピ長　さゝゝゝゝ、働はたらけ／＼！　二番鷄ばんどりが啼ないたぞ、深夜鐘カアヒウが鳴なったわ、もう三時じぢゃ。こりゃアンヂェリカ、燒饅頭やきまんぢうはよいかの？　費用つひえは介意かまふな、費用つひえは。
乳母　　またしてもお干渉せっかひを爲しやしゃります、さゝ、お就褥やすみなされませ。誓文せいもん、明日あすは病人びゃうにんにならしゃりませうぞえ、此夜こよひ寢ねやしゃらぬと。
カピ長　うんにゃ、ちょっともぢゃ。はて、其前そのぜんには、もそっと些細ささいな事ことで、幾いくたびも夜明よあかしをしたものぢゃが、曾つひぞ病氣びゃうきなぞになったことは無ないわい。
カピ妻　さいの、其時分そのじぶんには甚きつい鼠捕ねずみとりであったさうな。したが、わたしが不寢ねずの番ばんをするゆゑ、今いまは其樣そのやうな鼠ねずみをば捕とらすことぢゃない。
夫人ふじんと乳母うばと入る。
カピ長　妬やきをるわい、妬やきをるわい！……
下人げにん三四人にん、炙串うをぐし、薪まき、籃てかごなどを携たづさへて出る。
やい／＼、そりゃ何なんぢゃ？
甲下人　料理番れうりばんのでござります、が、何なんぢゃやら存ぞんじませぬ。
カピ長　急いそげ／＼。
甲かふの下人げにん入る。
やい、もそっと枯かれた薪まきを取とって來こい。ピーターに聞きけ、すると、在處ありしょをば教をしへるわい。
乙下人　眼めがござりますから、薪位まきぐらゐは見附みつけまする、へい、ピーターには及およびませぬ。
乙おつの下人げにん入る。
カピ長　南無三なむさん、やりをるわい。おもしろい下司野郎げすやらうめ！　何なんぢゃ、薪まきを見みる眼めぢゃ？　乃公おれゃまた薪目まきめくらかと思おもうた。……はれやれ、夜よが明あけたわ。今いまに彼あの若わかが樂人共がくじんどもを將ゐて來わするであらう、さうせうと被言おしゃったによって。
樂がくの音ね聞きこゆる。
もう來わせたわ、……（奧に向ひて）乳母うば……奧おくよ！　こりゃ、やい！……こりゃ乳母うば、乳母うばといへば！
乳母うば又また出る。
さゝ、ヂュリエットを起おこして、着飾きかざらせい。俺おれは往いてパリスどのに挨拶あいさつせう。……さゝ、急いそげ／＼。婿むこどのは最早もう來わせたわ。急いそげ急いそげ。
皆みな入る。

第だい五場ぢゃう　　同處どうしょ。ヂュリエットの居間ゐま。

ヂュリエット前まへの場ばの儘まゝに寢床ねどこに倒たふれ臥ふしてゐる。床とこには帳とばりがかけてある。乳母うば出る。
乳母　　孃ぢゃうさま！　これさ、孃ぢゃうさま！　ヂュリエットさま！　ぐっすりと睡入ねいってぢゃな、定ぢゃう？　はて、仔羊こひつじさんえ！　はて、姫ひいさまえ！　ま、こゝなお寢坊ねばうさんえ！　はて、可憐いとしぼさん！　これの、お姫ひいさま！　戀人こひびとさんえ！　はてま、花嫁御はなよめごさんえ！　えゝも、うんとも言いはっしゃらぬ。もう三文もんがた眠ねようでな？　なりゃ一週間しうかんがたも眠ねやっしゃれ、明日あすの晩ばんとなると眠ねらるゝことではない、あの若わかがお前まへを眠ねかさぬと根ねを据すゑてぢゃ。……南無三寶なむさんぼう、ほんにまア善よう眠込ねこんでござることぢゃ！　でも是非ぜひ起おこさにゃならぬ。……孃ぢゃうさま孃ぢゃうさま／＼！　其その床とこの中なかへあの若わかが這入はひらしゃってもよいかや？　そしたら飛起とびおきさっしゃらうがな。何なんと然さうであらうがな？（寢床の帳を開く）。ま、支度したくまで爲しやしゃれて！　着衣めしたまゝで！　それでまた寢ねたのかいな！　どうしても起おこさにゃなりませぬわい！（ゆすぶりながら）姫ひいさま！　姫ひいさま！……あゝ、かなしや！　はれ、誰たれぞ來きて下くだされ、たれぞ！　姫ひいさまが死しなしゃってぢゃ！　おゝ、悲かなしや／＼、生うまれなんだが優ましであったものを！　速はやう火酒しゃうちうを持もって來きて下くだされ！　殿とのさまえ、奧おくさま！
カピューレット夫人ふじん出る。
カピ妻　ま、何なんといふ騷さわぎぢゃ？
乳母　　おゝ、かなしや／＼！
カピ妻　如何どうしたのぢゃ？
乳母　　あれを、あれを！　おゝ、悲かなしや／＼！
カピ妻　（立寄りて）おゝ、おゝ！　女むすめよ、我子わがこよ、これ、生いきてたも、目めを開あいてたも、其方そなたが死しにゃると、予わしも一しょに死しにますわいの。誰たれぞ來きて下くだされ！　人ひとを呼よびゃ、人ひとを。
カピューレット長者ちゃうじゃ出る。
カピ長　どうしたものぢゃ、さ、速はやうヂュリエットを、殿御とのごが來わせたに。
乳母　　姫ひいさまは亡なくならしゃった、死しなしゃりました、亡なくならッしゃった。あら、かなしや／＼！
カピ妻　あら、悲かなしや、女むすめは死しにました、死しにました、死しにましたわいなう！
カピ長　やッ！　どれ、どこに。……やれ、悲かなしや！　こりゃ冷つめたいわ、血ちが沈しずんで、節々ふし／＼が固硬しゃちこばって、こりゃ此この唇くちびるから息いきが離はなれてから最早もう久ひさしい。廣ひろい野邊のべにも又またと無ない其その花はなに、時ときならぬ霜しもが降おりたがやうに、死しんで行ゆく女むすめ、ヂュリエット！
乳母　　おゝ、かなしや／＼！
カピ妻　おゝ、なさけなや／＼！
カピ長　女むすめを奪うばうて泣なかせをる死神しにがみめに、此この舌したを縛しばられて、物ものを言いふことが能かなはぬわい。
ロレンス法師ほふしとパリス、樂人がくじんらを引連ひきつれて出る。
ロレ　　さゝ、嫁御寮よめごれうの教會行けうくわいゆきの身支度みじたくは整とゝのひましたかの？
カピ長　いかにも、往ゆきて再ふたゝび還かへらぬ支度したくが。おゝ、婿むこどの、いざ婚禮こんれいの前まへの夜よに、死神しにがみめが貴下こなたの妻つまを寢取ねとりをった。あれ、あのやうに花はなの相すがたの色いろも褪あせたわ。死神しにがみが吾等われらの婿むこ、死神しにがみが吾等われらの嗣子あとつぎ、此上このうへは吾等われらも死しんで何なにもかも彼奴あいつに與くれう、命いのちも財産しんだいも何なにもかも死神しにがみめに與くれませうわい。
パリス　今朝けさ、面かほを見みる嬉うれしさをば、久ひさしう待焦まちこがれてをったに、此樣このやうな樣さまを見みようとは！
カピ妻　憎にくや、かなしや、あさましや、怨うらめしや！　休やすむ間まもなう※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)めぐり行ゆく長ながい年月としつきの間あひだにも、又またと、こんな情なさけない日ひがあらうかいの！　只たゞ一人ひとりの、可愛かはゆい一人ひとりの、大事だいじの／＼祕藏兒ほんそごをば、樂たのしみとも慰なぐさめとも思おもうてゐたを、取とってゆかれてしまうたと思おもへば、もう二度どとは逢あはれぬ處ところへ！
乳母　　おゝ、悲かなしや！　おゝ、かなしや／＼／＼！　こんな情なさけない、こんなあさましい日ひには、わしゃ曾つひぞ遭あうたことがない！　おゝ、こんな！　こんな！　こんな！　こんな怨うらめしい！　こんな忌いまはしい惡日あくにちは、わしゃ曾つひぞ／＼。おゝ、悲かなしや／＼！
パリス　欺だまされて、中なかを裂さかれて、侮辱ぶじょくされて、賤蔑さげすまれて、殺ころされてしまうたのぢゃ。憎にくい死神しにがみめに欺だまされたのぢゃ。慘酷むごい／＼汝おのれめには滅ほろぼされたのぢゃ！　おゝ、戀人こひゞとよ！　我わが命いのちよ！　いや／＼、命いのちとは言いはれぬ、死しんでしまうてゐやる我わが戀人こひびと！
カピ長　さげすまれ、困くるしめられ、憎にくまれて、何なんの罪つみもなうて殺ころされてしまうたのぢゃ！　あさましい惡日あくにちめ、何なんで汝おのれは吾家わがやへは來きをったぞ、此このめでたい式しきを殺ころさうとて、此このめでたい式しきを殺ころさうとて！　おゝ、女むすめよ！　おゝ、女むすめよ！　女むすめどころかい、我わが靈魂たましひよ！　其方そなたは死しにゃった！　あゝ、あゝ！　女むすめは死しんでしまうた、女むすめが死しねば俺おれの樂たのしみも最早もう絶たえたわ。
ロレ　　しづまりめされ！　如何どうしたものぢゃ！　起おこってしまうた騷さわぎは、騷さわげばとて治をさまるものではない。そも／＼此この娘御むすめごは天てんと貴下こなたの兩有りゃうもちぢゃ、今いまや天てんの獨有ひとりもちとなったは娘御むすめごの爲ためには幸福しあはせ。貴下こなたの有分もちぶんは死しが取とるといへば與やらぬわけにはゆかぬが、天てんの分ぶんは永劫えいごふ不滅ふめつぢゃ。娘御むすめごの出世しゅっせを願ねがひ、其その昇進しょうしんをば此世このよの天國てんごくとも思おもはしゃった貴下こなたが、只今たゞいま娘御むすめごが雲くもの上うへの眞まことの天國てんごくへ昇進しゃうしんせられたのを、何なんとして歎なげかしゃるぞ！　おゝ、安やすらかにならしゃれたを、其樣そのやうに取亂とりみだして悲嘆なげかしゃるは、正たゞしう愛あいさっしゃる所以ゆゑんで無ない。婚こんして壽じゅなるは必かならずしも良縁りゃうゑんならず、婚こんして夭折えうせつす、却かへって良縁りゃうえん。さ、涙なみだを乾かわかして、迷迭香まんねんくわうを死骸なきがらに※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)はさましゃれ。そして習慣通ならはしどほり、最いっち佳よい晴衣はれぎを着きせて、教會けうくわいへ送おくらっしゃれ。涙なみだを禁とどめあへぬは痴おろかな情じゃうの自然しぜんなれども、理性りせいの眼まなこからは笑草わらひぐさでござるぞよ。
カピ長　婚儀こんぎの爲ためにと準備よういした一切さいが役目やくめを變かへて葬儀さうぎの用よう。祝いはひの樂がくは哀かなしい鐘かねの音ね、めでたい盛宴ちさうが法事ほふじの饗應もてなし、樂たのしい頌歌しょうかは哀あはれな挽歌ばんか、新床にひどこに撒まく花はなは葬はふむる死骸なきがらの用ように立たつ。何事なにごとも、皆みなうらはら。
ロレ　　先まづ奧おくに入いらせられい。……内室おくがたも一しょに入いらせられい。……パリスどのにも。……何いづれも亡姫なきひめの隨行ともをして墓場はかばへ行ゆく準備したくをなされ。こりゃ何なにか仔細しさいあって天てんのお咎とがめ、此上このうへ、天意てんいに逆さからうて、ゆめ／＼御赫怒みいかりをば招まねかせらるゝな。
皆々みな／＼入る。樂人がくじんらと乳母うばと殘のこる。
甲樂人　こりゃ最早もう樂器がくきをしまうて歸かへってもよいであらう。
乳母　　ほんに、御苦勞ごくらうでござったが、ま、しまはッしゃれ／＼。して見みようもない「事こと」になったのぢゃわいの。
乳母うば入る。
甲樂人　成程なるほど、御道理ごもっともでござります、したが、今いまに如何どうにかなる「琴こと」でござりませう。
ピーター出でる。
ピータ　樂人がくじんさん、おゝ、樂人がくじんさん、「心こゝろの慰なぐさめ、心こゝろの慰なぐさめ」。乃公おいらを陽氣やうきにさせてくれる氣きなら、頼たのむ、聽きかせてくれ、例れいの「心こゝろの慰なぐさめ」を。
甲樂人　何故なぜ「心こゝろの慰なぐさめ」をでござります？
ピータ　はて、樂人がくじんさん、何故なぜと言いうて、今いま、乃公おれの心こゝろの中なかでは「予わしの心こゝろは悲哀かなしみに……」が始はじまってゐる最中さいちゅうぢゃ。ぢゃによって、何なにか可笑をかし悲哀なさけない奴やつをば聽きかせてくりゃ、乃公おれは怏々くさ／＼してかなはぬによって。
甲樂人　いや、滅相めっさうな、そんな氣分きぶんぢゃござりませぬ。
ピータ　否いやぢゃと被言おしゃるか？
甲樂人　さやう。
ピータ　よいわ、今いまに見みい、身體中からだぢゅうに鳴響なりひびくやうに支拂しはらうてくれうぞ。
甲樂人　何なにを支拂しはらはッしゃります？
ピータ　金かねぢゃ無ないぞ、輕蔑べっかっこうをぢゃ。太鼓持扱たいこもちあつかひにしてくれるわ。
甲樂人　すれば、此方こちも卿こなたをば從僕扱さんぴんあつかひにしてくれう。
ピータ　すれば、其その從僕さんぴんさまのお帶劍こしのものを汝等ぬしらの賤頭どたまへ上のせてくれう。（短き鈍劍を拔いて揮り※(「廴＋囘」、第4水準2-12-11)し）これ、大概たいがいで大言ぶう／＼を止やめぬと、其その太鼓面たいこづらをはりまげて地つちん中なかへめりこますぞよ、は如何どうだ？
甲樂人　それ、そのめったりはったりが音樂ぶう／＼（律呂）と謂いふものぢゃ。
乙樂人　もし／＼、もう好よい加減かげんに其その鈍劍なまくらを藏しまはっしゃれ、駄洒落だしゃれも最早もうぬきにさっしゃれ。
ピータ　何なんぢゃ、劍けんを藏しまうて洒落しゃれを拔ぬけ？　よし！　すれば、名劍めいけんを藏しまうて名洒落めいじゃれで打挫うちひしいでくれう。さ、男をとこらしう試合しあうて見みい。
（歌ふ）鋭するどき悲愁かなしみに心こゝろ傷いたみ
　　我胸わがむね堪難たへがたく沈しづめる時とき、
　　其時そのとき音樂おんがくの銀ぎんの調しらべは……
何故なぜ「銀ぎんの調しらべ」ぢゃ？　何故なぜ「音樂おんがくの銀ぎんの調しらべ」ぢゃ？……猫腸絃子サイモン・キャトリングどん、さ、何なんとぢゃ？
甲樂人　はて、銀ぎんは好よい音色ねいろを出だすからでござります。
ピータ　中等ちゅうぢゃな！……三絃胡弓子ヒュー・レベックどん、足下おぬしは？
乙樂人　銀ぎんの調しらべと言いふのは、はて、樂人がくじんは賃銀ちんぎんを儲もうくるからぢゃ。
ピータ　これも中等ちゅうぢゃ！……提琴柱子ヂェームズ・サウンドポストどん、足下おぬしは？
丙樂人　予わしゃ如何どう言いうてよいか知しらぬ。
ピータ　ほい、眞平御免まっぴらごめんなれぢゃ。足下おぬしは唄方うたかたであったものを。乃公おれが代かはって言いはう。そも／＼「音樂おんがくの銀ぎんの調しらべ」と謂いっぱ、はて、とかく樂人がくじんは金貨には能ようありつかぬからぢゃ。
（歌ふ）其時そのとき音樂おんがくの銀ぎんの調しらべは
　　たちまち欝結むすぼれし憂思おもひを解とく。
ピーター歌うたひながら入る。
甲樂人　何なんといふ煩うるさい奴やつぢゃ彼奴あいつは！
乙樂人　はッつけ野郎やらうめ！……さ、奧おくへ往いて、會葬者くわいさうじゃの來くるまで待まってゐて食事もてなしにありつかう。
皆みな入る。
［＃改ページ］

第五幕

第だい一場ぢゃう　　マンチュア。街上がいじゃう。

ロミオ出る。
ロミオ　頼たのもしらしい夢ゆめの告つげが實まことならば、やがて喜よろこばしい消息たよりがあらう。わが胸むねの主ぬし（戀の神）もいと安靜やすらかに鎭座ちんざめされた、されば例いつになく嬉うれしうて／＼、日ひがな一日ひとひ心こゝろが浮うかるゝ。俺おれが死しんでゐると、姫ひめが來きて、俺おれの脣くちびるに接吻せっぷんして命いのちの息いきを吹込ふきこんでくれたと見みた……死しんだ者ものが思案しあんするとは不思議ふしぎな夢ゆめ！……すると、即やがて蘇生いきかへって帝王ていわうとなった夢ゆめ。あゝ／＼！　戀こひの影坊師かげばうしでさへ此位このくらゐ嬉うれしいとすると、遂とげられた眞まことの戀こひは、まア、どんなに樂たのしからうぞ？
ロミオの下人げにんバルターザー長靴ながぐつの旅裝りょさうにて出る。
や、※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナからの音信たよりぢゃ！　どうぢゃ、バルターザー！　御坊ごばうからの消息たよりは無なかったか？　姫ひめは如何どうぢゃ、父上ちゝうへは御無事ごぶじか？　ヂュリエットは何なにとしておゐやる？　先まづ、それを聞きかう、姫ひめさへ安穩あんのんなら何事なにごとも大事だいじないわい。
バル　　すれば、何事なにごとも大事だいじござりませぬ、姫ひいさまは御安穩ごあんのんにカピューレット家け代々だい／＼のお墓所はかどころにお休やすみ、朽くちぬ靈魂みたまは天使てんしがたと御ご一しょにござります。手前てまへは姫ひいさまが御親類ごしんるゐがたのお廟所たまやへ入いらせらるゝを見みるや否いなや、驛馬はやうまに飛乘とびのってお知しらせに參まゐりました。此樣このやうな惡あしいお使つかひも命置おほせおかせられた役目やくめゆゑでござります、御免ごめんなされませい。
ロミオ　そりゃ實まことか？……おのれ、怨うらめしい運星うんせいめら！……俺おれの宿やどを知しってゐような。筆ふでと紙かみとを手てに入いれて、そして驛馬はやうまをも傭やとうてくれ。今宵こよひのうちに出發たたうわ。
バル　　まゝ、お耐こらへなされませい、甚いかうお色いろも蒼あをざめて、物狂ものぐるほしげな御樣子ごやうす、ひょんな事ことでも遊あそばしさうな。
ロミオ　馬鹿ばかな、何なんの、そんな事ことを！　俺おれには介意かまはいで吩咐いひつくることをせい。御坊ごばうからの書状しょじゃうは無なかったか？
バル　　いえ、ござりませぬ。
ロミオ　よし／＼。早はやう往いて、馬うまどもを傭やとうてくれ、やがて會あはう。
バルターザー入る。ロミオ獨ひとり殘のこる。
はて、ヂュリエット、今宵こよひは一しょに臥ねようぞ。……そこで、其その方法てだてぢゃが……おゝ、害心がいしんよ、ても速はやう入はひって來きをるなア、絶望ぜつばうした者ものの胸むねへは！……思おもひ出だすは彼あの藥種屋やくしゅや……たしか此邊このあたりに住すんでゐる筈はず……いつぞや見みた折をりは、身みに襤褸つゞれを着ゆて、藥草類やくさうるゐを撰えってをったが、顏かほは痩枯やせがれ、眉毛まゆげは蔽おほい被かぶさり、鋭するどい貧ひんに躯みを削けづられて、殘のこったは骨ほねと皮かは。貧まづしい店前みせさきには※おほがめ［＃「（口＋口）／田／一／黽」、202-2］の甲かふ、鰐わにの剥製はくせい、不恰好ぶかっかうな魚うをの皮かはを吊つるして、周圍まはりの棚たなには空箱からばこ、緑色りょくしょくの土つちの壺つぼ、及および膀胱ばうくわう、黴かびた種子たね、使つかひ殘のこりの結繩ゆはへなは、乾枯ひからびた薔薇ばらなどを口實いひわけほどに取散とりちらして貧羸みすぼらしう飾かざった店附みせつき。其その貧まづしさを見みるまゝに、思おもはず獨語ひとりごって、此このマンチュアで毒どくを賣うれば、直すぐにも命いのちを取とらるれども、若もしも毒どくが欲ほしければ賣うりさうなのは此奴こいつめ、と思おもうたが、今日けふある知しらせであったまで。むゝ、あの貧人ひんじんから是非ぜひ毒どくを買もとめうわい。……何なんでも此この邊へんであった。祭日さいじつゆゑ貧乏店びんばふみせが閉しまってある。……いや、なう／＼！　藥種屋やくしゅやはおりゃるか？
藥種屋やくしゅや出る。
藥種屋　かしましう呼よばッしゃるは誰たれぢゃ？
ロミオ　ま、こゝへ來きやれ。かう見みたところ不如意ふにょいさうな。こりゃ此處こゝに四十兩りゃうある、予わしに毒藥どくやくを一匁もんめほど賣うってくりゃれ、直すぐに血管けっくわんに行渡ゆきわたって世よに※(「厭／（餮－殄）」、第4水準2-92-73)果あきはてた飮主のみぬしを立地たちどころに死しなすやうな、又また、射出うちだされた焔硝えんせうが怖おそろしい大砲たいはうの胴中どうなかから激はげしう急きふに走はしり出でるやうに、息いきをば此この體内みうちから逐出おひだしてくれる毒どくが欲ほしい。
藥種屋　されば、其樣そのやうな大毒藥だいどくやくをば貯たくはへてはをりまするが、マンチュアの御法度ごはっとでは、賣うったりゃ、命いのちがござりませぬ。
ロミオ　其樣そのやうに貧まづしうあさましう暮くらしてゐても、汝おぬしは死しぬるのが怖おそろしいか？　飢うゑは頬ほゝに、逼迫ひっぱくは眼めに、侮辱ぶじょく貧窮ひんきうは背せに懸かゝってある。無情つれない此この浮世うきよに法度はっとはあっても、つゆ汝おぬしの爲ためにはならぬ。ならば、貧ひんを守まもるにも及およばぬ。法度はっとを犯をかして之これを取とりゃれ。
藥種屋　意こゝろは好すゝみませねど、貧苦ひんくめがお言葉ことばに從したがひまする。
ロミオ　此方こちも其その貧苦ひんくにこそ拂はらへ、意こゝろには拂はらはぬわい。
藥種屋　（藥瓶を渡しながら）これをばお好このみの飮料いんれうに入いれて飮のませられい。たとひ二十人力にんりきおじゃらしませうとも、立地たちどころに片附かたづかッしゃりませう。
ロミオ　此この黄金こがねを遣つかはすぞ、これこそは人ひとの心こゝろの大毒藥だいどくやくぢゃ、汝おぬしが賣うりかぬる此この些末さまつなる藥種やくしゅよりも此この濁世ぢょくせでは遙はるかに怖おそろしい人殺ひとごろしをするもの。汝おぬしでは無なうて予わしこそは毒どくを賣うるのぢゃ。さらば。食物たべものを買もとめて些ちと肉にくを附つけたがよい。……（行きかけて藥瓶を見て）毒どくではない興奮劑きつけぐすりよ、さア一しょに、ヂュリエットの墓はかへ來こい、あそこで汝そちを使つかはにゃならぬ。
二人ふたりともに入る。

第だい二場ぢゃう　　※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナ。ロレンス法師ほふしの庵室あんじつ。

フランシス派はの僧そうヂョン出る。
ヂョン　フランシス宗しゅうの御僧おんそうはゐさしますか！　なう／＼、御坊ごばう！
ロレンス法師ほふし出る。
ロレ　　あれはヂョン坊ばうの聲こゑぢゃ。……さてようこそお戻もどりゃったマンチュアから。してロミオは何なんと被言おしゃった？　若もし筆ふでに物ものせられたならば、其その書面しょめんを見みせやれ、
ヂョン　いやの、同伴者どうばんしゃに連立つれだたうとて、同門跣足どうもんせんそくの或ある御坊ごばうを尋たづねて、町まちで或ある病家びゃうかをお見舞みまやってゐるのに逢あうたところ、町まちの檢疫けんえきの役人衆やくにんしゅうに兩人ふたりながら時疫じえきの家うちにゐたものぢゃと疑うたがはれて、戸外そとへ出づることを禁とゞめられた、それゆゑマンチュアの急用きふようも其場そのばで止とめられてしまうたわいの。
ロレ　　すれば誰たれが持もって往いんだぞ、ロミオへの予わしの書状しょじゃうは？
ヂョン　はて、屆とゞけることを能ようせなんだのぢゃ。……これ、此通このとほり持もって戻もどった。……此庵こちへ屆とゞけうと思おもうてもな、皆みなが傳染でんせんを怖こはがりをるによって、使つかひの男をとこさへも雇やとへなんだわいの。
ロレ　　はれ、それは物怪もっけの不運ふうんの！　眞實しんじつ、重大ぢゅうだいな容易ようゐならぬ用向ようむきの其その書面しょめん、それが等閑なほざりになった上うへは、どのやうな一大事だいじが出來でけうも知しれぬ。御坊ごばうよ、早はやう往いて、何處どこぞで、鐵梃かなてこを才覺さいかくして、急いそいで此處こゝへ持もって來きて下くだされ。
ヂョン　うゝ、すれば、往いて持來もてこう。
ヂョン坊ばう入る。
ロレ　　此上このうへは、そっと墓所はかしょまで往ゆかねばならぬ。此この三時みときが間あひだに、ヂュリエットは目めを覺さまさう。始終しじゅうをロミオに知しらせなんだとお知しりゃったら嘸さぞ予わしを怨うらむであらう。したが、マンチュアへは改あらためて書送かきおくり、ロミオがお來きやるまでは、姫ひめを庵室あんじつにかくまっておかう。不便ふびんや、生いきた骸むくろとなって、死人しにんの墓はかの中なかに埋うもれてゐやる！
ロレンス入る。

第だい三場ぢゃう　　同處どうしょ。墓場はかば。（此裡このうちにカピューレット家け代々だい／″＼の廟所べうしょある體てい）。深夜しんや。

パリス先さきに、侍童こわらは從ついて、草花くさばなと炬火たいまつとを携たづさへて出いで來きたる。
パリス　侍童わらはよ、其その炬火たいまつをおこせ。彼方あちへ往いて、つッと離はなれてゐい。……いや、それを消けせ、人目ひとめに掛かゝりたうない。あの水松いちゐの下したで、長々なが／＼と横よこになって、此この洞ほらめいた地ちの上うへに直ひたと耳みゝを附つけてゐい、穴あなを掘ほるので、土つちが緩ゆるんで、和やはらいでゐるによって、踏ふめば直すぐに足音あしあとが聞きこえう。したら、人ひとが來きたといふ知しらせに、口笛くちぶえを吹ふかうぞ。その花はなもおこせ。吩附いひつけたやうにせい、さ。
侍童　　（傍を向きて）こんな墓原はかはらに一人ひとり立たってゐるのは怖こはらしい、が、ま、やって見みよう。
侍童こわらは物※(「蔭」の「陰のつくり」に代えて「人がしら／髟のへん」、第4水準2-86-78)ものかげへ退さがる。
パリス　（廟の前へ進みて）なつかしい花はなの我妹子わぎもこ、花はなを此この新床にひどこの上うへに撒まいて……あゝ、天蓋てんがいは石いしや土塊つちくれ……其その撒まいた草花くさはなに夜毎よごとに香かほる水みづを注そゝがう。若もしそれが盡つきたなら、歎なげきに搾しぼる予わしが涙なみだを。和女そもじへの夜毎よごとの手向たむけは、かうして花はなを撒まいて泣なくことぢゃわい。
此時このとき、侍童こわらはあなたにて口笛くちぶえを吹ふく。
むゝ、侍童こわらはめが何なにか來きたと知しらせをる。いま／＼しい、何者なにものであらう、今頃いまごろ此邊このあたりへ彷徨さまようて、俺おれが眞情まごゝろの囘向ゑかうをば妨さまたげをる。や、炬火たいまつを持もって來くるわ！……夜よるよ、ちっとの間ま、俺おれを包つゝんでくれい。
パリス退さがる。
ロミオ先さきに、バルターザー炬火たいまつ、鶴嘴等つるはしとうを携たづさへて出る。
ロミオ　其その鶴嘴つるはしと鐵梃かなてこを此方こちへ。こりゃ、此この書状しょじゃうをば、明日あす早はやう父上ちゝうへへ屆とゞけてくれ。其その炬火たいまつをこちへ。さて、確しかと申附まうしつくる、如何いかな事ことを見聞みきゝせうとも、悉こと／″＼く立離たちはなれ、予わしが仕事しごとの妨碍さまたげをばすまいぞよ。予わしが廟たまやへ降おりるは、姫ひめの面かほを見みようがためでもあるが、それよりも姫ひめが身みに着つけた貴たふとい指輪ゆびわを或ある大切たいせつな用ように使つかはうため取外とりはづして來くるのが主おもな目的もくてきぢゃによって、早はやう往いね。若もし疑うたがうて立戻たちもどり、予わしが所行しょぎゃうを窺うかゝひなど致いたさうなら、天てんも照覽せうらんあれ、汝おのれが四肢し五體たいを寸々すん／″＼に切裂きりさき、飽あくことを知しらぬ此この墓はかを肥こやすべく撒まき散ちらさうぞよ。時刻じこくが時刻じこくゆゑ、俺おれの心こゝろは殘忍ざんにん、兇暴きょうばう、餓うゑたる虎とら、鳴渡なりわたる荒海あらうみよりも猛たけしいぞよ。
バルタ　はい／＼、立去たちさりまする、お妨碍さまたげは仕つかまつりませぬ。
ロミオ　それでこそ予わしへの忠節ちゅうせつ。これを取とれ。（と金子を與へ）末長すゑながうめでたう暮くらせ。さらばぢゃ。
バルタ　（傍を向きて）あゝは言いはせられるが、ま、此邊このあたりにかくれてゐよう。お顏かほの色いろも心懸こゝろがゝり、お心こゝろの中うちも疑うたがはしい。
物※(「蔭」の「陰のつくり」に代えて「人がしら／髟のへん」、第4水準2-86-78)ものかげへ退さがる。
ロミオ　（廟の前に進みて）汝おのれ、死しの母胎ぼたいめ、世よに又またとない珍羞ちんしゅうを貪むさぼり食くひをった憎にッくい胃ゐの腑ふめ、汝おのれの腐くさった顎あぎとをば、まッ此このやうに押開おしひらいて、（と廟の扉を抉こぢあけながら）汝おのれへの面當つらあてに、無理むりに食餌ゑぢきを填充つめこまう。
廟扉べうひを開ひらく。
パリス　ありゃ追放つゐはうされた高慢かうまんなモンタギューめぢゃ。彼奴あいつが從兄いとこを殺ころしたゆゑ、美うつくしい戀人こひゞとが、愁歎しうたんの餘あまりにお死しにゃったといふこと。こゝへ來きをったは、死骸しがいに侮辱はづかしめを加くはへよう爲ためでがな。捉とらへてくれう。……やい、モンタギューめ、破廉恥はれんちな所行しょぎゃうを止やめい。怨うらみを死骸むくろにまで及およぼさうとは、墮地獄だぢごくの人非人にんぴにんめ、引立ひきたつる、尋常じんじゃうに從ついて來こい。生いけてはおかぬぞ。
ロミオ　いかにも、生いきてをられぬ身みぢゃ。なればこそ此墓こゝへは來きた。いやなう、若わか、命知いのちしらずの者ものに手出てだしをなさるな。早はやうお迯にげなされ。此この亡者達もうじゃたちの事ことを思おもうて怖おそれたがよい。予わしを腹立はらだたせて、又またの罪惡ざいあくを犯をかさせて下くださるな。おゝ、速はやう去いなしゃれ。眞實しんじつ、予わしは自分じぶんよりも足下おぬしを可愛いとしう思おもうてゐる、予わしは自殺じさつをしようと覺悟かくごして此處こゝへ來きた者ものであるに依よって。さゝ、速はやう去いなしゃれ。生存いきながらへて、後日ごじつ、自分じぶんは、狂人きちがひの仁情なさけで、危あやふい所ところを助たすかったとお言いひなされ。
パリス　どう頼たのまうとも聽きかぬわい。重罪人ぢゅうざいにんとして引立ひきたつるは。
ロミオ　では俺おれを怒いからす氣きか？　ならば、覺悟かくごせい！
二人ふたり劍けんを拔ぬいて戰たゝかふ。
侍童　　大變たいへんぢゃ、戰たゝかうてぢゃ！　速はやう夜番よばんの衆しゅうを呼よんで來こよう。
侍童こわらは入る。此中このうちにパリス手てを負おうて倒たふるゝ。
パリス　おゝ、しまうた！……仁情なさけがあるなら廟べうを開ひらいてヂュリエットと一しょに埋うづめてくれい。
パリス息絶いきたゆる。
ロミオ　おゝ、承引しょういんしたぞ。……面おもてを檢しらべて見みよう。……マーキューシオーの親戚しんせきのパリス殿どのぢゃ！　馬うまに騎のって來くる途中とちゅう、家來けらいめが何なんとか言いうた、心こゝろが亂みだれてゐて善よう聽きいてはゐなんだが？　ヂュリエットと此このパリスとが婚禮こんれいをする筈はずであったとか言いうた。いや、さうは言いはなんだか？　夢ゆめか？　今いまがたパリスが、ヂュリエットの事ことを言いうたゆゑ、それで此樣こんなことを思おもふのか？　此この心こゝろが狂くるうたか？……おゝお手てをおこしゃれ、薄運はくうんの名簿めいぼの裡うちに、俺おれと並ならべ書がきにせられた足下おぬしぢゃ！　予わしが今いま埋うめて進しんぜよう名譽めいよの墓はかに。墓はかか？　いや／＼、こりゃ墓はかではない、明あかり窓まどぢゃ、なア、足下きみ。はて、ヂュリエットが居ゐるゆゑに、其その艶麗あてやかさで、此この窖あなむろが光ひかり輝かゞやく宴席えんせきとも見みゆるわい。……死人しにんどのよ、死人しにんの手てで埋うめられて、其處そこで臥ねやれ。
パリスの死骸しがいを廟べうの中なかに横よこたへる。
人ひとは動やゝもすれば、其その最期いまはに心こゝろが浮うかるゝ！　それを看護人かんごにんが死しぬる前まへの電光いなづまと命よんでゐる。おゝ、これが電光いなづまと言いはれようか？……おゝ、戀人こひびとよ！　我妻わがつまよ！　卿そなたの息いきの蜜みつを吸すひ盡つくした死神しにがみも、卿そなたの艶麗あてやかさには能えい勝かたいでか、其その蒼白あをじろい旗影はたかげはなうて美びの旗章はたじるしの鮮あざやな此この唇くちびる、此この兩頬りゃうほゝ。……おゝ、チッバルト、足下おぬしも其處そこにゐるか、血ちに染そみたまゝで？　まだ嫩若うらわかい足下おぬしを眞二まッぷたつにした其その同おなじ手てで、當たうの敵かたきを切殺きりころして進しんぜるが、せめてもの追善つゐぜんぢゃ。從兄いとこどの、赦ゆるしてくれい。……あゝ、戀こひしい、懷なつかしい、ヂュリエット、何なんとして今尚いまなほ斯かうも艶麗あてやかぢゃ？　若もしや形かたちのない死神しにがみが卿そなたの色香いろかに迷まようて、あの骨ほねばかりの怪物くわいぶつめが、己おのが嬖妾おもひものにしようために、此この黒闇くらやみに蓄かこうておくのではないか知しらぬ。それが氣懸きがゝりゆゑ、俺おれゃもう決けっして此この暗やみの館やかたを離はなれぬ。卿そなたの侍女こしもとの蛆共うじどもと一しょに俺おれゃ永久いつまでも此處こゝにゐよう。おゝ、今いまこゝで永劫安處えいがふあんじょの法はふを定さだめ、憂世うきよに※(「厭／（餮－殄）」、第4水準2-92-73)あき果はてた此この肉體からだから薄運ふしあはせの軛くびきを振落ふりおとさう。……眼めよ、見みよ、これが最後なごりぢゃぞ！　腕かひなよ、抱だけ、これが最後なごりぢゃ！　おゝ、息いきの戸との脣くちびるよ、人ひとの命いのちを長永とこしなへに買占かひしむる死しの證文しょうもんに天下てんが晴はれた接吻せっぷんの奧印おくいんせよ！……（毒藥の瓶を取り出し）さ、來こい、苦にがい、飮のみぐるしい案内者あんないじゃよ！　やい、命知いのちしらずの舵手かんどりよ、苦くるしい海うみに病やみ疲つかれた此この小船こぶねを、速はやう巖礁角いはかどへ乘上のりあげてくれ！……さ、戀人こひゞとに！（と飮む）。おゝ、眞實しんじつな彼あの藥種屋やくしゅや、效力きゝめは忽たちまち……かう接吻せっぷんして俺おれゃ死しぬるわ。
ヂュリエットへ臥ふし重かさなるやうにして息絶いきたゆる。
此時このとき、一方ぱうへロレンス法師ほふしが提燈ちゃうちん、鶴嘴つるはし、鋤等すきとうを携たづさへて出いで來きたる。
ロレ　　南無なむやフランシス上人しゃうにん、護まもらせられい！　はれ、けったいな、今宵こよひ此この老脚らうきゃくが幾いくたび墓穴はかあなに蹉躓けつまづいたことやら！……誰たれぢゃ、そこにゐるのは？
バルタ　怪けしうは無ない者もの、貴僧こなたを善よう存ぞんじてをる者ものでござる。
ロレ　　ほい、其許そのもとか！　さらば問とはうが、あしこのあの炬火たいまつは、ありゃ何なんでおじゃる、蛆蟲うじむしや目めも無ない髑髏どくろを空むなしう照てらすあの光ひかりは？　かう見みたところ、カペル家けの廟舍たまやの前まへぢゃが。
バルタ　其通そのとほりにござります。あそこに主人しゅじんが居をられまする、御坊ごばうの可憐いとしう思おもはせらるゝ。
ロレ　　とは誰たれぢゃ？
バルタ　ロミオさまでござります。
ロレ　　え、こゝへ參まゐられて久ひさしいか？
バルタ　半時餘はんときあまりになりまする。
ロレ　　なりゃ墓穴はかあなまで一しょにおじゃれ。
バルタ　いや、僕ぼくは能えい行ゆきませぬ。主人しゅじんは僕わたくしをば既はや往いんだとのみ思おもうてをられます。若もしも此處こゝに止とゞまって樣子やうすなど窺うかゞはうならば、斬殺きりころしてのけうと、怖おそろしい見脈けんみゃくで嚇おどされました。
ロレ　　ならば、此處こゝにござれ。予わしが獨ひとりで往ゆかう。はて、氣懸きがゝりになって來きたわ。おゝ、こりゃ何なにか不祥ふしゃうな事ことが出來しゅつらいしたのでは無ないか知しらぬまでい。
バルタ　最前さいぜん、此この水松いちゐの蔭かげで居眠ゐねむってゐますうちに、夢ゆめうつゝに、主人しゅじんとさる人ひととが戰たゝかうて、主人しゅじんが其人そのひとをば殺ころしたと見みました。
ロレンスは廟べうの方はうへ進すゝむ。
ロレ　　ローミオー！　あら、あら、何事なにごとぢゃ此この血汐ちしほは、これ、此この廟舍たまやの入口いりくちの石いしを染そめた此この血汐ちしほは？　主ぬしもない此この劍つるぎは？　此樣このやうな平和へいわの場所ばしょに血ちまぶれにして棄すてゝあるは、こりゃ何なんとしたことであらう？
と廟べうの中なかへ進すゝみ入いる。
や、ローミオー！　おゝ、色いろは蒼白まッさを！……外ほかにも誰たれやら？　や、パリスどのまで？　剩あまつさへ血汐ちしほに浸ひたって？……あゝ／＼、何なんといふ無慚むざんな時刻じこくぢゃ、如是こんなあさましい事ことをば一時ときに爲出來しでかすとは！……や、姫ひめが身動みうごき爲しやる。
此時このときヂュリエット目めを開ひらく。
ヂュリ　おゝ、嬉うれしや御坊樣ごばうさまか！　殿御とのごは何處どこにぢゃ？　行ゆき處どこは記おぼえてゐる、おゝ、さうぢゃ、そこへ予わしは來きてゐるのぢゃ？
ロミオは何處どこにぢゃ？
奧おくにて多勢おほぜいの人聲ひとごゑする。
ロレ　　人聲ひとごゑがする。……こりゃ姫ひめよ、ま、早はやう出でてござれ、そこは死しや疫癘えきれいや無理むりな睡眠すゐみんの宿やどぢゃほどに。人間以上にんげんいじゃうの力ちからの爲ために折角せっかくの計畫はかりごとが皆みな敗やぶれた、さ、早はやうござれ。和女そもじの殿御とのごは、それ、其處そこに胸元むなもとにお死しにゃってぢゃ。パリスどのもぢゃ。さゝ、尼御達あまごたちの仲間中うちへ、頼たのうで和女そもじを入いれておかう。あれ、夜番よばんが來くるわ、委細ゐさいの事ことは後あとで／＼。さゝ、ヂュリエット、ござれ／＼。予わしゃもう此處こゝには能ようをらぬわ。
ロレンス狼狽うろたへて入る。
ヂュリ　さ、速はやう去いなしゃれ、予わしは去いなぬほどに。……こりゃ何なんぢゃ？　戀人こひゞとが手てに握にぎりゃったは盃さかづきか？　さては毒どくを飮のんで非業ひごふの最期さいごをお爲しやったのぢゃな。……まア、あたじけない！　皆みんな飮のんでしまうて、隨ついて行ゆかう予わたしの爲ために只たゞ一滴てきをも殘のこしておいてはくれぬ。……お前まへの脣くちびるを吸すはうぞ。毒どくがまだ殘のこって居ゐたら、それこそは假かりの命いのちから實まことの命いのちへ囘かへらする大妙藥だいめうやく！……まだ温ぬくい、お前まへの脣くちびる！
とロミオの死骸しがいに接吻せっぷんする。
此時このとき奧おくにて又また多勢おほぜいの人聲ひとごゑする。
番甲　　（奧にて）案内あんないせい。どちらぢゃ。
ヂュリ　や、人聲ひとごゑ？　なりゃ、片時へんしも早はやう。……おゝ、嬉うれしや、短劍たんけん！（ロミオが佩びたる短劍を取りて）さ、鞘さやはこゝに。（と胸を貫き）そこに居附ゐついて、予わしを死しなせてくれ。
と息いき絶たゆる。
夜番よばんの者もの甲かふ、乙おつ、丙へい、其他そのた多勢おほぜいパリスの侍童こわらはを案内者あんないじゃにして出る。
侍童　　こゝぢゃ。あの炬火たいまつが燃もえてをる處ところがそれぢゃ。
番甲　　此邊このあたりは血ちだらけぢゃ。墓場はかばの界隈かいわいを探さがさっしゃい。さゝ、見みつけ次第しだいに、かまうたことは無ない、引立ひきたてめさ。
二三人にん入る。
はれ、無慚むざんな！　こゝに若殿わかとのが殺ころされてござる、のみならず、既もう二日ふつかも葬はふむられてござったヂュリエットどのが、つい今いまがた死しなっしゃれたやうに血ちを流ながして、温ぬくいまゝで。……誰たれぞ早はやう御領主樣ごりゃうしゅさまへ。カピューレットどのゝ邸やしきへも走はしった。モンタギューどのを起おこして來こい。他あとの者ものは、探さがせ／＼。
夜番頭よばんかしらの甲かふのみ殘のこりて皆々みな／＼入る。
不運ふうんな人達ひとたちが臥ねておりゃる地盤グラウンドだけは善よう見みえるが、此この不運ふうんの眞ほんの原因グラウンドは、よう査しらべて見みぬうちは分わからぬわい。
夜番よばんの乙おつ、外ほか一二人にんバルターザーを引立ひきたてゝ出る。
番乙　　これはロミオどのゝ家來めしつかひでおりゃる。墓場はかばで見付みつけました。
番甲　　殿とのさまの渡わたらせらるゝまで、逃にがさぬやうに護まもってござれ。
他たの夜番よばんの者もの丙へい、ロレンス法師ほふしを引立ひきたてゝ出る。
番丙　　これなる老僧らうそうは、顫ふるへながら溜息といきを吐つき、涙なみだを流ながしてをりまする。只今たゞいま墓場はかばから參まゐるところを取押とりをさへて、これなる鋤すきと鶴嘴つるはしとを取上とりあげました。
番甲　　甚いかう胡散うさんな。その僧ぼうずをも留とめておかっしゃい。
領主りゃうしゅ、多勢おほぜいの從者じゅうしゃを引連ひきつれて出る。
領主　　朝あさまだきに如何いかなる珍事ちんじが出來しゅったいしたのぢゃ、予よが夢ゆめを驚おどろかして呼出よびいだすは？
カピューレット長者夫婦ちゃうじゃふうふ、其他そのた出る。
カピ長　何なんとした事ことぢゃ、街上そとにて人々ひと／＼の叫わめき立たつるは？
カピ妻　往來わうらいの人々ひと／″＼は、或あるひはロミオと呼よび、或あるひはヂュリエット、或あるひはパリスと呼よびかはして、聲々こゑ／″＼に叫わめき立たて、吾屋わがやの廟屋たまやへと急いそぎまする。
領主　　吾等われらの耳みゝを驚おどろかす變事へんじとは何事なにごとぢゃ？
番甲　　申上まうしあげまする、こゝにパリス樣さまが殺ころされて居ゐさせられます、またロミオにも、また其以前そのいぜんに死去みまかりました筈はずのヂュリエットにも、體温ぬくもりのあるまゝ、新あたらしく殺ころされてをられまする。
領主　　あくまでも手てを盡つくして此この虐殺ぎゃくさつの所因しょいんを査しらべい。
番甲　　これにをりまする老僧らうそう、また殺ころされましたるロミオの僕しもべ一人にん、何いづれも墓はかを發あばきまするに屈竟くっきゃうの道具だうぐをば携たづさへてをりまする。
カピ長　やゝ、これは！　おゝ、我妻わがつまよ、あれ、見みさしませ、愛女むすめの體内みうちから血ちが流ながるゝ！　えゝ、此この劍けんは住家すみかをば間違まちがへをったわ。こやつが住すむべきモンタギューが腰こしなる宿やどは裳脱もぬけの殼からで、無慚むざんや、愛女むすめの胸むねが鞘さや！
カピ妻　おゝ、悲かなしや！　此この慘いたましい死樣しにざまは、老おいゆく此身このみをば墓はかへ急いそがす死鐘しにがねぢゃ。
モンタギュー長者ちゃうじゃ、其他そのた出る。
領主　　さ、こゝへ、モンタギュー。時ときならず早はやう起出おきいでめされたが、目めに入いるものは、時ときならず早はやう臥ねた息子むすこどのゝ寐姿ねすがたぢゃ。
モン長　なう、情なさけなや、我君わがきみ！　我子わがこの追放つゐはうを歎悲なげきの餘あまりに衰おとろへて、妻つまは昨夜やぜん相果あひはてました。尚なほ此上このうへにも老人らうじんをさいなむは如何いかなる不幸ふかうぢゃ。
領主　　あれ、あれをお見みゃれ［＃「お見みゃれ」はママ］。
モン長　おゝ、汝おのれ、不所存者ふしょぞんものめが！　父ちゝを押退おしのけて先さきへ墓はかへ入はひらうとは、何なんといふ作法知さはふしらずぢゃ、汝おのれ！
領主　　暫時しばらく叫喚けうくわんの口くちを閉とぢよ、先まづ此この疑惑ぎわくを明あきらかにして其その源流げんりうを取調とりしらべん。然しかる後のち、われ將はた卿等おんみらの悲歎なげきを率ひきゐて、敵かたきの命いのちをも取遣とりつかはさん。先まづそれまでは悲歎ひたんを忍しのんで、此この不祥事ふしゃうじの吟味ぎんみを主しゅとせい。……嫌疑けんぎの徒輩ともがらを引出ひきだせ。
ロレ　　手前てまへこそは、力量りきりゃうは最いっち不足ふそくながら、時ときも處ところも手前てまへに不利ふりでござるゆゑ、此この怖おそろしい殺人ひとごろしの第だい一番ばんの嫌疑者けんぎしゃでござりませう。只今たゞいま此處これにて呪のろはるべくもあり、恕ゆるさるべくもある手前てまへの所行しょぎゃうを告發こくはつもし、辯解べんかいも仕つかまつりませう。
領主　　さらば、汝そちが存ぞんじをる限かぎりを疾とく申まうせ。
ロレ　　手短てみじかに申まうしませう、管くだ々しう申まうさうには命いのちが覺束おぼつかなうござりまする。……そこにお死しにゃったるロミオこそはヂュリエットが正たゞしい夫をっと、またそこにお死しにゃったるヂュリエットこそはそのロミオが貞節ていせつなる宿やどの妻つま、二人ふたりを嫁めあはしたは手前てまへ。また二人ふたりが内祝言ないしうげんの日ひはチッバルトどのゝ大厄日だいやくじつ、非業ひごふの最期さいごが因もととなって新婿にいむこどのには當市たうしお構かまひの身みの上うへとなり、ヂュリエットどのゝ悲歎ひたんの種たね、さうとは知しらずチッバルトどのをお歎なげきゃるとのみ思召おぼしめされ、其その歎なげきを除のぞかうとてパリスどのへ無理強むりじひの婚禮沙汰こんれいざた、其時そのとき姫ひめが庵室いほりへわせられ、此この二度どの祝言しうげんを脱のがるゝ手段すべを教をしへてくれい、然さなくば此處こゝで自害じがいすると半狂亂はんきゃうらんの面持おもゝち、是非ぜひなく、自得じとくの法はふにより、眠劑ねむりぐすりを授さづけましたところ、案あんの如ごとくに效力きゝめありて、死しせるにひとしき其その容態ようだい、手前てまへ其間そのあひだに書状しょじゃうして、藥力やくりきの盡つくるは今宵こよひ、姫ひめをば假かりの墓所はかしょより、來きたりて救すくひ出だされよ、とロミオ方かたへ申まうし遣やりしに、使僧しそうヂョンと申まうす者もの、不慮ふりょの事ことにて抑留ひきとめられ、夜前やぜん其その書しょを持歸もちかへってござりまするゆゑ、目覺めざめなば嘸さぞ當惑たうわく、と姫ひめを救すくひ出いださんため、只たゞ一人ひとりにて參まゐりしは、窃ひそかに庵室いほりにかくまひおき、後日ごじつ機をりを見みて、ロミオへ送おくり屆とゞけん存念ぞんねん、然しかるに參まゐり見みれば、姫ひめの目覺めざむる少すこしき前方まへかた、非業ひがふの最期さいごはパリスどのとロミオどの。其中そのうち、姫ひめの目覺めざめ［＃「目覺めざめ」は底本では「目覺めさめ」］しゆゑ、天てんの爲なせる業わざは是非ぜひに及およばず、ともかく出でてござれ、と勸すゝむるうちに、近ちかづく人聲ひとごゑ、予われら駭おどろき逃出にげいでましたが、絶望ぜつばうの餘あまりにや、姫ひめは續つゞいて參まゐりもせず、やがて自害じがいを致いたしたと相見あひみえまする。手前てまへが存ぞんじをりまするは是限これぎり。内祝言ないしうげんの儀ぎは乳母うばが善よう承知しょうちの筈はず。何事なにごとにまれ、予われらが不埓ふらちと御檢斷ごけんだん遊あそばれうならば、餘命よめい幾何いくばくもなき老骨らうこつ、如何いかな御嚴刑ごげんけいにも處しょせられませう。
領主　　予よは常つねに足下おぬしをば正たゞしい僧そうと信しんじてをったわ。……ロミオの僕しもべは何處いずこにをる？　彼かれは此儀このぎに對たいして何なんと申まうすぞ？
バルタ　僕わたくしめは、ヂュリエット樣さまお死去しきょの事ことをば、マンチュアの主人方しゅじんがたへ傳つたへましたるところ、主人しゅじんは直すぐに驛馬はやうまにて、彼處かしこから御廟所ごべうしょまで參まゐられ、墓はかへ入はひられまする前まへに、此この書面しょめんを朝あさ早はやう親御樣おやごさまへ渡わたしてくれいと申まうされ、速すみやかに此處こゝを立去たちさらずば殺ころしてしまふぞと嚇おどされました。
領主　　其その書面しょめん見みようわ。これへ。……して、夜番よばんを呼起よびおこした伯はくの侍童こわらはとやらは何處どこに居をる？……こりや［＃「こりや」はママ］、其方そちの主人しゅじんは此處このところへは何なにしにわせたぞ？
侍童　　御方おんかたの墓はかへ撒まかうとて花はなを持もってわせられました。遠とほくへ離はなれてゐいと仰おほせられましたゆゑ、僕わたくしはさやう致いたしました。やがて燈火あかりを持もった人ひとがわせて、墓はかを發ひらかうと爲しやしゃるやいな、御主人ごしゅじんは劍けんを拔ぬかしゃれました。それで僕わたくしは走出かけいだして夜番よばんの衆しゅうを呼よびました。
領主　　此この書面しょめんにて僧そうが申條まうしでうの證あかりは立たったり、情事じゃうじの顛末てんまつ、女をんなが死去しきょの報告しらせまた貧窮ひんきうなる藥種屋やくしゅやより毒藥どくやくを買求かひもとめてそれを持參じさんし、此處これなる女をんなの墓はかの中なかにて自殺じさつなさん底意そこいまで、明白めいはくと相成あひなったわ。……仇敵同士かたきどうしは何いづれにあるぞ？　カピューレット！　モンタギュー！……見みい、是これ皆みな汝等おぬしたちが相憎惡にくみあひの懲罰こらしめ、天てんは故わざと子供等こどもらを愛あいしあはせ、以もって汝等おぬしらが歡樂よろこびをば殺ころさせられたわ。予われ將はた汝等おぬしらの確執なかたがひを等閑なほざりに視過みすごしたる罪つみによって、近親うからを二人ふたりまでも失うしなうた。御罰ごばつに漏もれたる者ものはない。
カピ長　おゝ、モンタギューどの、御手おんてをば與あたへさせられい。これをこそ愛女むすめへの御結納ごゆひなうとも思おもひまする、他ほかに望のぞみとてはござらぬわい。
モン長　いや、こなたよりはまだ參まゐらするものがおぢゃる。吾等われら純金じゅんきんにて姫ひめの像ざうを建たて申まうし、此この※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナが同おなじ呼名よびなで知しらるゝ限かぎり、貞節ていせつなヂュリエットどのゝ黄金こがねの像ざうをば上無うへなき記念かたみと崇あがめさせん。
カピ長　女むすめと並ならべてロミオどのゝ黄金こがねの像ざうをも建たて申まうそう、互たがひの不和ふわの憫然ふびんな犧牲いけにえ！
領主　　物悲ものがなしげなる靜しづけさをば此この朝景色あさげしきが齎もたらする。日ひも悲かなしみてか、面おもてを見みせぬわ。いざ、共ともに彼方かなたへ往いて、盡つきぬ愁歎なげきを語かたり合あはん。赦ゆるすべき者ものもあれば、罰ばっすべき者ものもある。哀あはれなる物語ものがたりは多おほけれども、此このロミオとヂュリエットの戀物語こひものがたりに優まさるはないわい。
皆々みな／＼徐しずかに入る。
［＃改ページ］
ロミオとヂュリエット　（完）




底本：「ロミオとヂュリエット　新修シェークスピヤ全集　第二十五卷」中央公論社
　　　1933（昭和8）年10月30日発行
※複数行にかかる波括弧には、けい線素片をあてました。
入力：osawa
校正：土屋隆
2010年7月23日作成
2010年11月9日修正
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